ギリペラが奏功した、とまで言うと言い過ぎではあると思う。ただ、トライアル2レースともに、ギリギリまでペラを叩いていた選手が結果を出した。
11Rは遠藤エミ。シリーズ組の選手もレース後にペラを叩いていて、そのなかで10Rの締切が迫ってもまだ根を張っていた。一瞬、もうレースを終えてるんだっけ、と錯覚してしまうほど、遠藤はペラ調整組の輪に溶け込んでいた。結局、遠藤のボートが展示ピットについたのは10Rの締切5分前。それでも遠藤に慌てた様子はなかったのだから、腹が据わっている。
12Rは、11Rのエンジン吊りを終えて大山千広、松本晶恵、今井美亜が調整所に戻った。3人がギリペラだ。それでも大山はこのなかでは早めに調整を終えている。大山はレース後の会見で「いつも以上に緊張した」と語っているが、そのときの様子はそれを感じさせなかった。調整に追われているほうがこちらの印象に強く残ったということか。
とことんのギリペラは今井だ。11Rの締切10分前くらいになっても、まだ強めにハンマーを振り下ろしたりしている。別に凝視していたわけではないけれども、調整所を覗くたびに今井が叩いているのを見て、心配になってしまったほどだ。これは、同じレースに出る香川素子も同様だったようで、自分はとっくに展示準備を終え、緑のカポックを身に着けていたのだが、待機室の外に出て今井があらわれるのを待っていた。今井がようやく展示ピットにボートをつけたのは、たぶん締切5分前を切っていた。香川が「大丈夫~」と声をかけると、今井は朗らかに大丈夫ですと返している。で、「一日中バタバタして緊張するヒマがなかった」とレース後の今井。そりゃそうだったろうな、と今井の様子を見ていて首肯した次第である。
で、大山が1着、今井が2着だったわけだが、二人ともレース後の会見では足が良化したわけではないと語っている。大山はピストンリングの交換が失敗で昨日より悪かったと言うし、今井も押しが甘いと嘆いている。今井のあのまくり差しは足よりも旋回力のなせる業だった?「もし押しがあったら、ちーちゃんに舳先をかけられたんじゃないかと先輩に言われた」というから、最高の旋回をしても足がついてこずに2着、ということなのかもしれない。
1、2着に絡んだ中では、守屋美穂はそれなりに手応えを感じた様子。それでも、レース後はやけに神妙に見えており、実は満足していないのではないか、と個人的には思ったりする。JLCのピットレポートブースにあるモニターでリプレイをじじじーっと見つめる姿があったが、Tシャツは濡れたまま。実は記者会見にも同じいで立ちであらわれており、着替えるのも忘れているのではないかと思わされたりもしたのだ。
3着以下の選手たちはおおむねカタい表情で引き上げてきているが、寺田千恵はそれでも余裕があるように見受けられた。パワーに好感触を得られて、ひとまず3着なら上々、といった感じか。大山がスリットで寺田の気配がすごく良かったと感じたというが、寺田は逆の立場で大山やその外に対して自分の気配の良さを感じたはず。初戦としては悪くない結果だったかもしれない。
で、枠番抽選に話は移っていくわけだが、寺田は1号艇ゲットでガッツポーズ! テラッチスマイルが一気に弾けた。機力充実、成績上々、明日の枠番最高! 今夜はいい気分で眠りにつけるだろうなあ。
寺田と同じ3着だった小野生奈は、対照的にカタい表情であがってきているのだが、枠番抽選では一気に苦笑まじりとなった。緑を引いてしまったのだ。席に戻り、隣の今井美亜や遠藤エミに右手の指を3本立てた。3回連続。そう、小野は昨年の枠番抽選で2戦目3戦目とも6号艇を引いており、そして今回も6号艇、抽選では3連続で緑玉を出しているのだ。昨年の6号艇では2度とも前付けを見せた。明日はどうする!?
もう一人の6号艇は長嶋万記。こちらは2戦連続の6号艇と相成ってしまっている。たまたま長嶋の後ろで取材していたJLC解説者の徳増宏美さんに何やらクレーム(?)をつけていたが、なにしろ今日は6着で抽選も6番目、すなわち残り物に緑があったというわけだから、これは仕方ない。あ、誤解のないように言っておきますが、徳増さんは静岡支部の大先輩、仲良くじゃれ合ってるシーンというのが正解です。
A組で1号艇を引いたのは、香川素子! 遠藤が「香川さんとは足がぜんぜん違う」と証言しているように、今日は4着ではあったが評判通りのパワーのようだ。その香川が1号艇を引いたものだから、抽選会場は沸いた。立会人の選手代表・向井美鈴も、香川が白を引いた瞬間におおっと声をあげている。もちろん香川も顔を上気させ、ちょっと照れくさそうに笑っていた。8000円差での滑り込み出場から一気にティアラ獲得もあるかも、と思わせる1号艇ゲットである。
シリーズ組。7Rで逃げ切った水野望美がとびきりの笑顔を見せた。この勝利で明日の勝負駆けにつながったのだから、大きい。愛知支部勢と語り合う水野のもとに整備士さんがやってきて祝福すると、水野は大きなスマイルを見せながら、両手で整備士さんを拝んだ。アドバイスが利いたということだろう。それを受けての勝利と水野の笑顔は、整備士さんをも満足させたはずだ。
10R、関野文が着争いを演じた。というより、いったんは2番手を走りながらも、追いつかれ抜かれて、を繰り返して4着に敗れてしまった。2周バック、先行しながらも内から細川裕子にぐいぐい追いつかる関野。そのとき、競技棟のなかから「イーーーーーーーッ!」という悲鳴が聞こえてきた。3周バックでは同じように内から犬童千秋に追いつかれ、「イーーーーーーッ!」。声の主は平高奈菜のようでした(笑)。たしかに、足の差を見せつけられるかのような、関野にとってはやや残酷な場面である。レース後の関野はやはり呆然とした表情。明日の4R1号艇こそスマイルを!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)