BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

トーナメント終了!

 9Rからの勝ち上がりは
坪井康晴
葛原大陽
櫻本あゆみ

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 トーナメント1号艇は、結果的に全員が勝ち上がりはしたものの、1着は6Rの一柳和孝とこの坪井だけだった。追い風が強めだった影響もあるのか、よく差しが入ったという印象だ。この坪井にしても、葛原の差しに迫られている。押し切ったことに安堵の思いが大きかったことだろう。盟友・菊地孝平とのやり取りは、お互いの信頼感を実感させられる、実に自然体のものとなっていた。

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 葛原は惜しかったけれども、見事に勝ち上がり。同支部の先輩・田村隆信にねぎらわれて、笑みを浮かべた。気配は悪くなさそうだっただけに、セミファイナルの台風の目になれるかどうか、楽しみにしたいところ。

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 女子選手の勝ち上がりは、渡邉優美と櫻本だけになってしまった。レース後はキャブレター調整。セミファイナルへの準備を着々と進めた。そのセミファイナルは抽選で緑を引いてしまったわけだが……。

 10Rからの勝ち上がりは
柳沢一
片岡雅裕
守田俊介

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 畠山が前検でS評価を下した柳沢がピンピン! ここは守田の前付けに抵抗してスロー4コースから、しっかり差して抜け出した。畠山の見立て通りのパワーを見せつけた。といっても、高揚感を見せないのがこの人。感情の揺れをほとんど感じさせない柳沢は、そう、あのグラチャン制覇のときだって淡々としていたものだ。師匠の原田幸哉は「レース場以外でもこんな感じ」と言っていたっけ。セミファイナルは好枠を手にしただけに、このまま突っ走ってもおかしくないし、明日も(明後日も?)淡々とした柳沢一、とか書くことになるのだろう。

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 片岡はやはり不満げなレース後であった。森高一真との会話のなかで笑みも見えはしたけれども、それは苦笑いの濃度がそれなりに強いもので、そこには悔恨が間違いなく貼りついていたのだった。

 11Rからの勝ち上がりは
今垣光太郎
西山貴浩
小坂宗司

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 ピットにあがるや西山は、出迎えた瓜生正義に何かを切々と訴えた。かなり不満というか不可思議というか、とにかく納得がいかない様子で、悔しがるというよりは理解しがたいことが起きているという雰囲気なのであった。
 菊地孝平が「さすがグランプリのファイナルに出る人はきっちり3着に入ってくるねえ」とからかわれ、「2着ですっ!」と不貞腐れてみせた西山。そして、菊地に対しても同じように訴えかけはじめ、最後には「道中の足はよかったよ」と慰められている。
 ようするに、差される手応えはまったくなかったのに、なぜか差されていた、ということのようだ。それも2艇に差されているのだから、何が起こったのかわからん、と。そのあたりを、瓜生や菊地に問いかけ、原因を探ったのだろう。
 で、12R発売中になって僕に語ったのは、「昨日、家のあたりは雪がすごすぎて、最寄りの駅まで歩いていくしかなかったんですよ。45分も。それで今日は筋肉痛ですよ。そしたら差された」。原因は筋肉痛ですか(笑)。そんなジョークをわざわざ言いにきたくらいだから、ひとまず本当の敗因はつかめたものと思います。明日はその部分を解消する作業に没頭することになるだろう。

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 その西山に逆転されたものの、3着で勝ち上がった小坂。同期の葛原らに祝福されて、嬉しそうに目を細めていた。抜かれたことへの複雑な思いはあるにせよ、前向きにセミファイナルに向かえることだろう。

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 勝ったのは今垣光太郎。向所浩二が3カドに引いてせめたことで、差し構えになったが、これが鋭く突き抜けた。あがってきた今垣は、50歳を超えているとは思えない爽やかさで、エンジン吊りに参加した選手に対して丁寧に頭を下げ続けていた。今垣は今節最年長(年齢も登番も)。しかしそんなことを嵩に着ることなく、「ありがとうございました」と後輩たちに声をかけていく。その声は弾んでいて、歓喜が伝わってくると同時に、今垣の人柄もまた伝わるレース後なのだった。

 12Rからの勝ち上がりは
森高一真
井口佳典
渡邉和将

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 ピットにあがるや、整備室のモニターが映し出すリプレイに見入った井口。僕はちょうどそのモニターが見える場所にいて、そこに井口が駆け付けるかたちとなっている。その迫力たるや。やはり差されたことに納得がいかなかったのだろう、一刻も早く1マークの展開、自分の旋回や位置取りを確認したかったのだろう。その井口にささっと並びかけたのが菊地孝平。菊地がもろもろと声をかけ、それによってやや落ち着いたか、井口は笑い声をあげる瞬間もあった。悔しさは消えずとも、菊地の言葉が少しくらいの癒しにはなったことだろう。

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 森高は会心だ。コースを動き、展開をつかまえて抜け出す。6号艇での勝利なのだから、喜び倍増であろう。2年前の多摩川大会のセミファイナルでも、6号艇から前付けして1着をもぎ取っている森高。バトルトーナメントでの緑カポックと相性がいいのか? その森高を仲の良い西山が祝福。さらに、たまたま近くにいた僕に西山が「黒さーん、これで森高さんに酒奢ってもらえますよー!」と叫んだ。酒!と気色ばむ僕に、森高は右手で力強いガッツポーズ! お、奢ってくれるのね! という意味ではないんだろうけど(泣)、森高のガッツポーズは実に珍しいのであって、このお祭り感のなかでの6号艇快勝にテンションが上がっているのであった。

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 さて、速報的にトーナメントの各レース後を駆け足で記してきたが、「レース直後」ではなく「レース後」の動きで目に付いたことがあった。それは「キャブレター調整」をやっている選手が実に多かったということ。7R出走の富樫麗加が9R発売中に行なっているのに気づいたのだが、その後も廣中智紗衣、中村魁生、中田元泰らが次々とキャブレターを分解していった。その流れはさらに続き、作業用のテーブルは一時、複数選手が作業する様子が見られた。

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 もうひとつ、「電気回り」の調整をしている選手も複数見られた。昨日の前検日も見た光景で、今日は吉田拡郎、山田康二の勝ち上がり組が行なっている。また、本体整備をしていた菊地孝平も、本体を組み終えた後には電気回りを調整していた。
 今節は新モーターなので、部品交換に制限があるなど、整備できる範囲は限られている。それもあって、いわゆる外回りに含まれるキャブレターや電気回りの調整が多くみられるのだろうか。あるいは、新モーターならではの症状がある? 新モーター時の取材経験が乏しいので、今日の段階ではよくわかっていない。

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 10R発売中、今井美亜が試運転からあがってきて、大急ぎで電気回りの調整を始めた。試運転でも感じられる違和感があったということだろう。調整にそれほど時間はかからなかったが、これも新モーター節ならではの光景かとちょっと思った。

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 先述したとおり、菊地孝平が本体をバラした。ただ、部品交換があるかどうか。先ほど書いたように、モーターを下ろしてしばらくは部品交換には制限があるからだ。明日の直前情報はぜひ確認してほしいが、交換がなかったとするなら、それでも本体を割ってやってみたいことがあったということ。今日はまさかの6着だった菊地だが、明日以降もまったく諦めていないわけだ。

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 あともうひとり、堀之内紀代子も本体をバラしていた。今日は地元勢が苦戦を強いられる一日になり、吉田拡郎と渡邉和将以外は復活戦回りになっている。しかし、地元のお祭りレースを盛り上げるべく、明日も奮闘を見せてくれるだろう。そのために、今日のレース後はやれることはすべてやって、明日に備えているというわけなのである。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)