BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――【シリーズ】日常的

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 思いのほか静かなレース後であった。ボートリフトに集まった選手たちは、ごく普通のレース後のように選手の帰還を待っている。真っ先に戻ってきた海野ゆかりに手をあげるでもなく、静かにその場にたたずんでいた。とても優勝戦の後とは思えない。ビッグレースの取材が中心で、一般戦の優勝戦取材の経験が実に少ないので、これが当たり前の優勝戦後なのかも、と思ったり。あるいは、「海野ゆかりほどの選手なのだから、一般戦優勝は大騒ぎするほどのことではない」とみんな考えていた?

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 たしかに、レディースチャンピオン2度制覇、SGの経験も多数の海野だ、GⅢの優勝は女子リーグなどの女子戦で何度も経験しているのである。それに、本来は大晦日の12Rを目指していたのだから、11Rで満足しているはずもなかろう。海野は表情を崩すこともなく、淡々とレース後の一通りの作業を終えた。ようやく頬が緩んだのは、JLCのカメラサインのためにそのブースにやって来たとき、解説者の徳増宏美さんに祝福されたときだった。先輩の嬌声が、優勝を実感させるものになったのだろう。
 ともあれ、11Rであっても大晦日を優勝で締めた2020年の海野。21年はもちろん、12人入り――クイーンズクライマックスへの復帰を目指して、1年を戦い抜くことになる。

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 勝者がそうであるから、敗者も大きく悔しがったりとか、大きく落胆したりとかはなかった。地元で是が非でも優勝したかっただろうと想像していた長嶋万記も、淡々としたもの。豪快なツケマイであと一本まで迫った竹井奈美も、特に表情を変えることはなかった。見せ場を作れなかった塩崎桐加も同様だ。

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 4番手を競り合った山川美由紀と渡邉優美。先着した渡邉は、山川をやや飛ばすようなかたちにもなっていたからか、申し訳なさそうに頭を下げている。しかし山川はそれを笑い飛ばして、競り合いのときの様子を渡邉と語り合い始めた。その様子がなんだか楽しそうで、後方での接戦ではあったが、レースをしたという充実感を覚えてもいるようだった。それで渡邉の顔にも笑みが広がっていく。うん、やっぱりすごいわ、山川美由紀。(黒須田)