BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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ピット雑感・凛として勝つ

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 10Rのエンジン吊りが終わり、11Rの展示が終わった後のピットは早くも静謐さに包まれていた。昨年も書いているのだけれど、SGの優勝戦前との違いはこれだ。報道陣もSGほど多くないということもあるのだろう。ざわめきはほとんど感じられない。
 そんななか、最後にボートを展示ピットに移動させたのは桐生順平。ペラ調整室から音のないピットにあらわれ、ペラを装着してエンジンを始動させる。2マークあたりの水面で2度ほど握り込みを確認してから、展示ピットへ。そのエンジン音は静かなピットによく響いたのであった。

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 12R発売中も、その静けさは変わらない。12R発走直前、東京支部の若手たちwith中野次郎と、大谷健太が2マークを正面に見ることができる水面際に集結。彼らは思い思いに談笑していたが、それがピットの静かな空気を切り裂くものにはならない。それほどまでに静かなピット。うん、こういう空気もいいものだ。人の多いSGでは味わえない独特の緊張感。バトルトーナメントファイナルのピットも、実に味わい深い。

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 12Rが終了すると、もちろんエンジン吊りやモーター返納などで選手の動きが活発になるので、賑やかさがやってくる。しかし、やはりSGほどの騒然とした感じはやはり見られない。ファイナル出走選手はほぼSGクラスとはいえ、やはりこれは一般戦。豪華ではあるけれども、勝者を精一杯称えるなどということは、ほぼSGクラスだからこそ起こらないし、敗者もまたSG以上に淡々としているように思えた。モーター返納がおおよそ終わったあたりで、整備室にはリプレイが流れ始めたようだった。それを見上げるファイナリストたちは、誰もがにこやかだった。田村隆信は特に笑顔が深かった。もちろん勝てなかった悔しさはあるものの、これは引きずるような類いのものではない。大舞台での敗北よりも切り替えは早くできて当然ではある。

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 ただ、森高一真のレース直後は、なかなか険しかった。眉間にシワが寄り、息遣いも荒い。他の選手から声をかけられると、さっと笑顔を浮かべて明るく返してはいたが、すぐさま厳しい表情に戻る。見せ場を作れなかったこと、自分の舟券を買ってくれたファンに応えられなかったことは、やはり森高の気持ちを曇らせる。

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 優勝は赤岩善生。完全優勝! これが10度目の完全優勝で、これは歴代単独トップ(これまでは今村豊とトップタイで並んでいた)。もちろんまだ伸びる可能性のある記録ではあるが、ひとまず誇らしいことだろう。
 12Rの展示が終わった後、赤岩とすれ違った。こちらと会釈を交わしたときの顔が、なんとも澄み切ったものだった。これは負けないな。少なくとも、妙なミスはないだろう。そんなふうに感じさせる表情だった。
 優勝を決めてピットに戻ってきたときもまた、なんともスッキリした表情。赤岩のなかで逃げ切れる確信があり、それを現実のものにしたという充実感が伝わってくるような、凛とした姿であった。

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 勝つべくして勝った、ということである。
 赤岩としては、同じ姿を次はSGで見せなければならないだろう。まあ、一般戦だろうとSGだろうと6日間開催だろうとトーナメントだろうと、やるべきことは変わらないという男ではあるが、昨年9年ぶりのグランプリ出場を果たして迎えた今年、また違う結果を見せたいと思うのが自然である。ひとまず、これで今年新設された「ボートレースバトルチャンピオントーナメント」(11月28日~12月1日に平和島で開催されるプレミアムGⅠ)の優先出場権をゲットした。同じトーナメントの舞台で、この再現を果たせるかどうかも注目だ。
 というわけで、ことさらにおめでとうと強調するのは、今日の赤岩にはふさわしくない。ただ、勝つべくして勝った、見事な優勝だったと称えたい。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)