BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

感謝のV!

f:id:boatrace-g-report:20200113174701j:plain

 栗城匠、残念! やや深めのインからきっちりトップタイのスタートを決めたが、峰竜太の4カドまくりに対処している間に、差されてしまった。初優勝はお預けとなってしまったかたちだが、表情をほとんど変えない男は淡々とピットに戻ってきている。内心に忸怩たるものを抱えているはずでも、それを表には出さない。モーター返納作業も、ほぼ無表情のまま進めていた。
 帰り際、顔を合わせるや栗城は「すみません」。もちろん謝る必要などないのだが、今朝の会話でこちらの期待を感じ取ってくれていたか。そして栗城は「道中、3着をキープすることもできなくて……」と1マーク以外の走りを悔いた。やはり表情には出なくても、栗城の胸中は悔恨であふれていたのだろう。力強く「またお願いします!」と帰っていった栗城は、この思いを次のレースに活かしていくことだろう。初優勝は遠くないと確信する。

f:id:boatrace-g-report:20200113174747j:plain

 栗城を攻め立てた峰竜太は、栗城にすぐさま「ごめん!」と詫びている。栗城もかぶせ気味に「すみませんでした!」。レースの大きなポイントとなったインと4カドまくりの攻防。これぞボートレースという場面を生み出した二人は、心でノーサイドの握手を交わしたということだろう。峰はこちらの顔を見つけると、「全力投球!」と笑った。あのカドまくりは渾身だったのだ。だとするなら悔いもあるまい。ファイナルの見せ場を生んだのは、たしかに峰だったのだから。

f:id:boatrace-g-report:20200113174810j:plain

 福田宗平は、レース直後こそ淡々としていたが、モーター返納を終え、控室へと戻る道中、顔をしかめて髪の毛をくしゃくしゃっとかき乱した。3着に逆転したとはいえ、1マークではほぼ何もできなかったことが悔しかったに違いない。

f:id:boatrace-g-report:20200113174843j:plain

 白石健は、レース直後からすでに、顔をゆがめて悔しがってみせた。吉川元浩稲田浩二らは声もなく寄り添っている。白石も1マークでは峰に抵抗し切れずに見せ場を作れなかった。それでも2番手3番手はあってもおかしくない展開で連に絡めず。ここが地元水面だけに、なお悔しさはつのっただろう。

f:id:boatrace-g-report:20200113174904j:plain

 徳増秀樹は準V。しかしもちろん、これを望んでいたわけではない。だから表情はややカタい。結果的に枠なり3対3の6コースというのも不本意だったはず。しかし、復活戦組がファイナルで連に絡んだのはこれが初めてのことだ。誇っていい準Vだと思う。

f:id:boatrace-g-report:20200113174926j:plain

 初めてといえば、セミファイナル2着からファイナルに進んだ選手、すなわちファイナル5号艇の選手の優勝も初めて!(準Vは17年住之江の峰竜太がある)そう、これまでは圧倒的にセミファイナル1着組が強かったバトルトーナメントのファイナル。瓜生正義が5回目にして快挙達成!

f:id:boatrace-g-report:20200113175015j:plain

 もっとも、瓜生は「まさかの優勝」と謙遜する。今日は多少の上積みはあったようだが、しかし「出てるか出ていないかでいえば、ぜんぜん威張れない」という足色だった。モーターを仕上げたという実感がなかったのだ。それでも、ボートレースは機力だけでは決まらないというのを、瓜生はしっかり見せつけたと言える。峰がまくって生まれた差し場に飛び込んだのは、まさに瓜生の力量のなせる業だろう。
 それでも瓜生は、レース後はまず峰に「ありがとう」と笑いかけている。峰が全力投球のまくりを放ったことが展開を生んだのだから、そんな言葉が出るのは自然である。会見では「昨日は峰が押してくれた(瓜生5コース、峰6コースで、峰が攻めんとしたのを制しての先まくりで2着)。今日は峰が開いてくれた。全部峰のおかげですね(笑)」と笑わせた。あと、「抽選は当たりを引かなかった興津くんのおかげ」。すべてが他力本願のような言い方(笑)。まあ、それも瓜生らしい謙虚さであろう。

f:id:boatrace-g-report:20200113175058j:plain

 ウィニングランに向かう際には、カメラを向ける報道陣にも頭を下げていた瓜生。それは瓜生を祝福するために残っていたファンに対しても同様であろう。そう、まさにファン感謝3Days! ちょっぴり峰感謝、興津感謝3Daysかもしれないけど(笑)。そういう姿勢を率直にあらわにする瓜生は、この企画レースの勝者にふさわしかったということだろう。ゲットした暮れのBBCトーナメント優先出場権、それがなくとも出場は堅いだろうし、今さら一般戦の優勝ではしゃぐ瓜生ではない。それでも我々も率直に祝福しよう。瓜生正義、おめでとう!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)