結果論だが、9Rを勝っておけば予選トップだった原田幸哉。これがまさかの大敗で、準優1号艇も手放すことになってしまった。さすがに悔しそうな原田は、レース後はペラ室にこもった。調整の失敗だったか。優出を掴み取るための調整、であるのはもちろんだが、それはどこか悔しさを紛らすための動きのようにも見えた。
10Rで中村亮太が2着。3着条件をクリアして、予選突破を決めた。これで地元長崎支部は全員が予選突破! 2号艇2コースは、3コースにハメられれば大敗もあるだけに、なかなかデリケートな勝負駆けだった。見事にしのいだ亮太は、笑顔! こちらの顔を見つけるや、右手の親指をクイッと立てた。ひとまずノルマ達成に満足そうであった。
桑原悠も含めて、明日は地元SG優出に気合が高まる一日! まずはこの3人の戦いぶりに注目しよう……って、3人とも9R!? 地元同士の仁義なき戦いになるかも。
10Rは桐生順平が逃げ切り。そうそうインで取りこぼす男ではないが、舟券に絡めなければ予選落ちという勝負駆けでもあって、また進入に動きもあった一戦だけに、まずは安堵といったところか。ピットに戻ってくると、中田竜太がニッコニコでお出迎え。東京支部の面々も、笑顔で桐生を称えた。
この10Rで、毒島誠がまさかの6着。激しい番手争いに最後は競り負けた格好となった。この時点で、峰竜太の予選トップが当確。毒島は敗れたこと自体にも悔しさを見せていたが、トップを譲り渡したことに対しても顔を引きつらせた。報道陣にそれを伝え聞き、「まあ、いいですいいです」と納得したかのような受け答えをしつつ、顔が曇っていったのだ。もちろんボートレースは何が起こるかわからないし、予選2位だから優勝が遠のくといったものでもない。それでも、トップ通過から逃げ逃げで連覇という青写真も描いていただろう毒島にとって、あとひとつでも着順が上だったらという思いが沸いたとしても当然であろう。
というわけで、無事故完走でトップ通過となった峰竜太。どうやら戦前にそれを認識していたようで、4着という結果にも悔恨をあらわすことがなかった。というか、ニコニコ笑っていた(笑)。もちろん4着でもいいと考えていたわけではなく、反省点は多々あっただろうが、トップ通過という事実が悔しさを紛らわしてくれる。また、勝った平本真之のまくり差しに感服の意を示してもおり、してやられたという感覚になっていたかも。着替えを終えて出てきた峰がすれ違いざま、目をカッと見開いて、左肩をポンと叩いてきた。なんかこっちが予選トップ通過を称えられてるみたいじゃないか(笑)。仕方ないので、腹をポンポンと叩いてやった。僕の出っ腹と違って引き締まってました。
勝った平本真之は、会心のまくり差し一撃だ。うーむ、前半の3着がやはり悔やまれる。まあ、平本自身もそんな思いが片隅にあるだろうが、気持ちのいい勝利にレース後は笑顔を見せている。勝利は最大の癒しなのだ。同期の若林将も、予選ウンヌンは抜きにして、平本にサムアップ。平本も力強く応えていた。うん、素晴らしい勝利だった!
3着で予選突破の中野次郎は、平本とは反対に顔をしかめていた。勝負駆け成功、なのに、笑顔は出ない。まずは敗戦への苦痛が先に顔を出したということだろう。ストイックなまでに勝利を渇望する姿もまた、カッコいいですね。それでも、着替えを終えて姿をあらわした次郎は、安堵したような表情も見せている。準優で悔しさを晴らすのだ!
一方、1号艇で2着の菊地孝平は、やはり勝負駆け成功なのに、まったく満足感を見せないのだった。3着条件をクリアということよりも、1号艇ならまずは必勝というのがレーサーのサガ。勝って勝負駆け成功、しか考えていなかったのだと思われる。着替えを終えると、瞬く間にプロペラ室へ。原田と同様の動きだ。予選突破の喜びや安堵は、まだまだ菊地のなかには沸いてきてはいないようだった。
さてさて、11R発売中、西山貴浩のケツが見えた。なんだなんだ、と思ったら、脇には瓜生正義。どうやら「瓜生教室~直線での乗り方編~」のようだ。
西山が瓜生のアドバイスにしたがって、伏せ込んでみせる。それに瓜生の始動が入る。「これいいわ~!」と西山が叫ぶ。そんな賑やかな光景が広がっていた。動画のインタビューを受ける毒島誠の真後ろで(笑)。たぶん東スポさんの動画だと思うのですが、毒島インタビューの後ろにバッチリ映ってるかもしれません(笑)。毒島、気が散って仕方なかっただろうな~。ともかく、西山にとっては大きな発見だったようで、しきりに「明日の朝一番で試したい!」と言っていた。そして、「瓜生さん、僕に締められるのは時間の問題ですよ!」とも。瓜生は「無理無理」と言っていたが(笑)。
11R、6着に敗れた大山千広が落胆をあらわにする。勝負が懸かった先輩レーサーたちの凄さを目の当たりにしたのだろう。そのひとつひとつが勉強とわかってはいても、現実は大山に打撃を与える。そこに瓜生が力強く言った。「これが次につながるから!」。この言葉がどれだけ大山に勇気を与えただろうか。瓜生正義のこの激励は、最高の説得力をもって、大山の胸に響いたはずだ。整備室のモニターにリプレイが流れると、ふたりは並んで見入る。時折瓜生が身振りを加えて大山に言葉をかけ、大山は深くうなずいていた。こんな瓜生正義先輩がそばにいるSG。福岡支部、そりゃあみんな強くなるよね。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)