BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準決勝ダイジェスト

唯我独尊の逃走×3

11R
①池田浩二(愛知)05
②馬場貴也(滋賀)11
③深谷知博(静岡)09
④桐生順平(埼玉)11
⑤羽野直也(福岡)10
⑥石野貴之(大阪)12

 池田が勝った。トーナメント戦で3連続のイン逃げ。今節は全部の足がしっかりしている上に、スタート勘もバッチリ。昨日同様、今日もひとりだけバカッ早い唯我独尊の踏み込みで1マークを完全制圧してみせた。

 ただし、昨日までのイン逃げには「後続に影をも踏ませぬ」という定冠詞が付いたが、今日はちょっと様子が違った。影どころか、おもむろに舳先を突き刺したのは3コースの深谷!!

 昨日、ありえないような大逆転負けを喫した深谷は、ピストン2個とリングを交換。この手術が当たったのか、他の調整が功を奏したか、2コース馬場をツケマイで沈めながらのまくり差しが、大本命・池田の喉元までえぐり込んだ。その後の押し足は池田がかなり優勢で、すぐに舳先は振り払われてしまったものの、2着を奪うには十分すぎる先制攻撃だった。うーーーん、昨日の劣悪な足から、あんな芸当ができるとは思いもよらなんだ。

 地元のエースが一瞬にして斬り捨てられた間に、するりと決勝ゾーン(3着)に忍び込んだのが桐生だ。音もなく、は言い過ぎだが、今節の桐生はこうして地味ながらもしっかりと必要最低限のポジションに入り込んできた。
 今日もしかり。同じく3着が欲しい羽野が必死のパッチの追い上げてはみたものの、2周1マークの桐生の立ち回りと言ったらもう! 先に深谷を回し、その背後から羽野が差したいであろうコースを先取りし、やむなく握った羽野は深谷の尻を突く形で失速した。将棋の格言で言うところの「敵の打ちたいところに打て」。36歳の桐生にそぐわないが、『老獪』という言葉が脳裏をよぎる激辛の立ち回りだった。

大阪の底力

12R
①丸野一樹(滋賀)14
②毒島 誠(群馬)28
③松井 繁(大阪)13
④上條暢嵩(大阪)12
⑤片岡雅裕(香川)13
⑥宮地元輝(佐賀)13

 9R後の特訓では率先して6コースに向かっていた宮地が、スタート展示から侵入開始。ただ、展示も本番も内の5選手がすべてブロックし、最終隊形は枠なりオールスローで落ち着いた。落ち着いたとは言え、6艇ほぼ横一線で100m前後の起こし。それなりにスリリングな隊形ではある。
 こうなると、誰かしら凹むかも?

 思っていたらば、2コース毒島がはっきりそれと分かる握り遅れ。単なるタイミングの読み違いか、今日のモーター調整で誤算があったのか、スリットでは致命的なドカ遅れとなった。どうした、ブス君!?

 もちろん、この隊形で行き足のいい松井が黙っているはずもない。じわり舳先を傾け、伸び返しで追いすがる毒島に引導を渡すツケマイ一閃。引き波にハメつつ、勢い的には逃げる丸野に舳先を突っ込むほどの割り差しだった。実際には舳先は入りきらず、松井はすぐに艇を外に持ち出したが、これが決勝戦だったら直進で伸び比べをした可能性は高い。「1着も3着も同じ」がこの準決勝の最大の特性なのだ。

 3着は王者・松井の攻めをしっかり見据えながら連動した上條。昨日は4カドから自力で攻めて外の石野に花道を作り、今日は大先輩の攻めに乗って決勝進出。大阪支部の層の厚さをまざまざと見せつける2日間でもあった。そして、トーナメント3戦をオール2着でまとめた松井は……レース後の顛末は黒須田の記事に委ねるとしよう(笑)。
(photos/シギー中尾、text/畠山)