BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――【シリーズ準優】3種のワンツー

●8R

 宮地元輝が逃げて1着。島村隆幸が2番手争いに競り勝って2着。宮地はSG3節目。島村はSG初出場。SGにおいては新勢力と言える2人がワンツーを決めて、揃ってSG初優出となった。初日からシリーズを走ったなかでは予選最上位と2番手の二人。その勢いのままに優勝戦に辿り着いたということにもなるか。宮地を出迎えたのは、深川真二はもちろん、岡崎恭裕や前田将太らの福岡勢で、まさにSG常連軍団。その輪のなかで宮地は、充実感たっぷりの笑みを浮かべて、優出の喜びに浸った。

 島村を出迎えたのはまず田村隆信だ。自身も2号艇で準優に登場するだけに、ひとつの刺激になったか。SG初出場初優出というちょっとした快挙に、島村も歓喜を味わっているようだった。その後は、チルトを跳ねて伸び、2番手を競った佐藤翼、最後はその佐藤を抜いて3着に浮上した上條暢嵩とともに笑顔でレースを振り返った。佐藤は一か八かの賭けに出て見せ場は作り、上條はなんとかトライアル組の意地を見せ、表情は明るかった。それを上回るほどのいい表情だった島村。明日はSG初出場初優勝という、さらなる快挙に挑むことになる。

 それにしても、宮地はおもろい男ですな。会見で優出の感想を聞かれて「コロナになってからしかSGに出たことがない。(観客が少なく、また出待ち入り待ちがなく)SG感がない」と嘯いたり、出走表に掲載されている能力値がやけに低いことについて「これ、基準は何なんすかね。こんなに劣っているとは思わない」と不満をあらわにしたり。SG初優出の歓喜ではなく、素直に感じていることを口にするあたりは、実に好感が持てたのでありました。なお、宮地は12R終了直後までペラ調整。ピットに残った選手全員が12Rに見入っていたなか、宮地はペラ室にこもっていたのだ(ペラ室にもモニターはあるが)。この我が道を行く感じも最高です!

●9R

 8Rとは一転して、1着・瓜生正義、2着・濱野谷憲吾。3着の松井繁まで含まれば、歴戦の勇者たちが上位を独占する格好となった。だからだろう、レース後はそれぞれにまったくの自然体。別にシリーズを軽く見ているというのではなく、もうひとつ上の舞台で経験を刻んできた者たちにとって、ここは高揚するようなタイミングではなかったわけである。瓜生は原田幸哉とハイタッチしているが、これは原田に求められたもの。濱野谷とは笑いながらレースを振り返っていたが、その様子はまさにベテラン同士、戦友同士の余裕の会話のように見えた。

 濱野谷はいつも通りのマイペースな雰囲気。まったくもって濱野谷らしい、恬淡としたレース後なのである。個人的には、平和島クラシックの勝負駆け(優勝で権利ゲット)なのだから燃えてほしいのだが、そういう力の入った感じは微塵もなし。これが濱野谷憲吾なんだよなあ、とそれはそれで嬉しいのでありました。

●10R

 準優ラストカードは1着・毒島誠、2着・石野貴之。ここはトライアル1stから回ってきた2人のワンツーとなった。もちろんここが目指すところではなかったわけで、やはり高揚感がふたりから漂うことはなく、とはいえやはり勝ち上がりは勝ち上がり、それぞれに気分の好さそうな表情はみせている。
 石野の優出に関しては、仲良しの西山貴浩が実に嬉しそうだった。当然、岡崎恭裕のエンジン吊りを終えるや、石野にちょっかいを出しにいく西山。石野も楽しそうに西山の言葉に笑みを見せながら、軽口を飛ばし合っていた。

 毒島は優勝戦1号艇をゲット。ただ、会見にあらわれた毒島は、いつものような明るさはあまり見えず、どこか神妙な様子にも見えたのだった。足に関しては、初日だけ失敗し、あとはいい状態だという。その初日の失敗が、今ここに毒島を置くことになった。そう、まさにたった1日の失敗が。これがグランプリの厳しさ。トライアル1stの過酷さ。それを毒島は、シリーズ優勝戦1号艇だからこそ、なお強く味わっているのかもしれない。ともかく、白カポックを着る以上は責任を感じながら、毒島は全力で獲りにいくことだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)