BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――苛烈

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 西山貴浩が11Rまくり快勝! 初出場のグランプリで、自力でトライアル2nd進出を決めてみせた。賞金ランク17位からのいわば下剋上だから、お見事の一言だ。
 今日もやはり普段以上に緊張感が見えていた西山だが、レース後はいつものニッシーニャ! 凱旋しボート上から仲間に向けてガッツポーズを決めると、ボートを降りてからは笑顔満開。“相方”の池田浩二も嬉しそうで、西山と戯れたばかりか、カメラマンの前では頭を小突くというか締めるというか、そんなポーズであらわれたりした。西山ももちろん、それに応えて、顔を作っている。エンターテイナーぶりがあらわになったのだ。
 着替えを終えた西山は、遠くにこちらの姿を見つけて、ド派手に右手を高く掲げて「イェーイッ!」。実は前節の若松でグランプリについて少し話す機会があり、軽くハッパをかけてもいたから、西山のその笑顔がなんだか嬉しかった。西山行きつけの居酒屋「勢人」のお父さんとお母さんも喜んでいるに違いない。ニッシーニャ、本番はここからだぞ!

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 このレース、白井英治が3着で2nd行き当確を出した。まあ、いつも通りに険しい顔つきのレース後ではあったが、印象的だったのは徳増秀樹を気遣っていたことだ。レース直後もそうだったし、12R発売中に徳増がペラをチェックしているときにも、白井は徳増に話しかけ続けていた。

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 徳増はまさかの6着6着で終戦。レース後はさすがに気落ちした様子が見られた。白井に対し「今日はやり尽くした」とは返していたが、結果は納得のいくものではないだろう。そんな徳増に配慮を見せた白井は、なんだか大きく見えたのだった(実際、背は高いけど)。

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 菊地孝平が道中競り負けての5着。これで得点は20点となり、2nd行きは12Rの結果に委ねられることとなった。ただ、レース後はやや呆然とした様子もありはしたのだが、着替えを終えるとすでに前向きになっている。「たぶん僕は大丈夫」と、自分に言い聞かせているわけでもなさそうに、強気に言い切ってみたり。そして、本当に2nd行きが決まったのだから、感じるものがあったのだろうか。ちなみに、今節はスローからのスタートしかしておらず(スタート特訓でも)、ダッシュはまったくわからないとのこと。6号艇の明日は枠なりならダッシュスタートになりそうだが、果たして。まあ、この人のことだから、明日は特訓でしっかり掴んできそうだけれども。

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 11R2着で、菊地と同得点に並んだ新田雄史も、結果的に2nd行きと相成った。選考順位が菊地より下なので微妙なところではあったが、まずは胸を撫でおろすこととなった。レース後は笑顔も見えていた新田は、6号艇の明日は「枠なりで行きます」と言い切っている。6コースからの戦略がどんなものになるか。明日は整備、調整の様子も気になるところだ。

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 12Rは平本真之が逃げ切って、トライアル1st連勝。文句なしの2nd進出だ。今日もゴキゲンのレース後で、イン逃げということもあってか、昨日のようなガッツポーズは出なかったものの、笑顔を振りまいて喜びを表現している。この勢いで2ndも快進撃……とはなかなかいかないのがグランプリの怖さ。6年前の平和島大会でも毒島誠が1st連勝で2ndに臨んだものの、まるで人が変わったかのように精彩を欠いてファイナル行きを逃している。ここからどう切り替えて臨めるかが、平本にとってもポイントとなろう。

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 もうひとりの2nd行きは、12R2着の松井繁。リフトに乗り込む前、松井は、出迎えた仲間に向かって右手で拳を作って見せている。やはり1st発進だった5年前、松井はまさかのシリーズ回りを喫している。また3年前も1st発進で、こちらは2着3着で勝ち上がり。このシステムの悲喜をどちらも味わった王者は、その2着の意味をがっつりと知っていたということだ。ちなみに1stから2ndに進んだ3年前は、ファイナル行きを逃している。それをふまえて、今回の2ndをどう戦っていくのかは見ものである。

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 12Rでは、ピットに一瞬、緊張が走った。2周1マーク、先マイを仕掛けた岡崎恭裕に瓜生正義の舳先をめくるようなかたちになり、瓜生が転覆。岡崎もそれに乗り上げて転覆している。特に乗り上げられた瓜生が危険な転び方に見えたので、「瓜生さん、大丈夫……」という声も選手から聞こえてきている。やがて、「両選手、異常なし」のアナウンスが流れると、一気に空気が変わった。誰もが安堵し、息をつき、顔つきが柔らかくなっていた。

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 無事で何よりではあったが、瓜生も岡崎もこれで敗退が決定。岡崎は不良航法もとられている。レスキューからあがってきた二人は自力で控室に戻ったが、岡崎は思い切り顔を歪めてもいた。それは、1st敗退の痛恨か、それともどこか痛めたのか、判然とできない表情で、先輩を巻き込んでしまったことも含めて、多くの意味であまりにも痛い転覆だったのはたしかだ。

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 せっかく引き当てた1号艇を活かせなかった前本泰和のレース後は、大きな脱力感が伝わってくるものだった。表情に内心を強くあらわさないのはいつものことでも、やはりチャンスが水泡に帰す結果となってしまったことに、悔恨を感じていたに違いない。前本は前回も1st敗退。2度つづけてのシリーズ回りとなってしまった。来年こそ、リベンジを果たしたい。

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 井口佳典もまた、脱力感を発散させた一人だ。呆然、とも見えた。グランプリ出場は、このクラスの選手の当たり前の目標。それを果たしつつ、しかし途中で離脱しなければならないのは、屈辱だし、信じがたい事態であるのは間違いない。前本や井口の様子は、まさにそれを表現しているのだし、またグランプリという舞台の、とりわけトライアル1stの過酷さ、苛烈さの象徴でもある。

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 前回の平和島大会の覇者、茅原悠紀も今回はシリーズに合流することになった。前回も1stスタートで、このシステムになってから唯一の2nd組以外から出た優勝者。その再現を果たしたいところだったが、かなわなかった。昨日は苛立ちが伝わってくるレース後だったが、今日は静かなレース後だった。それはやはり、脱力と捉えるべきだろうか。トライアル1stの着順点は高く、それをシリーズにも持ち越すので、茅原はシリーズでは現時点で得点率2位となっている。これを活かして、今回はシリーズ制覇で目立ってほしい。

 

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 シリーズでは、やはり石渡鉄兵の無傷3連勝がピットを賑わした。先頭を走った瞬間、「鉄兵さん3連勝」と囁かれていたし、レース後もいろいろな選手が石渡に声をかけ、称えている。1st組が合流する3日目以降も、主役の座を渡したくはないところ。

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 その石渡に敗れた1号艇・原田幸哉の表情がやはり冴えない。初日が6着、今日の前半が5着と、まさにゴンロク。巻き返しに絶好の1号艇を活かせなかったのは、やはり痛恨だ。原田は出迎えた柳沢一のもとに歩み寄り、師弟による“反省会”が長く続いた。愛弟子の言葉から、反撃のヒントは見つけられただろうか。

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 SG初出場の塩田北斗はここまで6着2本。機力的に相当厳しいのだろう、昨日も今日も、遅い時間帯まで試運転をし、さらに調整を続けている。兄貴分とも言えるニッシーニャは2nd行きを決めた。刺激を受けて、明日からおおいに目立つ走りを見せてもらいたい。(黒須田)

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 さあ、トライアル2nd。昨日と今日、スタート練習が行なわれています。今日のスリット写真を一緒に見る明日の12R1~3号艇。