予選道中では多彩なレースが展開された桐生レディースチャンピオン。しかしメンバーがそろう準優勝戦となると、外は利かなくなる。ご存知のとおり、準優勝戦は3連続で①②決着となった。
9Rを逃げ切ったのは細川裕子。ヘルメットを取ると細川は満面の笑み。それを長嶋万記ら東海勢が笑顔で祝福する。ガッツポーズを撮り逃したカメラマンが「もう1回お願いします!」というお願いをすると、それにも笑顔で応えていた。
「今日が一番いいですね。出足に感しては上位。ターン回りはかなり良く、回った後の足がすごくいい。スタートを合わせられる足もある」
優出記者会見でこのように語った細川。今シリーズでレディチャン参戦15回。「そろそろタイトルを獲りたいですよね」という質問に対しては、
「(獲れるものなら)獲りたいですけど(笑)。でも獲れるくらいの出足はあるので」
と密かに自信をみせた。
明日は3号艇。ターン後、一気に突き抜けるだけの足は持っている。
9Rの2着は田口節子。中里優子との競り合いを制して、優勝戦のキップを掴んだ。ヘルメットを脱ぐと、こちらも笑顔満開だ。
レース後の記者会見では、
「コンマ30というのが、合わせ切れていなかったと思う。今日は操縦性はきたが、そこだけになってしまった。昨日の状態で戦えることができたら、タイトルを狙える足はある」
本日の反省と優勝戦の方向性を語った。明日はペラの再調整からスタートすることになりそうだ。
10Rは寺田千恵が貫録の逃げ切り勝ち。スリット後に伸び返して、1マークを先に回ると、キッチリと1艇身出切っていた。
ピットに帰ってきた寺田は、2着の宇野弥生とハイタッチ。選手棟へ戻る前には、
「うれし~! 緊張した!」
と安堵の笑顔をみせた。女王経験者でもレディチャン準優1号艇は緊張するのである。
レース後の記者会見では、
「バランスの取れている足。勝負ぬならない足ではない。何度優勝しても嬉しいものなので、岡山を元気づけるレースができれば」
とコメント。寺田の自宅周辺も豪雨被害を受けたというが、それよりも大きな被害を被っている地域を気づかっていた。
2着は宇野弥生。12年大村で男性レーサー相手にMB大賞(GⅡ)を制した宇野だが、じつはGⅠは初優出。記者会見では、
「めちゃくちゃうれしいです」
と、いたってクールな表情で語っていた。
最初は伸び型だったエンジンを出足や乗り心地重視に仕上げての優出。明日は――
「いつもどおり私らしく走りたいと思います」
11Rの勝者は山川美由紀。コンマ13スタートからの逃げ切り完勝。これで優勝戦1号艇を手にした。
「乗り心地とターン回りの足がいい。仕上がりはいいと思いますね」
と機力には自信を持っている。結果的にいえば、2日目のピストン交換が大正解だった。
唯一の課題は自身が「わかっていない」と語るスタート。しかしスタートを決めて先に回れば、明日も逃げ切る公算は高い。
これまで三度女王になっている山川。今回のレディースチャンピオンを制せば、平成元年代、10年代、20年代、そして30年代と、4度にわたっての女王戴冠となる。平成最後のレディースチャンピオンを、平成を駆け抜けた女王が制す。なんだか相応しい結末のように思えてくる。
道中の激しい競り合いを制して逆転で2着に入ったのは地元のエース・松本晶恵。しかしピットに上がってきた彼女は青ざめた顔をしている。カメラマンが松本を取り囲んで撮影しようとするが、それを制して、出場した他の選手に謝まりに行く。
1分後、選手棟の2階から競走会スタッフがマスコミに向けて「不良航法」と告げた。
ピットに上がってきたときの表情を見るに、松本は不良航法を自覚していたのだろう。また、かつて松本は、BOATBoy誌のインタビューでこのように語っていた。
「ときに危険なレースも勝負に必要なのかもしれないですけど、それは自分の目指すところじゃないんですよね。みんなから認めてもらえる、喜んでもらえる勝ち方を目指しています。というか、それができなくて負けるんなら、自分がヘタクソなだけなんで」
かつて大怪我をした経験がある松本。たとえ不良航法でなかったとしても、3周2マークで艇を当てた自分自身が許せなかったのかもしれない。
賞典除外が分かると、彼女の撮影を待っていたカメラマンやマスコミは解けていった。なかなか残酷なシーンである。
松本の賞典除外で優勝戦6号艇を手にしたのは廣中智紗衣。
「合えば乗りやすさが出て、出足がしっかりして、直線につながる足。調整はしやすい方。明日は焦らずに自分のレースができるようがんばります」
優勝戦で6号艇から波乱を巻き起こすか。
(TEXT/姫園 PHOTO/池上)