これを書いている時点ではあがっているのだが、朝のうちはけっこう激しく雨が水面に叩きつけていた。記者室からピットに向かうのもうんざりするくらいだったのだが、選手たちはそんな雨など厭わない。桐生順平が早々に水面に出ていくのを見て、感心するばかりだった。あがってきた桐生は、たまたますれ違った須藤博倫に満面の笑顔を見せた。口が「イ」の字に動いて、「いい」と言っているように見える。今日の気候は桐生のモーターには味方している!? その後もゴキゲンに須藤と話し込んでいた。
徳増秀樹も、桐生と同じようなタイミングで水面に降りている。非常に物静かな雰囲気で、黙々と装着の点検をし、黙々とリフトへとボートを運ぶ。今日は6号艇、濃い戦いを見せるための準備は朝から着々と進んでいる。
装着場のいちばん手前では、西山貴浩がモーターを丁寧に丁寧に装着し、次の動きのための準備を進めていた。こういうときの西山は、真剣そのもの。撮影の規制線がすぐ近くだったので、西山とは数m離れた位置にいたのだが、そこにこちらが立っても一瞥をくれる程度。その後も鋭い目つきで作業を続けた。もっとも、これだけで終わらないのもニッシーニャ。作業に一区切りつくと、こちらに聞かせるかのように、「よーし、今日は大穴出すぞー!」。おおっ、と気色ばんでみせたら、「3着で」だって。それじゃあ大穴にはならんでしょうよ。もちろんこれは西山流の自虐的物言い。しっかり優出圏内を狙うレースをするはずだ。
整備室を覗き込むと、やけにゲージ擦りをしている選手が多かった。多かったといっても、瓜生正義、篠崎元志、魚谷智之、深谷知博だが。それでも、今節は4人がそのテーブルにいるということが珍しい。多くはペラ調整所、あるいは本体整備をしていたからだ。この3人はそれぞれに好感触を得ているということだろうか。まあ、瓜生は予選トップ通過なのだから、感触が悪かろうはずがないわけだが。
そのなかで魚谷は、2Rが終わるとプロペラを装着し始めていた。水面に出ていく準備だ。記者室は水面が見えないので、これを書いている時点での動きがわからないのだが、それなりに早いタイミングで水面に降りていると思われる。
ピットでは、JLCのインタビューの収録が行なわれていた。呼ばれて応えていたのは白井英治。にこやかにインタビュアーの佐山夏子さんと会話を交わしていて、リラックスした雰囲気だ。インタビューを終えると、いったん控室に戻っていて、本格的な動き出しはまだ先になるか。まあ、白井は決して早くからドタバタするタイプではないので、いつも通りの時間を過ごしていると言っていい。
準優1号艇の山口剛、茅原悠紀も本格的な作業はまだこれからの様子で、エンジン吊りには控室からあらわれている。山口、茅原ともにSG初優勝はセンセーショナルであったわけだが(山口はやまと卒業生では初のSG制覇、茅原は6コースからグランプリ制覇)、それから二人ともけっこう時間が経ってしまっている。2つめのタイトルを目指して、準優を万全に戦い抜くべく、午後からは忙しい時間を過ごすはずだ。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)