BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 3日目

変幻自在のエース、登板

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11R

①峰 竜太(佐賀)16
②白井英治(山口)11
③守田俊介(滋賀)06
④馬場貴也(滋賀)08
⑤菊地孝平(静岡)04
⑥岡崎恭裕(福岡)07

 枠なり5対1のスリット隊形から、観衆を驚かせたのは3コースの守田だ。内の白井が差しの初動を入れる前に握り、白井~峰もろともツケマイで沈めようとした。あるいは俊介の心中には「自分が早く握れば連動している馬場も生きる」という思いがあったか。実に気風のいい握りマイは白井を軽々と超え、逃げる峰をも捕えきる勢いだった。事実、半艇身は覗いていただろう。

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「足はいいけどまったく乗れない。乗りづらすぎて、このまま本番に行ったらマジでコケるかも。全部のいい部分を殺してでも乗り心地が欲しい」
 初日あたりから、親しい記者にこんな弱音を漏らしていたらしい俊介。その苦悶は今朝の公開インタビューでも見られたが、昼から何度も何度も整備&試運転を繰り返した努力(本当に、こんな勤勉な俊介を見るのは初めてだw)が実ったか、懸案のサイドの掛かりも含めて峰に迫るレース足は迫力満点だった。

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 ただ、半艇身覗いてからの伸び足は峰が勝った。俊介の60号機は常に節イチ級の伸び足を誇る快速機だから、まさに伸びを殺して乗り心地を付けたのかも知れない。俊介の猛攻をしっかりブロックしてしまっては、もはや峰の独壇場。先行したときのこの男の強さは、いつだってマジ半端ない。

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 で、このレースでもっとも目を惹いたのは、3番手を走る白井の追い上げ足!! 常に前を走る俊介をストレートでじりじり追いつめ、2周1マークは強ツケマイ、2周2マークは十八番の鋭角差し、3周1マークは急角度の切り返し……ありとあらゆる勝負手で俊介を何度も追いつめた。もちろん白井のテクに拠る部分も大きいのだが、後方からあれだけ自在に攻撃できるのは11号機の特長そのものと言えるだろう。全部の足がしっかりしているバランス型で死角らしい死角のない安定感抜群のパワー。そんな11号機の“性格”は、捌き巧者の白井にぴったりフィットしている。その相性の良さを、今日の実戦の中で随所に感じ取った。明日も2号艇の白井11号機がどんなパフォーマンスを魅せてくれるか、大いに楽しみだ。

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 さて、昨日まで連勝で勢い抜群の馬場は、思わぬ不覚を喫した。守田先輩が切り拓いてくれた絶好の内水面に「ごっつあん差し」を入れた瞬間、白井に接触して失速。つまりは差しのタイミング&判断を誤ったわけだが、明日の第2戦には毛ほどの影響も残さない大敗だったと思う。迷いのない、実に早くて速いポジティブな差しハンドルだったから。「ちょっと初動が早すぎたなぁ」くらいの反省で、明日の1号艇!!に突き進むことだろう。
 それから、道中の岡崎と菊地の4着争いは岡崎に軍配が上がった。私的には白井の追い上げ足に目を奪われて、こちらのパワー比較を看過してしまったのだが、前検から高く評価している岡崎はもちろん、菊地の足も十分に戦えるレベルだと思っている。今日の1-3-2という決着は、何よりも枠番の利が大きかった。

懺悔の超抜パワー

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12R

①毒島 誠(群馬)17
②井口佳典(三重)20
③中島孝平(福井)21
④吉川元浩(兵庫)16
⑤桐生順平(埼玉)20
⑥笠原 亮(静岡)23

 こちらは大方の予想通りの枠なり3対3。スリット隊形も穏やかで、大方の予想通りに毒島があっさりと逃げきった。

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 私が戦前から勝手に心配していた68号機は、もはや不安のフの字さえ見当たらない。1マークの手前、毒島が初動のハンドルを入れて旋回しはじめた瞬間、負けようがないオーラのようなものも感じた。それは昨日、毒島vs桐生の足合わせで感じたものと一緒だ。毒島がどれだけ手を入れたか分からないが、BB誌の1月号などで「危険すぎるトップ6モーターの筆頭」として罵詈雑言を浴びせてきた68号機に詫びを入れさせてもらおう。68号機さん、すいませんでした!
 ただ、今日のレースでもっともっと驚いたのが2着・井口79号機(これまた私は数々の誹謗中傷を……><)の実戦足だった。1周バック中間で内から吉川・桐生・井口・中島の4艇が横一線になったとき、私は経験的に「1-45のどっちかだ」と確信した。とりわけ内から3番目の井口が窮屈でもっとも不利に見えたのだが、そこからのストレート足の凄まじかったこと!! 有利なはずの吉川・桐生を軽々と飛び越えて、2マークの全速ターン一閃、他の3艇を置き去りにしてしまった。つまりはサイドの掛かり~出口の足も強烈。

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 毒島との比較はできないが、11Rの白井の足と12Rの井口の足はそれぞれ違うタイプながら、間違いなく節イチを争う超抜パワーだと認識した。明日の12Rは①井口vs②白井!! もしも枠なりのスリット横一戦なら、明日は「GP節イチ決定戦・第1戦」を堪能できるだろう。

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 そうそう、井口の後方では、今日も吉川vs桐生のマッチアップが展開された。常に主導権を握っていたのは吉川で、一時は5艇身ほども差が付いただろうか。そこからターンマークごとに桐生が追い上げ、2艇身差で迎えた最終ターンマーク。吉川の安全圏と思われたものだが、桐生の意表の全速ツケマイが再び吉川の艇を震わせた。2日連続の「ツケマイ逆転劇」!

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 やられた吉川の悔しさはいかばかりだったか。差しだけを警戒して落としすぎた嫌いもあるが、おそらく吉川の足は行き足の部分が抜群で、出足・回り足の部分はちょっとずつ甘いのかも? 一方、伸び型の桐生は2日連続の握りマイを選択したのが功を奏したのだろう。もちろん、桐生がそうと分かって選択したのかも知れないが。
 さらに後方の笠原と中島の足色は、ほとんど確認できずじまい。明日は6号艇のふたりがアウトコースからどれだけリベンジできるか、はたまたピットアウトからの奇襲もありえるのか、特訓での動向をチェックするとしよう。

ありえない「逃げ」

 今日のGPシリーズ戦は、逃げて差しての金太郎飴のように同じようなレースに明け暮れた。あ、昨日もか。正直、私はスタンドの片隅で何度かうとうと舟を漕いでしまったが、これだけ似たり寄ったりの1-2、1-3を見せられて飽きない人種って、大枚を張れるギャンブラーだけではないのか。

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 そんなイン逃げ圧勝ラッシュの中にあって、実にスリリングな「逃げ」を決めたのが小野生奈だった。ほぼほぼ「抜き」に近い逃げ。まあ、1周2マークまでは褒められたレースとは言えない。1マークでキッチリ先マイを決めて必勝態勢に持ち込みながら、2マークでは相当なターン漏れで山田哲也の舳先を迎え入れてしまった。今日はピストン2個・リング2本を換えての臨戦だから、パワー的にも不安があるのだろう。
 2周ホームでは舳先を入れた山田哲也がさらに伸びて完全に体が入れ替わったのだが、2周1マークのはるか手前で生奈が実になんとも強烈なツケマイを浴びせてターンマークを先マイ。あまり見たことのない「逃げ」が成立したのだった。この「晴れのち雨のち快晴」のようなイン逃げで予選突破の可能性を残した生奈。今や押しも押されぬSG常連レーサー、紅一点とか女子代表とか特別視するつもりはないのだが、明日も強烈なパンチを男どもに喰らわせてできることなら準優に名を連ねてもらいたい。

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 それから、やっぱり書きたい平尾崇典。3日連続なので簡潔に記すが、今日の8Rは3コースから例によって伸びなりにまくり敢行、イン前本泰和にブロックされたものの、これが引き金となって800倍近いウルトラ万舟を生み出した。惜しくも舟券は届かなかったが、やはり飛び道具のいるSGは面白い!!

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 初日からまくりにまくって正統派シリーズ組のトップに立った韋駄天・平尾だが、石野貴之&池田浩二という黒船の如きトライアル組に蹂躙されて(笑)全体では3位まで。うん、このままトライアル組にも奮闘してもらって、シリーズ優勝戦は「1~3号艇がトライアル組、4~6号艇が正統派シリーズ組」という番組で、平尾にはぜひとも4号艇の大役を担っていただきたい。うーん、この優勝戦、マジ見たいっす!!(text/畠山、photos/シギー中尾)