朝9時45分から優出選手インタビューがあり、それを終えてピットに戻った6選手は、まずはゆったりとした動き出しだ。朝のスタート特訓(1本目123/456 2本目123456)のあとにインタビューに向かったため、プロペラがモーターに着いたままインタビューに向かっているが、そのペラを真っ先に外したのは徳増秀樹。1R展示後にはプロペラ調整室に入っている。
次いで、坪井康晴がプロペラを外す。その際、坪井に呼ばれたので何事かと思ったら、「黒須田さん、『おんな酒場放浪記』に出てましたよね」だって。地元の行きつけの居酒屋が取り上げられ、ベロベロに酔っ払った姿が映っていたのだが、坪井に見られていたとは。恥ずかしー。坪井がペラを叩き始めると、寄り添ったのは同期の菊地孝平だ。二人でそれぞれのペラにゲージを当てながら、話し込む。同県同期の親友の後押しが、今日の坪井にはある。
その頃、萩原秀人は自艇の操縦席に乗り込んで、入念な調整。と言いつつ、報道陣に声をかけられると、手を休めてじっくりと応えていた。モーターに手応えがあり、レースは12Rだから、この段階から大急ぎでどうこうということはなくて当然。結局、ペラを外したのは1R終了後のことだった。
ほかの3人は、1R発売中には動きはなし。エンジン吊りには出てきていて、それぞれにリラックスした様子を見せている。柳沢一も、1号艇の緊張感はあまり感じられない。やはり報道陣に声をかけられると、笑顔も浮かべていた。2R発売中にはプロペラ室へ。叩いているというよりは、微調整と見受けられた。
木下翔太も初優出に浮足立ったようなところは見当たらない。エンジン吊りでは誰よりも率先して動き、新兵らしいところを見せていた。それでも、SG優勝戦に乗ることの特別性は感じているのではないか、とは思える。今日は、徹底的に6人のみが注目を集める1日。6人のみは言い過ぎだとしても、ピットにいる者の視線の大半は優出者に注がれる。カメラのレンズはいつも以上に木下を狙い、テレビの出演者だったりスタッフだったりも次々に声をかける。新兵仕事で装着場にいる時間も長いから、木下にはさらに多くの目が向けられる。そうした状況を、ネガティブな意味ではなく、初めて味わう戸惑いのようなものも見えたような気がした。昨年のヤングダービーでも優出しているけれども、SGは重みも違うことだろう。
で、太田和美はまだまだ動き出しは先になりそうだった。エンジン吊りが終われば控室へ。2R発売中にはプロペラを外しているが、大きなことはしていなかった。まさに泰然自若。キャリア、実績を圧倒的に積んでいる百戦錬磨らしい落ち着きだ。貫録という意味では、間違いなく節イチである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)