BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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桐生レディチャン優勝戦 私的回顧

2日目の英断

12R優勝戦
①山川美由紀(香川)06
②寺田千恵(岡山) 11
③細川裕子(愛知) 18
④田口節子(岡山) 22
⑤宇野弥生(愛知) 17
⑥廣中智紗衣(東京)20

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 人気はあちら、底力はこちら!
 そんな雄叫びが聞こえるような51歳の山川美由紀&46歳の寺田千恵=マスターズコンビのワンツーフィニッシュだった。何度も何度も書いてきてけど、あんたたちは強いっ!!
 レースそのものは、山川にとって不本意なものだったろう。スタートは抜群、節間を通じて「見えない分からない」とぼやきつつ、いざ本番ではコンマ06まで踏み込んだ。これは文句なし。

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 問題は1マークだ。さすがの山川にも「6年ぶりの女王奪還」というプレッシャーがあったか。初動が早すぎ握り過ぎという感じでターンマークを外し、ほぼ真横にぶん流れてしまった。明らかなターンミス。で、そんな過ちをおいそれと許す寺田ではない。山川とは裏腹にしっかりとスピードを落として正確無比な差しハンドルを突き刺した。誰の目にもその舳先がズッポリ入ったように見えただろう。事実、ターンの出口では半艇身ほど食い込んでもいた。

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 その直後だ。真横に流れていたはずの山川11号機が、ほぼ直進していたはずの寺田15号機をじわりじわりと引き離していく。半分入っていた舳先がバック中間で1/4ほどになり、それから100mほどで振りほどかれていた。凄まじいパワー差。寺田を突き放した山川は今度はしっかりと2マークを先制し、それで6年ぶり4度目の女王復位を決定づけた。

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 2連率28・3%。その数字だけでなく、これまで11号機はほとんど目立たない存在だったはずだ。少なくとも、私の目にはまったくのノーマークだった。前検も含めて。初日に連勝したときも「2号艇と1号艇だから単なる力量の差だろ」と高を括っていた。山川本人も、まだこのままでは足りないと思ったのだろう。この連勝には満足せず、ピストン2個の交換というそれなりに大きな整備に着手。それで、ターン出口の押しが格段にアップした(本人談)。だとするなら、その“ギャンブル”はまさに今日の山川を優勝に導いた最大の勝因とも言えるだろう。

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 私はと言えば、「連勝したにも関わらずそんな整備に踏みきったということは、よほど11号機の具合が悪いのだろう。で、ピストン交換したくらいで、28%の低調機が良くなるはずがない」とこれまた高を括っていた。そして、そんな偏見を抱いたまま予選の山川を冷ややかに見続けてきたのだ。いつものことだが、今節の私もアホだった。アホのまま優勝戦の予想も無印にし、本番レースでその超抜パワーにただただ口をあんぐり開けていた。思い返せば、6年前の若松でもありえないような45歳の4カドまくりを見て、同じように唖然茫然としていた気がするな。
 凡人の常識では推し量れない最強の女ギャンブラー。平成最後の女王は、新たな元号になってもアホな私を驚かせ続けるのだろう。(text/畠山、photos/シギー中尾)