千両役者の優出
8R 並び順
①西村拓也(大阪)12
③西山貴浩(福岡)13
⑤松井 繁(大阪)13
②磯部 誠(愛知)16
⑥上條暢嵩(大阪)12
④前本泰和(広島)18
あまり激しくは行かないだろうと思っていた松井が、ピットアウトからゴリゴリ行った。オレンジブイをモンキー旋回。瞬く間に磯部を追い越し、さらに難敵の前本をもツケマイ気味の握りマイで競り潰した。
進入は内3艇が90mを切る135・2/64。大本命の西村にとっては背筋の凍るような隊形だ。が、今節の西村は出足~行き足~伸びのツナギが軽快の一語。今日もスリット横一線から西村だけが抜けた行き足で他艇を置き去りにした。1マークの手前では2コースの西山に2艇身近い大差だった。そのまま軽々と1マークを先取りし、あっさり1着を確定づけた。シリーズ戦では鬼足とも呼ぶべきこの行き足(前後のツナギも含めて)、もちろん明日も脅威の存在になることは間違いない。
準優のハイライト、2着争いはバックで一番差し西山vs二番差し磯部の一騎打ちムードに。やや不利な態勢だった磯部が内から切り返し気味に先マイしたところ、艇を開いた西山が冷静にこれを行かせて差して、これまた2周ホームでほぼ2着を確定させた。今日の西山の出足系統は昨日より際立っていて、5日間でいちばん強かったと思う。明日もこの出足を活かしたレースに徹するはずだが、こと西山に関しては水面よりも先に“昼下がりのワンマンショー”が楽しみでならない(笑)。
直球勝負
9R
①木下翔太(大阪)09
②深川真二(佐賀)12
③桑原 悠(長崎)14
④稲田浩二(兵庫)12
⑤永井彪也(東京)13
⑥前田将太(福岡)21
3カドを匂わせていた桑原が動かず、こちらは打って変わって穏やかな枠なり3対3。5コースまでほぼ横並びのスリットから、予選トップの木下が慌てず騒がず絶妙なインモンキーで早々にファイナル1号艇の青ランプを点した。今節の木下62号機は伸びはチョボチョボも、回り足を主体とした出足系統が強力。まさにイン戦向きのパワーで、明日はスリットから出し抜け(怖い選手はそれなりにいる)を喰らわない限り押しきる可能性は高い。
焦点の2着争いで惜しかったのは桑原だ。カドには引かなかったものの、十八番の3コース全速マイで2番手を確保。スリット裏では3艇身以上も後続を突き放したが、2マークでまさかのキャビテーションで振り込み、深川と永井にズボズボ差し抜かれた。3カド調整の試行錯誤を繰り返す中で、あるいは回転に狂いが生じたか。
続く焦点は深川vs永井の一騎打ち。前検から高く評価していた2騎の直接対決で、目を瞠るような鬼足を魅せたのは永井の方だった。今節の深川はストレートもソコソコ上位レベルなのだが、明らかに永井のそれが上。その破壊力は前検や初日よりもさらに増幅しているようで、明日のファイナルは6号艇でも絶対に軽視禁物とお伝えしておこう。
どん底からの浮上
10R
①篠崎元志(福岡)14
②遠藤エミ(滋賀)14
③萩原秀人(福井)15
④新田雄史(三重)14
⑤馬場貴也(滋賀)15
⑥枝尾 賢(福岡)11
イン逃げ、イン逃げと穏当に進んだシリーズ準優は、最後に5コースからの大技が待ち受けていた。今や「まくり差しキング」とも呼ぶべき馬場の電光石火の一撃。パワー相場の高い大一番で、しかも美しいまでの横一線のスリット隊形からそれを決めてしまったのだから恐れ入る。
今節の馬場に関しては、頭の片隅に「残念ながら、初日で終わった人」というイメージがつきまっとている。トライアル1stの初戦で同情の余地のありそうな不良航法(-7点)を喰らい、事実上のSP脱落。しかもその減点が響いてシリーズ移転時のランキングも30位以下に甘んじていた。
そんな心が折れても不思議のない2日間だったのに、そこからまったく諦めることなく、粘り強い走りと目の覚めるような大技でファイナルの舞台まで上り詰めた。気づけば、トライアル組からのシリーズ優出は馬場クンひとり。例年、判官びいきで「生え抜きのシリーズ組」を応援することが多い私だが、今年に関してはどん底から逞しく息を吹き返したこの苦労人にも心からの声援を贈りたい。そして、明日の馬場クンが頂点に立つとしたら、その決まり手はもちろんまくり差ししかない、とも思っている。
2着はインからしっかり残した篠崎。元志の足は明らかに伸びより出足寄りで、得意の4カド絞めまくりには不向きなパワーだと感じている。ただ、この男は今垣光太郎や石野貴之などに共通する「カドから気持ちで攻める」という心意気を常に秘めている。伸びがなければスタート勝負、さらに明日の調整でそこの部分に光が点せば、内枠の大阪コンビを一蹴するほどの怖い存在になりえるだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)