BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

強さの証明

12R優勝戦
①羽野直也(福岡)07
②関 浩哉(群馬)21
③妻鳥晋也(香川)17
④下寺秀和(広島)10
⑤中田達也(福岡)10
⑥入海 馨(岡山)13

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 SG常連の羽野キュンが格の違いを見せつけた。
 スリット隊形としては、↑御覧のとおり壁のない肌寒い門出だったのですな。正直、1マーク寄りのスタンド最前列に被りついていた私は、こんな凹凸隊形とは知るよしもなかった。徳山には対岸のモニターがないため、6艇の舳先が真っすぐこっちに向かってくるのをただ見つめるのみ。とりわけ、2コースの関54号機=私の◎を凝視していたのだが、こんなに凹んでいるとは思わなかったなぁ(涙)。

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 で、この隊形をおぼろ気ながら連想できたのは、4カド下寺の舳先がある瞬間からやおら向かって右(1マーク方向)に傾いたからだ。
 うわっ、絞めてる!?
 思っている間にも、ぐんぐん右に傾けながら私の前までやってくる。そこでやっと全体の状況が鮮明に見えたのだが、下寺の絞めまくりはカド受け妻鳥のブロックを受けて玉突き状態となり、その作用反作用で玉突きが2コース関にも飛び火し、カンカンカンッとリズミカルに接触している間にインコースの羽野が素晴らしいスピードで1マークを旋回して突き抜けていた。

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 やはり、関君は行けなかったのか……。
 あっという間に一人旅となった羽野の背中を見ながら、ぼんやりそう思った。F持ちの足枷もあって今節はハナからスタートが慎重だった関君。4日目からはスロー起こしからコンマ10前後を連発してはいたが、キレッキレの印象とは真逆に「無理を押してなんとか突っ込んでいる」という風に見えていた。今日の凹みはおそらく全速にこだわって溜めすぎたと思うのだが、溜めすぎたこと自体が「自分の心に枷をかけていた」とも言えるだろう。

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 記者席に戻ってからリプレイを見て、一連の全容を理解した。4カド下寺は絞めまくって当然の隊形だったし、妻鳥~関の伸び返すパワーが下寺の進軍をギリギリ食い止めていた。下寺があと少しだけ先行して妻鳥の舳先を超えていれば、あるいは大波乱の1マークになっていたかも知れない。

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 だがしかし、この展開でもっとも讃えるべきは、羽野直也のスタートに尽きる。昨日はコンマ08ながら2コース(コンマ03)に煽られ、今日はコンマ07ながら寒いスリット隊形となったわけだが、そんなピンチを未然に防いだのは記念の賞典レースのインコースとして理想的なコンマ08~コンマ07を連発できたからだ。一発勝負をかけてくる相手に対して、攻撃と防御を兼ね備えたスタートで完封する。SG常連の格と言えば単純すぎるかも知れないが、そんな風格を漂わせるスタートだったと思う。

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 そして、一事が万事、今節の羽野はスタートだけではない、すべての面で格の違いを見せつけた。中堅に毛が生えた程度のパワーで出発しつつ、道中の位置取りから何艇かが殺到する混戦のターンマークでの旋回からそこから先の位置取りから(以下繰り返し)、私が見た限りではひとつのミスもないまま予選の混戦を切り抜けた。その間に、じわじわとだが、明らかに機力の底上げ・上積みも感じさせた。結果としてのオール3連対、トップ当選。そして、敵の襲撃を未然に防ぐスタート力も加味しての優勝。6日間を通じてド派手な光景はほとんどなかったけれど、だからこそ底知れぬ強さを感じさせるシリーズだった。

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 もう、ここから私の書くべきことはたった一言、この手の色物大会をSG常連レーサーが制したときの常套句しか残っていない。
――羽野キュンにとって、今日の優勝はさらなる大舞台への通過点にすぎない。
 何度も引用しすぎてちょいと赤面してしまうが、本当にこれしかないのですよ。ちょこっとだけ補足するなら、今日の優勝によって羽野は今年のチャレンジカップの当確ランプやら、来年のクラシックの権利やら、さまざまな“副賞”をGETした。これまた何度も書いてきた常套句だが、羽野にとってそれらの副賞は今日の優勝と同じくらい大きな宝物だと思う。おめでとう、今節のキミは桁違いに強かったぞ、羽野キュン!(photos/シギー中尾、text/畠山)