4Rからイン9連勝。というわけで、勝負駆けを成功させた多くは、1号艇の選手なのであった。7Rは白井英治。2着条件の勝負駆けを逃げ切り1着で突破。昨日までは中間着が多く、渋い表情も多く見られた一節であったが、ひとまず安堵したことだろう。レース後は大きな動きがなく、早々に帰宿している。
10Rでは石野貴之が逃げ切って勝負駆け成功。こちらも2着勝負だったが、白いカポックをしっかり活かしたかたちだ。16年オーシャン、17年グラチャンと鳴門SGを連続で制した男が優勝戦線に残った。この10R、2着が太田和美で大阪ワンツー。太田は1着条件だったので、わずかにノルマに届かなかったのだが(最終的に次点)、後輩の快勝を素直にたたえていた。
そして12Rは松井繁が逃げ切り快勝。松井もまた2着条件で臨んでおり(結果的には3着でも残った)、実力者たちが最後のチャンスをばっちりモノにするという連鎖を完成させている。1号艇だから勝負駆けに成功した、というわけではない。1号艇を残して、勝てば届く位置につけていたからこその勝負駆け成功なのだ。準優は好枠というわけにはいかないが、明日はあらゆる手を尽くして準優突破を狙ってくるだろう。レース後、他の5人がすべて、エンジン吊りをしている松井に歩み寄って挨拶をしている。松井は力強く右手をあげて、それらに応えた。そこにはたしかに王者の風格があった。
そうしたなかで、18位以内から転落してしまったのは、たとえば11Rの馬場貴也。馬場に最後に残されていたのは6号艇。3着条件の勝負駆けではあったが、内枠に山口剛、瓜生正義がそろうという厳しいメンバー構成だった。なすすべなくの6着で、18位以内に残ることができなかった。ピットに肩を落として引き上げてきた馬場。予選道中では大きい着をとってしまってもいて、それらを悔やみもしただろうか。
12Rでは、古賀繁輝が3着条件の勝負駆けに失敗。こちらは2号艇で、チャンスは十分とも思われたが、無念の大敗となってしまった。ピットに戻り、装着場のモニターがリプレイを映し出すと、その前に陣取って見つめる古賀。レースを見ながら、隣に立った魚谷智之にずっと何やら話しかけていた。リプレイが終わっても言葉は止まらず、魚谷に話しかけながら控室へ。吐き出したい思いがあったということだろう。
18位以内をキープしたのは、たとえば11Rの西山貴浩。5着で6・00とそこまで厳しい条件ではなかったが、5号艇5コースでは大敗の危険性もあったわけで、気合の入る一戦ではあった。道中は西村拓也との3着争いに競り勝っていて、レース後はその充実感もうかがえる、力強い表情となっていた。12Rの展示から枝尾賢が戻ってくると、「枝尾さん! セーフ!」と嬉しそうに報告していた。予選トップを争っていた枝尾へのエールの意味もあっただろうか。
18位は深谷知博。8R終了時点で得点率6・00の18位におり、自身の勝負駆けとなった10Rでは3着で6・00をキープ。ところが、逃げ切った石野が18位以内に浮上しており、一時は19位に下がっている。それが、11Rで馬場が大敗して18位に復帰し、12Rでは松井が下から上がったものの古賀が順位を下げて、18位に残った。その12R後、深谷はその状況を把握しているのかどうかまるでわからない、実に淡々とした様子。崖っぷちに立っているとは微塵も感じていないかのような、飄々っぷりなのであった。ボーダー近辺にいる選手って、状況を記者さんとかに質問したりしていることが多いのに、深谷はそれもなし。その静かな感じがちょっと不気味なのだが、どうか。
得点トップ争いは、8R終了時点では、その8Rを逃げ切った枝尾賢がリードしている。11R、1着なら8・17で枝尾を上回る瓜生正義が登場。1マークでは差して山口剛に舳先をかけ、そのまま粘り込もうとしている。しかしそれによって初動の位置が狂って2マークは流れ、山口に逆転を許してしまった。その走りっぷりは、予選トップをもぎ取りにいったものだったというのは考えすぎだろうか。
レース後、瓜生と山口は長くレースを振り返り合っている。山口は、この勝利で準優1号艇は決定的となっており、表情は明るい。対する瓜生も笑みを浮かべてはいるのだが、競り負けたことも含めて、少々顔がこわばっているようにも見えた。
ただ、この2着で予選トップ争いは瓜生に有利となった。2着で瓜生を上回る枝尾、1着で瓜生を上回る長田頼宗が5号艇、6号艇なのだ。残念ながら、二人とも着外に沈み、その時点で瓜生がオーシャン連覇に王手をかけた。枝尾、長田は疲れた表情でピットに戻ってきているが、それが大敗の疲労なのか、トップを逃した悔恨なのか、どちらがより強いのかについては判断がつきかねた。明日の準優はともに2号艇。今日の結果が準優をどう左右するだろうか。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)