BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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GPトライアル最終戦 ダイジェスト

一瞬の失墜

11R
①瓜生正義(福岡)10
②田村隆信(徳島)19
③桐生順平(埼玉)12
④白井英治(山口)13
⑤峰 竜太(佐賀)12
⑥吉川元浩(兵庫)04

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 また今日も、実に口惜しいアクシデントが発生してしまった。5コースから得意のまくり差しを繰り出した峰が、ターンの出口で前を行く桐生に接触。さほど激しい衝突には見えなかったが、当たり所が悪かったかもんどりうって横転した。「住之江が誇るエース88号機×スーパースター峰」の共演が、こんな形で途切れてしまうとは……心の底から残念でならない。

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 早い段階の事故だったため、レース展開やパワー評価については多くを語ることができない。インから逃げた瓜生が2マークを回り、2番手の桐生が白井の切り返しを冷静に差し抜いて事実上の着順が確定した。

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 2着の桐生はトータル25点で悠々の当確ランプ。「12Rの結果次第ではわずかながらトップの可能性もある」という立場でトライアルを走り終えた。さまざまな事故や接触などが頻発したトライアルの道中で、それらの危機を回避しての2・3・2着。桐生らしい安定感抜群の成績と賞賛していいだろう。ただ……今日の実戦で78号機(私の◎)のパワーを正確に鑑定するのは不可能だが、スリット~1マークの気配を見る限り、私が理想とする78号機には及んでいない。明日も同じレベルなら「またしても良くて2、3着までか」という気もしているのだが、本番までの時間はまだたっぷり残されている。さらなるポテンシャルを引き出すべく、明日もさまざまな調整に挑んでもらいたい。

一撃の大逆転

12R 並び順
①井口佳典(三重)09
⑥菊地孝平(静岡)06
③毒島 誠(群馬)11
②池田浩二(愛知)11
④石野貴之(大阪)09
⑤平本真之(愛知)12

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 今年も石野がアレをやらかした。
 11Rのような悲惨な事故がGPトライアルの悪しき風物詩だとするなら、こちらは最強レベルの風物詩。枠番の利を捨て、あえて前付け艇を受け入れてのカドまくり一撃!! ここ数年、GP常連の毒島、井口、石野などが繰り出す勝負手で、昨日の井口は伸び足が仕上がらずに不発。今日の石野は伸び型に特化してこの大技を見事に決めた。
 そこに至る布石はいくつかあった。まずはピット離れで池田がわずかに凹んで②池田と③毒島が入れ替わった。そこに、昨日の12Rから今日のスタート特訓まで主にダッシュを選択していた菊地がするりと音もなく2コースに潜伏。どこまで作戦かは不明だが、度重なるダッシュ選択が他の選手のかすかな油断を生んだ可能性は高い。

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 1632の変則隊形となった4人が舳先をスタート方向に傾け、逆に石野がその舳先を翻した瞬間、2マーク寄りのスタンドは蜂の巣を突くような大騒ぎとなった。
「これって井口、まくられるんちゃうっ??」
 という声もあったが、大多数は地元の石野に対するものだった。
「よっしゃ石野、まくったれーー!!」
「行ける行けるでぇ、ブスをぶっ潰せ~!」
「イシノーーー、ようやった、それでええっ!!」
 もう勝ちが決まったようなセリフも飛び交っている。そして、それら地元ファンの期待をまんま実現させるべく、石野は行った。スタート差はさほどない。カド受けの池田との差は舳先ひとつのコンマ02。だがしかし、横並びで深い起こしを強いられたスロー勢に対し、ダッシュ全速の利、伸びに特化したパワーの利、そして敵に艇をぶち当てても締めきろうとする石野の気迫がそのわずかな差を何倍にも増幅させた。

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 あっという間の絞めまくり一撃、圧勝! 
 菊地の前付けでスロー勢が深くなったこと、さらにカド受けがもっともパワー劣勢な池田になったことが激勝の一因ではあるのだが、もちろん最大の勝因は「カドからまくる!」と決めた石野の断固たる決意と覚悟と実行力だ。
 凄まじい絞めまくりで騒然となった2マーク寄りの観衆は、2周2マークで再びそのボルテージを上げた。3番手争いをしていたはずの毒島が、玉突き状態で最後方までずり下がった瞬間だった。
「よっしゃ、1号艇や、石野の1号艇やあっ!!」
 異口同音の叫び声があちこちから湧きあがる。それらの声で、その“事実”に気づいたファンも多かったはずだ。
「やっと来た、やっと来たでぇぇぇ!!」
「これで1号艇って、石野、マジカッコええっ!!」
 叫ぶ、叫ぶ。「やっと来た」。これが石野ファンのみならず、地元のボートレースファンの総意なのだ。

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 ぶっちぎりの1着、そして大逆転のGP1号艇という土産を担いでした石野を、観衆は総出で出迎えた。ほぼ満員の人々の半分以上が拍手と喝采を地元のヒーローに浴びせた。対する石野は両手を夜空に突き上げ、オイデオイデのポーズでその賞賛を煽る。さらなる拍手と絶叫。
「石野、サイコーー、ほんまカッコよかったでぇぇ!」
「グランプリおめでとーーー!!」
 また気の早い若者が叫ぶ。ロックコンサートの如き喧騒。わずか数秒間に起こった強烈な絞めまくり一発で、今節の主役が毒島から石野に移り変わった。そう実感させる喧騒だった。1号艇が一度もないままに3・2・1着でトップ強奪。さらに石野の今年のSG賞典レースの着順を時系列で記せば「準優6着→準優4着→優出3着→優出2着→優勝」ときての今節のカウントダウンである。この流れの先にまだ残されているモノがあるとするなら、もはや黄金のアレしか想像できない。(photos/シギー中尾、text/畠山)