BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――地元勢の気合!

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 選手入りの記事で、「茅原悠紀の頬がこけている!?」と書いたが、案の定だ。前検航走にあらわれた茅原はオレンジベストを着ている! オレンジベストとは最低体重(男子は51kg)に満たない選手が、満たない分の重りを装着して着用するベスト。茅原が最近、このベストを着ていた記憶はまったくない。というか、ちょっと前までは53~54kgで走ることが多かったのだ。調べてみると、8月の児島お盆開催の節中に53kgから51kgまで減量、以降はおおよそその体重をキープしてきている。そして今日の体重は49.8kg! 今日宿舎に帰って食事を摂れば明日はまた変わってくるが、前節から今日まで、茅原がどんなふうに日々を過ごしてきたかは明らかだ。そしてこれは、気合のあらわれでもある。

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 やはり岡山勢はここにとびきりの気持ちを込めてやって来ている。今日は岡山勢同士が熱心に情報を交換する様子もずいぶんと見た。茅原と山口達也だったり、山口と田口節子だったり、茅原と寺田千恵だったり。結局のところボートは個人戦ではあるが、地元勢は全員が悔いなき戦いをまっとうできるよう、陸の上では“ONE TEAM”となってお互いを鼓舞する。もちろん自分が勝つのがいちばんの望みであり、水面で対峙すれば敵同士となるにしても、地元の仲間たちが活躍するのを後押ししたいのも本音。山口も田口も寺田も、茅原と同質の強い思いを込めて、6日間を戦い抜くことだろう。

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 田村隆信が、評判機の70号機を引いた。井口佳典と大笑いする場面もあって、やはり手応えはよさそうだ。声をかけても、笑顔が返ってくる。もっとも、田村はいつだって、こちらの問いかけには柔らかな表情を向けてくれる。
 70号機を引いた感想は一言、「緊張しますね(笑)」。メーカー機を手にして緊張感が高まる、というのはわかる気がする。ただ、田村は「落ち着いてレースします」を繰り返した。実は前節の若松周年で顔を合わせ、念願の地元鳴門周年の優勝を祝福したときも、同じ言葉を繰り返した。
「先を見据えていますから」。
 そう言うと、グランプリとも聞こえるわけだが、実は来年の鳴門オーシャンでもある。3年前のオーシャン、2年前のグラチャン、田村は不在だった。いや、徳島支部は誰も出場していなかった。3年前のオーシャンは58年ぶりの鳴門SG。ここに徳島支部が不在なのは寂しいことだったし、何よりエース田村の不在は悲しいこととも言えた。最後の勝負駆けはグラチャン優勝(直前SG優勝者は優先出場)だったが、かなわなかった。翌年グラチャン、田村はほぼ当確と言えるポイントを持っていながら、年末のグランプリシリーズ準優Fで向こう4つのSGの出場が不可能に。その4つにグラチャンが含まれた。当時、田村とは何度もそのことを話した。僕はBOATBoyの誌面や、また本人に対して、鳴門SGについてさんざん煽る言葉を重ねていたので、逆に田村に気遣われたりしたものだった。いちばん悔やんでいるはずの田村が、残念がる僕を慰めたりしたのだ。

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 そんな経緯があるから、「先を見据える」が来年の鳴門オーシャンに向けられたものでもあるのはたしかである。たとえばF休みがかかってもいけない。そうしたことも田村は考慮に入れて、「落ち着いてレースします」と言うわけだ。
 そして田村は、実はそれこそが目の前の一戦一戦で結果を出すことにつながるのだとわかっている。先を見据えての過程にはもちろんグランプリがあり、そしてダービー優勝がある。あえて遠くに焦点を合わせることが、近くの好績にもつながっていく。エース機を引いたからこそ、田村はさらに「落ち着いて」を自身に言い聞かせて戦うのである。

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 ドリーム組。タイム計測などを終えてあがってきた6選手、毒島誠と井口佳典が笑顔であった。会見のコメントと表情が直結していたのはまず井口で「悪くない。ぜんぜん悪くない」と静かな口調で語っている。まだ調整の途上であるのが当然の前検でこの物言いは、明らかに好感触である。毒島は、強気なコメントは聞かれなかったが、ドリーム組との比較で負けているという感じがしなかったことから、コメントは落ち着いていた。明日一日の調整である程度の上積みが見込めると感じたのだろう。

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 一方、ピットに上がってきて微妙な表情だったのは篠崎元志。軽く目を見開いて、手応えなどを聞いてくる仲間に対して固まってみせたのだ。コメントとこれが直結。「行き足が鈍い。体感が悪い。スタートは修正しないといけない」。明日一日でどこまでと立て直せるか。
 で、会見で「賞金ランクを見据えるか」と問われて「今年は高望みはできない」と言った。昨年の長期欠場の関係で、今年前期はB2級。記念戦線から遠ざかったから、グランプリ戦線は明らかに不利であった。ところが、続く言葉は「ベスト18を考えて」だった。高望みとは、グランプリのトライアル2ndから出場できる「ベスト6」ということだったのか! 元志は現在賞金ランク30位。今節の結果次第で18位以内の視界が開けてくる! それにしてもこのクラスが見ているものは常に、本当にレベルが高いものなのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)