朝の優出選手インタビューからピットに戻ったベスト6の面々は、いきなり慌ただしく動き始めた。どの選手も速攻で着替えをして、走って自分のボートに向かう。優勝戦メンバーがこんなに早くからドタバタとしているのは、実に珍しい。準備を整えた選手は、次々と水面へ。池田浩二は、先にボートリフトに乗って降りようとしていた毒島誠に「ちょっと待ってーっ!」。係員さんがスイッチを押そうとしていた手を止め、池田を待った。池田はドタドタとボートをリフトへ。毒島と顔を見合わせて笑った。
その後、瓜生正義も興津藍も中野次郎もリフトへ。柳沢一はすでに着水を終えていて、係留所にボートはあった。6艇が1R発売中にすべて着水! 実はこれ、異常事態でもなんでもなくて、優勝戦組の朝のスタート特訓が2R発売中に行なわれることで見られた光景。朝は優出インタビューの準備があってスタート特訓は設けられず、かわりに2R発売中に行なったのだ。他のレース場でも見たことがあるような気がします。ちなみに2本行なわれた特訓は、123/456と12/3456。毒島が1本3カドをやっている。本番は果たして。
そうそう、瓜生は2本目に100mから起こしていた。前付けはなさそうなのに、深いところからやったのはなぜか。これは以前に聞いたことだが、瓜生は1号艇のときは並びがどうであろうと必ず1本は深い起こしを試しているという。理由は、「ピット離れで遅れた選手がいたら、その選手が回り込んで内に入ってくることがあるから」。たしかにそういうケースはありますね。ただ、それはそれほど多い事象でもなく、むしろレアケースである。瓜生はそれでも、そうした事態が起こったときに慌てないよう、しっかり準備をする。まったくもって抜かりなし、なのである。
スタート練習を終えると、柳沢はふたたび係留所へ。手早くペラを外して調整室へと向かった。それ以外の5人はいったんボートを陸に上げている。そして全員がプロペラを外していた。中野次郎はすぐさまペラ室に飛び込む。次いで池田や毒島も調整室へと入っていった。
どうやら6人は、大きなことはせずにプロペラ調整に専念する様子。この後、試運転などを行ないつつ、ピッチを上げていくことだろう。スタート練習が行なわれた以外に関しては、まあいつもどおりの優勝戦の朝なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)