BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――2019SGファースト勝負駆け

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 8R、磯部誠が逃げ切った。これで得点率は5・80。ボーダーは下降しており、これで18位となっている。その後も、ボーダーはなかなか変わらなかった。19位以下からの浮上はなく、18位以内からの陥落もない。11R終了時点でも、磯部は18位のままだった。
 12R発売中、磯部に声をかける。第一声は、「逃げれてよかった!」。ん? 今の状況、わかってる? 磯部は自身が18位であることを把握していなかった。「(準優に)乗れないものと思ってますから。それに12Rで峰さんが逃げたら、僕はダメでしょ?」。んー、これは余計なことを伝えてしまったかも。本人は18位を守れるかどうかでヒヤヒヤしたりしていたわけではない。残れるように祈っていたわけでもない。ならば、18位で12Rの結果待ち、というのはいらない情報かもしれない。
 それでも磯部は笑った。「乗れても乗れなくても、作業は変わらない。やることは変わらないですから。それがギャンブラーです!(笑)」。ギャンブラー、ですか(笑)。自分を買ってくれるお客さんのために頑張る、が彼の信条だから、そういうことになるのか。ともかく、明日走るのが準優だろうが一般戦だろうが、磯部は全力で勝利をもぎ取りにいく。

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 10R1着は毒島誠。3着勝負を勝利で切り抜けた。まくり差し快勝に、表情は明るい。整備室前で、BOATBoyのライバル誌MクールのM吉氏と話しているときに、毒島が前を通りかかった。ライバル誌同士、仲良く話してていいの? そんな感じで毒島が二人を交互に指さす。仕方ない、とM吉氏の胸倉をつかんで恫喝。毒島はアハハとおかしそうに笑ってくれた。そうです、我々まあまあ仲いいんです。でもこれから毒島の前ではバチバチに殴り合おう(ウソ)。

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 11R、激しいコース争いがありながらも、山田康二が逃げ切った。これで準優1号艇が確定。九州勢が出迎えるなか、嬉しそうに笑っていたのは同期の桑原悠だった。桑原は9Rを逃げ切っており、好枠で準優に乗れるポジションにいた。同期揃って、内枠で準優! 他の選手がその場を立ち去った後も、二人で談笑する山田と桑原。その会話は着替えを終え、ヘルメットを乾燥機に入れてもまだ続いていた。桑原はSG初出場、この舞台で、ともに準優に駒を進められる感慨、とでもいうものがお互いにあったのかもしれない。ちなみに、やはり同期の遠藤エミも予選突破。102期、準優揃い踏みである。

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 11Rの結果を受け、吉川元浩の準優1号艇も確定した。予選順位でいえば、吉川が2位、山田が3位だ。吉川も、ここで予選トップが確定した白井英治も淡々としたものだった。二人がどこまで状況を把握していたかはわからないが、歓喜をあらわすような場面は見られていない。

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 得点状況を必死で計算していたら、西山貴浩と池永太が覗き込んできた。「トップは?」「白井さん」「1号艇は?」「えーと、吉川さんとヤマコウさん」「ふーん……西山と池永は?」。ふぁっ!? 池永はボーダーに届かなかったし、西山はフライングで賞典除外じゃん……頭が混乱してクソ真面目に返したら、「面白いこと返してくださいよ!」とニッシーニャに怒られたのであった。くーっ、不覚! というか、苦手な算数やってるときにギャグを求めないでください(汗)。

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 12R。4カドから中田竜太が伸びてきたときはヒヤリとしただろうが、それでも峰竜太が逃げ切った。昨日あたりからピリピリしたところが見えた峰も、さすがにいつもの明るい峰竜太になった。勝利者インタビューに向かう前、スリット写真を覗き込む。「ええっ、この隊形で4がまくりに来たの!?」と驚く峰。いや、峰選手、それは11Rのスリット写真なんですけど(笑)。12Rのスリット写真はまだ貼り出されていなかったのだ。こんなところも峰竜太らしい。準優は6号艇だが、峰竜太らしいレースを見せてくれるだろう。

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 なお、エンジン吊りの前、赤岩善生に「18位は誰?」と聞かれた。西山と違ってギャグは要求してこないだろうが、とにかく算数は苦手なので、「峰選手…………たぶん!」と伝えておいた。赤岩選手、本当に峰竜太が18位でした!
 この12Rの結果、磯部誠は次点に泣くことに。次点かどうかはともかく、予選落ちは把握していただろうが、様子はまったく変わっていなかった。変に悔しがるようなところもなかった。言葉通り、明日も変わらず全力で調整し、全力で勝ちにいくだろう。

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 12Rで最も悔しい思いをしたのは、間違いなく中田竜太だ。4カドから内を締めていくレースぶりは、まさに勝負駆け、であった。それも「地元SGの勝負駆け」であった。無念。思いが実らなかったばかりか、道中で逆転されて4着まで後退もしている。さすがに、レース後の中田には終戦感が漂っていた。それを優しく見つめる桐生順平。その視線に気づくと、中田も意味深に目元を緩めて、桐生を見つめ返している。お互いがどんな思いでいるか、言葉が必要ないほどに理解し合っているだろう。中田の無念を、桐生も我がことのように感じている。その桐生は、準優に残った。桐生は中田の思いも背負って戦い、中田は先輩に自分の思いを託して見守る。二人で、明日を戦い抜くのだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)