BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

穏やかに祝福漂う優勝戦ピット!

f:id:boatrace-g-report:20210228180417j:plain

 昨日、準優を勝ち上がった竹井奈美に、関係者の皆さんが嬉しそうに祝福の声をかけていたことを記したが、今日は役者を変えて同じことがまた起こっていた。主役はもちろん小野生奈。ウィニングランに向かう際、多くの関係者の方々が水面際に出てきて、小野に手を振り、拍手をする。「いちばん練習をした水面」であるという芦屋は、初出走の地であり、初勝利の地であり、GⅠ初出場の地。そのころから小野生奈を見続け、かわいがり、彼女に思い入れを深めた人たちが、このピットにはたくさんいる。わが娘のような存在が頂点に立ったことは、まさに身内の快挙なのである。

f:id:boatrace-g-report:20210228180442j:plain

 湿っぽい空気はなかった。2017年、さらにグレードが上のレディースチャンピオンを、小野はこの地で制しているのだ。当時もそうした雰囲気は希薄だったと記憶しているが、GⅠ覇者によるGⅡ制覇は、悲願と呼ぶべきようなものではないだろう。

f:id:boatrace-g-report:20210228180522j:plain

 ただ、ウィニングランや表彰式など、セレモニーが一通り終わったとき小野は、やや疲れたような、そしてホッとしたような表情を見せている。今節は選手班長を務め、出場選手をまとめる大役を果たした。水面では予選トップ通過を果たし、さまざまな重圧を背負って準優、優勝を戦い抜いた。また、レースでは遠藤エミに鋭く迫られた。それらを乗り越えての優勝だ。まさに肩の荷が下りたのだろうし、感慨深い思いがこみ上げて当然だろう。

f:id:boatrace-g-report:20210228180554j:plain

 それにしても、小野vs遠藤の激突には痺れさせられた。遠藤の差しはあまりに強烈で、一瞬は刺さったかと思われたが、小野がバックで振り切った格好。女子トップクラスの、渾身の真っ向勝負。この二人だからこそ立ち上った、名勝負である。
 遠藤は、JLCインタビューやボート上でのプレス撮影が終わるのを、係留所際で待ち構えていた。ウィニングランに向かう小野が、ここで遠藤と顔を合わせる。たぶん、小野は差されたと思い、遠藤は刺さったと思い、しかし競り勝ったのは小野。二人は充実し切った、しかし勝者は敗者を思いやり、敗者はちょっとばかりの悔しさを浮かべた、素敵な表情で笑いあった。そしてがっちり握手。歓喜と悔恨、抱えた本音の部分は違っても、いい勝負ができたという手応えはお互いにあったのだろう。健闘を称え合う握手は、実に美しく映った。

f:id:boatrace-g-report:20210228180632j:plain

 他の選手は総じてサバサバしていたと思う。あえて言うなら、竹井奈美は少しばかり無念があったか。小野と竹井は1期違いの先輩後輩ではあるが、盟友と呼ぶべき間柄。何年か前に一緒にトークショーをしたときには、その仲の良さを目の当たりにしたし、小野にインタビューした際には竹井の存在の大きさを語っていたものだ(竹井にはタメ口でいいと言っているのに、竹井は敬語で話すと言って笑っていた。ただし、ケンカになるとタメ口になるとも・笑)。その二人が、地元GⅡ優勝戦でワンツーフィニッシュとなれば、これはまた別の喜びになったはずだ。2着では満足できないにしても、ある種の達成感はあったのではないかと思う。いったんはその隊形ができつつあっただけに、複雑な心境はあるのではないか。

f:id:boatrace-g-report:20210228180701j:plain

f:id:boatrace-g-report:20210228180721j:plain

 関係者が小野の優勝を祝福していたと先述したが、もちろん他の選手からの祝福も数多かった。大山千広は先輩の優勝を喜び、深川麻奈美は後輩の優勝に笑顔を見せる。津田裕絵、鎌倉涼の100期勢も、プレス撮影に応える小野に両手を掲げて祝福を示した。表彰式が終わったときには、着替えを終えて帰郷準備が整った岩崎芳美が。前年度覇者は、それは思うところもあるとは思うが、穏やかに小野におめでとうと声をかけるのだった。

f:id:boatrace-g-report:20210228180756j:plain

 全体的に穏やかな幸せが漂う、優勝戦のピットだったと思う。小野生奈、おめでとう! 次に登場する芦屋の大舞台は7月のオーシャンカップだ。地元SGでおおいに跳ねてください!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)