朝9時。ピットの気温は9.5度。今日が一年の総決算日であることに加えて、寒風が身を引き締める。ファイナリストの表情もキリリと引き締まっている。
目立った動きは特にない。というよりは、昨日から気温が一変したため、グランプリ&シリーズ優出者の多くが特訓後から、ひたすらペラを調整しているのである。11時30時点でも6艇は陸に上がっていた。
忙しそうにピットを走り回っていたのはポールポジションの峰竜太。今回のグランプリの見どころは、泣き虫王子が得た人生最大のチャンスをモノにできるかどうか。ボートレース界ナンバーワンの旋回力と整備力を持ちながら、ここ一番を何度も取りこぼしてきた峰。今朝はどちらかというと、一人でいる時間の方が長かった。その表情はやや硬く、緊張しているようにみえたが、果たして。
インタビューで「出足はいらない」と言い切った井口佳典。普段から目力のある選手だが、今日の目力はとくに強力。早朝特訓の2本目では、単騎ガマシを選択しており、さらなる伸びを求めてペラに磨きをかけている。シリーズ優出の愛弟子・新田雄史と一緒にいることが多く、他の選手にも色々と話しかけていた。今回の優出選手では唯一のグランプリ覇者であることが、比較的緊張を解いているのかもしれない。経験を生かすことができるか。
特訓から上がってきた白井英治は、173cmという高身長もあってか、「威風堂々」という雰囲気でピットを闊歩。特訓後はあまり見かけることはなかった。
ファイナリストで唯一、早朝特訓に参加しなかったのが岡崎恭裕。優出インタビュー後にはエンジンを割っていた。本番もそのままいくかどうかはわからないがリング交換の模様。6選手の中では機力がやや劣る感のある岡崎。トライアル1stから1着を一本も取れていないが、終わりよければすべて良し。エンジンの上積みを目指す。
不気味なのが毒島誠。特訓後には桐生順平と少し話し込んだ後、ペラに取り掛かる。毒島といえば、スーパーピット離れがある選手。優出インタビューを聞いていても、何か仕掛けてくる雰囲気がある。
岡崎と同様に1stから1着なしでファイナルに上がったのが菊地孝平。こちらも特訓前からピットを走っており、特訓後はペラに取り掛かる。毒島と同様に進入に含みを持たせたコメントをしたのが菊地。どんな方向性でペラを仕上げてくるのか。
シリーズのファイナリストは全員早朝特訓に参加していた。逆光ピットからの目視だったので正確ではないかもしれないが、1本目は「12/3456」、2本目は「13456/2」。
1号艇の平尾はさすがベテランという感じで落ち着き払っていた。1レースを吉田拡郎が制した後のエンジン吊りでも、同県の茅原らに何か指示を出していた。
井口に負けず劣らずの目力があったのは2号艇の石野貴之。本来なら12Rに乗りたかったはずだろうが、機力には手応えを持っており、ここで一発を狙う。
新田雄史は師匠の井口佳典と一緒にいる姿をよく見かけた。シリーズとGPで「三重三重」決着あるか。
たまたまかもしれないが、山田康二と峰竜太の師弟はエンジン吊りのときくらいしか一緒にいる姿を見かけなかった。こちらは師匠とともに「佐賀佐賀」決着を目指す。
湯川浩司と中野次郎はあまり見かけず。湯川にとっては住之江は庭、大阪在住の中野にとっては裏庭。外枠でもコースを動きそうな雰囲気あり侮れない。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/姫園)