BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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戸田クラシック準優ダイジェスト

スロートリオで大波乱

10R 並び順
①山田康二(佐賀)16
②長田頼宗(東京)13
⑥徳増秀樹(静岡)11
③笠原 亮(静岡)14
④毒島 誠(群馬)13
⑤遠藤エミ(滋賀)13

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 準優の第一戦は大波乱となった。
 待機行動は徳増の前付けを笠原・毒島・遠藤がすんなり受け入れ、それなりに穏やかな126/345。もちろんダッシュ3艇にもチャンスのある隊形だったが、スリットは↑の通りのほぼ横一線。カド受け徳増が同県・笠原の攻めをガッチリ受け止め、内3艇に先制攻撃の権利が与えられた。

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 1マーク、山田が逃げて長田が差して徳増が全速の握りマイ。ターン出口ではまんまの1~2~6に見えたが、差した長田のレース足がなかなかに素晴らしい。逆に言うと、出口からの行き足に不安のあった山田が、その弱点を突かれたか。内からぐんぐん舳先を伸ばした長田が山田を完全に捕え、2マークを先取りして勝利を決定づけた。

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 この2-1-6隊形でも100倍を超える波乱だったのだが、配当はさらに4倍近くも跳ね上がる。態勢的に優位に見えた山田が、2周2マークで痛恨のキャビテーション。尻もちをついている間に、徳増がスッとその内を通り過ぎた。山田の最大の敗因はやはりパワー不足だと思う。もうひと足あれば、という残念な今節ではあったが、11回のSG出場で10度の準優進出。その実力はもはや「もっともSGタイトルに近い男」と呼ぶに相応しいだろう。

大本命と台風の目

11R
①吉川元浩(兵庫)15
②桑原 悠(長崎)16
③山崎智也(群馬)19
④田村隆信(徳島)16
⑤菊地孝平(静岡)13
⑥山口 剛(広島)16

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 進入は非常に穏やかな枠なり3対3。機力的に見ると内2艇が優位。スロー勢にとってもっとも怖い存在は「菊地のデジタルスタート」と見ていたが、スリットでやや覗いてからの伸び足はまったくの一緒。

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 こうなれば、波乱が生まれる余地は極めて小さい。吉川が逃げて桑原が差して、後続から追いすがる猛者どもを実にしっかりとした足色で振り払った。インから圧勝した吉川の足は全部の足が強いバランスタイプ。しかも今日はスリット付近の行き足~伸びが昨日までより強めに見えた。つまり、イン戦には最適の仕上がりだったと思う。12Rの結果を踏まえて書くなら、明日もまたパワー的には盤石の態勢でインコースに入る可能性は極めて高い。去年の11月からファイナル1号艇が破竹の16連勝を遂げている戸田水面。SG1冠から2冠へ、ファイナル1号艇=16連勝から17連勝へ、ひとつずつ数字を伸ばす準備はほぼ整った。それを脅かすとすれば、進入のもつれ、あるいはダッシュ勢のスタート一撃だろう。

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 そう、そして2着に残った桑原こそが「ダッシュ一撃」という意味ではもっとも怖い存在だ。今節も初日に6コースから自力で絞めまくってのまくり差し一撃。何度か書いたが、最近の桑原のここ一番でのスリット攻撃は半端ないものがある。今日は2コース仕様でゼロに抑えたチルトを、もちろん明日は嬉々として戸田のMAX0・5に跳ね上げることだろう。徳増の前付け次第では、5対1の単騎がましもありえるだろう。それが大本命の吉川まで届くかどうかはともかく、悔いのない猛アタックを見せてもらいたい。

艇界スペクタクル

12R
①白井英治(山口)13
②井口佳典(三重)14
③桐生順平(埼玉)15
④平尾崇典(岡山)12
⑤馬場貴也(滋賀)15
⑥峰 竜太(佐賀)13

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 センター近辺、とりわけ4カドに平尾がいるスリットは、現在の艇界でもっともスリリングかつダイナミックな瞬間だ。今日も↑というほぼ横一線のスリットからシュッと飛び出し、じわり舳先を左に傾けた。
 また、今日も行くのか??
 そう思わせるに充分な勢いだったが、すかさずカド受けの桐生も握って応戦する。絶妙のタイミングで艇を合わせたため、平尾は即座に「無理だ」と判断して差しに切り替えた。一方の桐生はそのまま握りっぱなしでぶん回し、イン白井に襲い掛かって行く。いつものことだが、3コースの桐生の攻めはとてつもなく早くて速い。

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 が、そのスピードを熟知している白井(今日は元より外からのまくりを警戒していたはずだ)も桐生にぴったりと艇を合わせて迎撃した。平尾に対する桐生、桐生に対する白井、艇界のトップレベルの技量が2段構えで連発した。

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 1-3で決まりか。思った瞬間、外から凄まじい勢いで黄色いカポックが視野に飛び込んだ。2段構えの攻防がなされている間(ほんの数秒だ)に、馬場が平尾を全速で交わし去り、やはり全速のままハンドルを左にぶち込んでいたのだ。嗚呼、内水域の2段ブロック攻防と外水域の全速まくり差しを、同時に鮮明に見届けた人はどこかに存在するだろうか。内の攻防に見蕩れていた私は、いきなり視野に入った黄色カポックにただひたすら面食らっていた(上の解説はリプレイ検証っす)。

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 あっという間に白井の後ろに現れた馬場の舳先は、全速の勢いそのままに内フトコロを差し抜いた。足的にも、この部分のレース足はやや馬場に分があっただろう。軽く1艇身ほど抜け出した馬場は余裕たっぷりに2マークを旋回し、明日のファイナル入りを決定づけた。去年、SGを制した自信がまんま滲み出るような半周の攻防だった。
 その2マーク、2着は白井で決まりかと思いきや、3艇身もの後方からあの男がとんでもないターンをやらかした。桐生順平の十八番、「くるりん小回り旋回なのにまったくスビートが落ちない異次元ターン」だ。やや白井がターンマークを外したとは言え、回り終わった瞬間には桐生が逆に2艇身ほど抜け出している。何度も何度も見た桐生マジック。とりわけ今日の桐生は「地元の意地」もそのターンに沁み込ませていたはずだ。小回りターンで5艇身分のワープって、恐ろしすぎる!!

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 だがしかし、一気に逆転された白井も黙ってはいない。2周1マークの手前まで桐生の外に構え、桐生が右後方(外)を確認して前を向き直した瞬間に切り返しのハンドルを入れた。その呼吸は百も承知の桐生もすぐに気づいてレバーを握る。全速の抱きマイで交わせると判断したのだが、先頭の馬場の引き波をなぞってややキャビテーション。斜めの最短距離を直進した白井の艇は、その引き波で逆にサイドが掛かったように前進し、再びふたりの立場は入れ替わった。一言でいうなら、出足系統のパワーは白井が上だった、と思う。
 その後、桐生はこれまた凄まじい気迫とスピードと意地を注入した強ツケマイを連発したが、百戦錬磨の白井が本当にギリギリの捌きでその猛攻に耐え抜いた。スリットからゴールまで、ボートレースの魅力がてんこ盛りの名勝負だったとお伝えしておこう。
 明日は馬場が3号艇で白井が4号艇。徳増の前付けを想定すれば対応が難しい枠でもあるのだが、混戦になればなるほど優勝の可能性は高まる。そう思わせるほど、今日のふたりの攻撃(白井は徹底防御も)はお見事だった。(photos/シギー中尾、text/畠山)