朝から大きな整備をしている選手が少なくなかった。まず新田雄史。ボートが整備室に運び込まれており、その横のテーブルでは整備士さんのアドバイスを受けながら本体と向き合う姿があった。４Ｒはクランクシャフトとギアケースを交換しての登場となっている。整備を終えた後はまっすぐ水面に向かっており、手応えを確認もしている。
入れ替わるように、西山貴浩がボートを整備室に持ち込んだ。その直前には、あの賑やかな男がかなり難しい顔をしており、整備の方向性を考え込んでいる様子でもあった。なんだかんだ言って、この男は勝負師。その表情こそがニッシーニャの本質ともいえる。まあ、お茶らけてる姿も西山の本質ではあるんですけどね。二面性がきっちり両立されているのだ。
昨日のコメントが弱気だった枝尾賢も本体整備をしていた様子。２Ｒ発売中にモーターをボートに装着している。部品交換については直前情報を確認してほしいが、忙しそうな朝を過ごしていたのは間違いない。
瓜生正義も本体を開けているようだった。これは、ドリーム１回乗りの初日のルーティンのようなものであって、この姿は何度も何度も見かけたものである。直前情報を見なければ確たることは言えないが、点検程度だった可能性は大きいだろう。
気になるのは、田村隆信だ。２連対率が高くないモーターを引いた田村だが、地元ＳＧでそれに甘んじているわけにはいかない。ドリーム１回乗りで時間がたっぷりとある今日は、それを活かしてやれることはすべてやり尽くしてくるはずだ。２Ｒ発売中には切り上げてモーターを装着。このあとは試運転と調整を繰り返すことになるだろう。とにかく、その調整、整備こそが気合のあらわれでもあるということだ。
１Ｒは大山千広が逃げ切りを決めた。レース後、エンジン吊りを終えるとすぐさま、瓜生に話しかけている。しばし装着場のど真ん中で語り合う大山と瓜生。というより、明らかに大山がアドバイスを求めて、それに瓜生が応えている姿だった。大山がＳＧに来るたびに見られる光景だ。勝っても負けても、瓜生の言葉で終わったばかりの戦いと向き合うことができる。そのたびごとに大山はスキルアップしていると言える。
安河内将が１ＲでＳＧデビュー。しかし、道中の競りに負けてシンガリ負けという苦い初陣となってしまった。ピットに戻り、仲間の協力を得てボートを運んでいる際の、呆然としたような顔つきが印象に残った。初めて経験するＳＧの戦いに、安河内は何を思っただろう。控室あたりで、師匠の峰竜太との“反省会”が繰り広げられていた可能性もある。
その１Ｒでは、磯部誠も５着に大敗している。ピットに引き上げてきた際には、愛知勢に言葉をかけられて、笑顔も見られていた磯部。しかし……。
ヘルメットを脱ぎ、操縦席に入ってしまった水分をクリーナーで吸い取っている最中に、思い切り顔を歪めていたのだった。こちらが本音ですよね。後半８Ｒで、この鬱憤を晴らすことができるか。（黒須田）
