7Rくらいになって突如ゴロゴロ! 稲光が空を照らし、雷が鳴り始めた。そして、8Rには雨! それもけっこうな土砂降りで、さらには風が強くなってきた。波乱の予感!? 8Rは雨が強く降るコンディションで行なわれている。そんななか、石野貴之が3コースからまくり一閃! 力強い表情で引き上げてきた石野は、これで勝負駆け成功かと思われたが……なんとボーダーは6・20から下がることなく、まさかの予選落ちである。
9R発売中、寒暖計をじっと見ていた毒島誠がぼそりと呟いた。「よし、風が変わった。もうすぐ通り過ぎますよ」。気候を常に意識し、敏感に察知するボートレーサーならではなのか。それとも雷神様が跋扈する桐生を地元としている毒島ならではなのか。毒島は風の変化を感じ取り、この通り雨がやがてあがることを“予言”したのだ。そしたら、10分もしないうちに雨があがった! 実際は、その後ふたたび雨が降り始め、雷も鳴り続けたのだが、毒島のその感覚の鋭さには舌を巻くしかなかった。10Rは2着で勝負駆け成功……と思いきや、石野同様にハイボーダーに泣くことになってしまったのだが……。ちなみに、徳増秀樹が6・20で次点。石野、毒島と同じく6・17の池田浩二も無念の予選落ち。
勝負駆けに成功した面々では、まず9Rの新田雄史。1着勝負を見事に切り抜けて、準優圏に浮上している。これがSG復帰戦となった新田は、その初っ端で見事に予選突破。勝利と、準優進出のダブルの喜びに、新田は笑顔を隠すことなくピットに凱旋している。その後には、展示から帰ってきた菊地孝平に祝福もされており、さらに笑顔が深くなっていた。
10Rは岡崎恭裕が、いったんは後方のまま終わってしまうかという局面を、捌き切っての3着で準優進出を決めた。なにしろ、岡崎はチャレンジカップ勝負駆けでもあって、予選落ちは許されない背水の陣だった。ピットに戻った岡崎は、特別喜びや安堵を表に出すわけではなかったが、ただちょっとした疲労感は見え隠れしていて、なんとか勝負駆けをクリアしたことをそういう形で表現しているようでもあった。
11Rは、山田康二が激しい2~3番手争いを演じつつ、3着で準優進出を決めた。たまたま宮地元輝と一緒に見ていたのだが、宮地もコーナーごとに小さく声をあげる激戦。その宮地の笑顔で出迎えられた山田も、微笑を浮かべていた。その様子は、どこか岡崎の様子にも似ていた。たった1つの着順が、得点率18位という分水嶺のあちらとこちらを分けたりする勝負駆け。勝った者も負けた者も、神経を使う戦いなのだ。
その11R、いったんは6番手もありそうだった位置から2番手まで押し上げたのは吉田裕平だ。6着はもちろん、5着でも結果的に予選落ちだったという局面で、よくぞ着を押し上げたものだ。SG初陣の若武者が、怯むことなく恐れることなく、全速ターンで攻め上げたのは立派の一語。出迎えた磯部誠が笑顔を向けると、吉田も初々しい笑顔を見せて、初SGで予選を突破した喜びをあらわしていた。
さて、これまでなら12Rは予選突破が厳しい選手が組まれる傾向にあった4日目。今節は準優も10~12Rで行なわれるということを反映して、ここに予選トップ争いの直接対決が組まれていた。新開航vs峰竜太だ。1マーク、絞めていきながらも関浩哉が抵抗の先まくりを放ち、後退することになった峰。その間隙を突いて新開が浮上するという展開で、新開が得点率トップをキープするかと思われた。しかし、峰は颯爽と追い上げて、新開を逆転。結果、峰が3着、新開が4着で峰がトップに浮上した。ちなみに、3位には磯部誠が控えていて、もし二人が5着6着だったら、磯部にトップの座はわたっていた。
峰はまず、新開のもとに向かって肩に手を当てながら「ごめん」と一言。そして、先まくりで峰の攻め筋を閉ざした関が頭を下げに来ると「ナイスファイト!」と逆にそのチャレンジを称えた。若手二人の健闘を、峰はしっかり認めて称賛していたのだ。
峰はこれで1位となったことを最初は把握していなかったのか、指摘されてホッとした表情で天を仰いでいる。そして「べーやんには負けたくなかった」と磯部に冗談っぽく語りかけ、「俺はダメで新開はいいのかよ!」と突っ込み返されている。ほんと、仲がいいこと(笑)。ともかく、SG復帰戦でいきなり予選トップという結果を出し、峰は心の底から安堵しているようだった。やっぱりこの男は強すぎるね。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)