BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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浜名湖ヤングダービー優勝戦 私的回顧

天才モンチッチターン

12R優勝戦 並び順
①関 浩哉(群馬・115期)02!!!!!!
②松尾 充(三重・112期)12
③木下翔太(大阪・108期)06

⑥安河内将(佐賀・111期)12
④羽野直也(福岡・114期)12
⑤大山千広(福岡・116期)14

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 まさに彗星のごとく、ニューヒーローが誕生した。ニューキャラクターヒーローと呼ぶべきか。ほんの6日前、前検のモーター抽選会場に足を踏み入れた瞬間、私は妙な違和感を覚えた。この場に居るはずのない存在……それが関浩哉だった。その姿は、どこからどう見ても少年だった。小柄で童顔で、キラッキラに輝く瞳で周囲の選手を見回している。野球少年がプロ野球のダグアウトにお邪魔しているような風情。
 4851 関浩哉
 シャツの胸に記された名前を見て、あ、この子が関クンか、と初めて認識した。実際には、4年ほど前のやまと学校の卒業記念競走で出会っているのだが、私の拙い記憶力がその容姿まで引き出せるはずもない。関浩哉という名前を頻繁に聞くようになったのは、ここ半年ほどか。『BOATBoy』の一般戦ウォッチャー三島敬一郎が、「こないだのヒロヤのターン、ヤベっすよ」などと何度も口にするようになったのだ。私が浜名湖に入るまでの関浩哉に関する予備知識は、実にまったくそれだけだった。

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 関少年、可愛すぎる。なんか、モンチッチみたいだなぁ。
 まさか6日後に優勝するとは露も知らない私は、目を細めてこの愛らしい少年を眺めていた。
 その翌日から、モンチッチ少年の初物づくしの快進撃がはじまる。初日の5R、3コースからまくり差して1着。GI初出場、初出走での水神祭となった。2日目7Rは3コースから4カド磯部誠にものの見事にまくられたが、磯部のフライングで恵まれ1着。

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 このあたりから、記者席で「関」「ヒロヤ」という名前があちこちで囁かれはじめた。
「師匠の土屋太朗から、『3年間はダッシュで行け』って言われてたらしいぜ」
 こんな情報も耳に届く。調べてみると、なるほど去年の10月まで丸々3年間、外コースからのダッシュ戦を貫いていた。関の“出世”が遅れたのは、不利なコースに専念したためだった、とやっと気づく。
「もう、ピットは関クン人気で大変ですよ。可愛い可愛い、関くーーんって感じで、みんなからイヂられてます」
 カメラマンのチャーリー池上の言葉に、思わず微笑む。わかる。私もモーター抽選会場で、頭をなでなでしながらイヂりたいという衝動に駆られたから。
 そんなこんなで関浩哉という選手のプロフィールをちょこっと齧った頃には、予選の2位になっていた。さらに、準優をコンマ06全速で突破。12Rの仲谷颯仁が敗れたため、デビューから優勝経験なしでのGIファイナル1号艇をゲットした。

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 そして、ついさっき……関はコンマ02!!という猛烈なスタートで外の5艇を蹴散らした。デビュー初優勝が、なんとなんとプレミアムGI。で、記念レースでの初出場初優勝は、男子レーサーでは史上初。でで、23歳9カ月でのヤンダビ制覇は、長い歴史を持つ新鋭王座を含めても史上最年少! これだけの新記録が懸かった一大レースを、モンチッチ少年はコンマ02という度胸満点のスタートと、3年間のダッシュ戦法で育んだ高速ターンで一気に突き抜けたわけだ。
「フライングを1本持ってるのに、02まで行っちゃう男なんですけど……はい、今後は気を付けます」
 表彰式で申し訳なさそうに話す関を見ていたら、またその小さな頭をなでなでしたくなった。そして、全国の多くのファンが思ったであろうことを、私も思った。
 この無邪気な若者の将来を、彼の度胸満点のレースとともに見つめていきたい。
 表彰式のステージに立つ関浩哉は、頭の先から足の爪先までそう思わせずにはいられない何かしらをぷんぷん漂わせていた。(text/畠山、photos/シギー中尾)