BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――快挙だ、関浩哉!

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 惜しかった。舳先が届きかけて、しかし届かなかった。松尾充は、あと一歩で栄冠を逃した。待ち望んだデビュー初優勝も逃げていった。展示タイムが抜群だったように、足は仕上がっていただろう。それだけに、あと一歩の遠さが松尾にのしかかる。今節は、基本的には淡々とした様子を通していた松尾。1月のバトルトーナメントでもそうだったから、そういうタイプなのだと思う。だが、さすがにレース直後の松尾は悔しそうな顔を見せた。感情がちらりと垣間見えたのだ。その顔を見ていれば、GⅠという舞台でのそれは逃したけれども、初優勝は遠くないと信じられる。

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 前付けで勝ち筋を探った安河内将も、顔を歪めていた。全力を尽くしたことは間違いないが、それが結果に結びつかなければやはり納得はできない。3着と連に絡んだことは、予想が当たった僕はありがたいけれども、安河内には慰めにもならないだろう。それでも、ナイスファイト、とは言っておきたい。近いうちに、師匠の峰竜太とともにSGのピットにあらわれることを楽しみにしている。

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 やはり6コースは遠かったか。女子初のヤングダービー優出ということで話題を集めた大山千広は、結果的には何もさせてもらえなかった。レース直後には、憔悴したような表情も見えた。水の上では先輩も後輩もない、はボートレース史に残る名ゼリフだが、同様に水の上では男も女もない。敗れれば、ただただその悔しさが心を覆うのみだ。女子の先輩とともにモーター返納作業を行なう間には笑顔が戻ってはいたけれども、今日経験した思いはきっと大山をさらに成長させる。

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 実績組は、悔しさをにじませながらも、しかしそれを露骨には表に出してはいなかった。木下翔太はやはり機力がもうひとつ足りなかったか。1マークは果敢に握ったものの、前に届くことはなかった。昨日の時点では、この足でよくぞ優出、という思いもあっただろう。だが、優勝戦で負けてしまっては、そんな思いは消える。むしろ、パワーアップできなかったことの悔しさが残るはずだ。羽野直也も、5カドから前を捉えることはできなかった。レース後、JLC解説者の青山登さんから、「最近の羽野くんはキレが足りない。それはスタート行けないからだよ」と指摘されている。あのコワモテだから、説教にしか見えないわけだが(笑)、そうツッコミを入れると、羽野は即座に「違うんです。本当に勉強になるんです」とむしろこちらを諭すように言って、青山さんにさらに言葉を求めた。昨年秋から昇り龍のごとくスターダムに駆けのぼった羽野だが、慢心など0・1ミリもない。言うまでもないことだが、羽野直也物語はまだまだ序章である。末恐ろしい男、と言うべきかもしれない。

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 優勝は関浩哉! GⅠ初出場で初優勝。そしてGⅠでデビュー初優勝! 快挙である。
 実は、優勝戦1号艇が決まった昨日の12R後から、緊張していたそうだ。宿舎でも同様。今日も朝のうちはそんなところがあったようである。それをほぐしたのは先輩のイジリ。やはり昨日の磯部誠や西川昌希の「大丈夫か!」は、関が彼らの名前を出したわけではないけれども、関の気持ちを柔らかくしていたのだった。

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 ただ、昨日にしても今日にしても、関の様子からプレッシャーや緊張感がそれほど伝わってはこなかったと思う。自分をコントロールするのに長けているのか。あるいは思いをぐっと抑え込むことができるのか。展示に向かう直前に、その準備をする関を見かけているが、淡々として見えたし、緊張が関のハンドルやレバーを狂わすとは思えてなかったほどだ。
 実際、勝ったのだから関はGⅠ優勝戦1号艇のプレッシャーに打ち勝ったのだと言える。ガッツポーズもしなかったし、ピットに引き上げたときも歓喜を爆発するわけでもなく、祝福する周囲に丁寧に頭を下げているし、心の動きをそれほど見せず、また芯が強いのだと思う。ようするに、大物感がある男、である。

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 これで来年のクラシックの権利を手にし、賞金的にはグランプリシリーズも見えてきた。SGデビューは間近!「SGでも活躍したいし、記念レースで活躍できる選手になりたい」。この勝利で完全に未来への視界が開けた関は、その目指すべき高みを見据えて精進していくのだろう。「人間的にもまだまだ足りない」とも言っていて、そのコメントができることが「そこまで足りないか?」と思わせられるのだが、すべてにおいて妥協せずに努力を続けるはずである。
 さまざまなウィナーの儀式を終え、さあ行こう、水神祭! 今日は11Rまでに水神祭は出なかったが、最後の最後に優勝水神祭が出たわけだ。

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 参加は同期の仲谷颯仁と野中一平。もちろん先輩の椎名豊。そしてなぜか春園功太(椎名とは同期だが)。最初に言っておくと、全員が飛び込んでます。ただ、ただの飛び込み方ではない。同期はおもむろに上半身裸になって、なぜかまずは野中がウルトラマンスタイルで担ぎ上げられて、投げ込まれた。次もなぜか仲谷が同様に投げ込まれ、やっと最後に関が投げ込まれている。椎名と春園は自分で飛び込んでます。

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 よく見ると、野中と仲谷のお腹と背中には何か書いてある。腹は関への祝福だが、背中は「準優1号艇で飛んだこと」「フライングを切ったこと」への謝罪(笑)。これ、絶対にあの男の仕込みだろう。

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 陸に上がろうとする115期勢の頭にゴミをすくうための網をかぶせる磯部誠。最後の最後まで、ムードメーカー! Fを謝らなければならないのはあなたも一緒だと思うが(笑)、とにかく今節のピットをおおいに盛り上げた磯部(と西川)は影のMVPだ。

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 ともかく、関浩哉、おめでとう! 思えば、毒島誠の初タイトルは、この浜名湖での新鋭王座だった。毒島の後を継ぐ一番手に、この優勝は押し上げたのかもしれない(椎名もガンバレ!)。次はSGのピットで会いましょう!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)