BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――さまざまなたたずまい

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 9Rで石野貴之がフライング。今期2本目であり、1本目のF休みはすでに消化しているものの、斡旋は11月14日最終日の福岡周年まで。ということは、チャレンジカップが2本目のF休みにかかってしまう。昨日の時点で賞金ランク26位だから、昨年のグランプリ覇者が年末に関して窮地に立たされてしまうこととなった。残る桐生と福岡の周年が超絶勝負駆けとなる。

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 そうした状況を選手仲間はある程度わかっているだろう。さまざまな選手から石野は声をかけられている。いずれも神妙ではなく、笑顔を交えながら、ということはむしろ気遣いながらの会話と見えた。石野の胸中を思えば暗い話にはもっていきたくなかっただろうし、石野も必要以上に配慮させまいとしただろう。F2ということで、明日からは慎重なスタートを強いられるが、できうる限りの上積みをして、2つのGⅠに向かってほしい。

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 後輩のそうした姿を見ていながら、その2レース後にインからコンマ03を決めて逃げ切った王者よ! この1号艇は絶対に落とせないと決意して踏み込んだ、その勝負強さはさすがである。仲間に出迎えられて戻ってきたその表情の凛々しさは、これぞ王者というたたずまいであった。また、納得のいくレースでもあったのだろう、湯川浩司と話しながら表情はじわじわと緩んでいった。それはまさに王者の微笑! やはり松井繁は知命を超えてもまだまだ、松井繁である。

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 その11Rで、上野真之介の連続3連対がついに途切れた。8月のボートレースメモリアル最終日から約2カ月、ひたすら舟券に絡み続けたのだから、これはアッパレ! SGで途切れたのは致し方ないところで、ここまでの健闘に拍手を送るしかない。前半は2着だったしね。それでもさすがに脱力した表情を見せていた上野。また明日から舟券に絡みまくってくださいね!

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 10R、磯部誠は3着。昨日、「もう終わったわー」と言っていた磯部だが、今日は4着3着だから、ちっとも終わってないし、モーターの数字の低さを思えば健闘している。しかし、磯部の表情は冴えない。今節は登番が下から3番目の磯部は、モーター架台をボートリフトに準備する新兵仕事をこなしていたが、間近で顔を合わせた際、思い切り顔をしかめて、苦しそうな表情を見せたのであった。モーターの感触もあるのだろうが、これは10Rのレースぶりについての表情だったかも。1マーク、まくり差しに入った瓜生正義の内からボートをこじ入れる格好で、瓜生を弾き飛ばす展開になってしまったのだ。まさに展開のアヤというやつで、実際に違反はとられていないのだが(競技本部には呼ばれていた)、後味は悪かったか。ピットに戻った直後、長身を深く折り曲げて瓜生に何度も頭を下げており、その反省が胸に残ったことだろう。

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 対する瓜生は、それもレースだとばかりに、サバサバとした表情。磯部に詰め寄るような場面など、もちろんないのであった。その後も粛々とレース後の作業をしており、まったく後腐れのない笑顔も見せていた。笑わせていたのはニッシーニャですがね(笑)。その振る舞いもまた、瓜生の人柄をあらわしているのである。

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 さて、磯部が佐藤翼とともに11R分のモーター架台を準備していたとき、そこに残っていた架台は14台であった。11Rと12Rの分で12台だから、2台余っていたわけだ。つまり、その時点でもまだ試運転をやめなかった選手が2人いたわけである。ひとりは魚谷智之。7R6着後、ボートを再び水面に下ろして乗り込んだわけだ。さらに、試運転を終えたあとには本体整備に取り掛かっている。もう時間はほとんど残されていないのに、魚谷は手を止めなかったわけだ。明日も朝イチ(というか午後イチ)から激しく動くことになるのだろう。

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 もう一人が宮地元輝。最後にボートを上げたのが、この男だ。10R発売中の試運転では、同期の平高奈菜がエンジン吊りをしようとボートリフトで待ち構えていたのだが、宮地はボートを係留所に戻して、試運転続行の意思を平高に対して示した。許されるギリギリまで乗る(そしてペラを叩く)心づもりだったわけである。

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 で、11R発売中に切り上げてボートを上げたら、そのとき装着場には選手の姿がほとんどなく(いや、1人だけいた)、エンジン吊りに出てきてくれる選手がいなかったという。平高は10R終了後の1便で帰宿したようだ。というわけで職員の方がヘルプしてエンジン吊り。架台に乗せて、整備室へと運び始めると、それを見つけて「あー、ごめんっ! ぜんぜん気づかんかった!」。1人だけ装着場にいたのは、ニッシーニャなのでありました(笑)。もちろん意地悪したわけでなく、西山も明日の艇旗艇番の準備中だった(仲谷颯仁の分もやってあげてました)。二人とも、遅くまでお疲れ様でございました!(黒須田)