BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

芦屋クイ~~~~ン!

12R優勝戦
①小野生奈(福岡) 07
②遠藤エミ(滋賀) 13
③竹井奈美(福岡) 11
④平高奈菜(香川) 08
⑤岩崎芳美(徳島) 11
⑥大瀧明日香(愛知)08

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 純地元のプリンセス小野生奈が、トップスタートから1マークの接戦を制して逃げきった。スリット隊形はほぼ横一線で、わずかにイン小野と4カド平高が覗く展開に。平高はカド受け竹井に受け止められる形で攻めが遅れ、代わって地元の大本命に肉薄したのは2コースの遠藤だった。

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 今日の風は、2コース差しにはかなり不利な強めのホーム向かい風。しかも遠藤はスリットで少し凹んでいたが、その凹みを逆利用する形で舳先を早めに左へと転回させてくるり俊敏な小回りターン一閃! 「緊張でうまくハンドルが入らなかった」生奈がターンマークを漏らしている間に、最短距離の放物線を描いて舳先をグイッと突き入れた。これぞ遠藤エミ。

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 生奈vsエミの一騎打ちは、4日目12Rに続く今節2度目のマッチアップ。「勝った方が予選トップ」のファーストレグは、強ツケマイを放った遠藤が抜けきったかに見えたが、そこから生奈が半端ない行き足~伸びで予選の頂点に立った。
 今日も行き足の違いで、生奈がすぐに舳先を振り払うか。
 と見ていたが、そうはならない。逆にスリット裏ではエミの舳先がさらに刺さっていくように見えた。今日のエミ12号機の出足~行き足は、生奈56号機以上の仕上がりだったか。この調整力にも拍手。

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 ただ、そこからだ。スリット裏から2マークまで、今度は生奈の仕上げきった56号機が吼える。1/3ほどめり込んだように見えたエミの舳先は1/4~1/5とずり下がり、2マークの20mほど手前で、ついにはらりと削げ落ちた。この瞬間が、まさに優勝と準Vの分水嶺だったと言いきっていいだろう。

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「エンジンが勝たせてくれました」
 勝利者インタビューで、生奈は素直にこう言った。実際に4日目12Rも優勝戦も、直線のパワー差がギリギリものを言っての勝利だった。この差がなければ、おそらくエミが予選トップで優勝しただろう。
 ただ、勝たせてくれるエンジンに仕上げたのは、小野生奈自身。選手代表の重責を担いながらも日々何度も舟を下ろして試運転を繰り返し、ピットでは実務雑務に奔走し、そんな中で2連率34%のモーターを優勝するに足るパワーまで引き上げたのだから、思いきり胸を張っていい優勝だ。

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 芦屋のプリンセスからクイーンへ。
 この水面でプロ選手としての産声をあげ、179走目に初勝利を飾り、GI初出走も初勝利も初優勝もこの水面で遂げ、さらに今日は「GⅡ初優勝」のタイトルをも戴いた。ちょっとした「ご当地グランドスラム」状態なわけだが、もちろん現在のプリンセスにはまだ足りない大きなものがある。

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 今後の生奈は、若松オールスター出場はほぼ当確(中間発表で13位)として、完全に権利が確定しているSGは7月20日からの芦屋SGオーシャンカップ!! この5カ月後に起こり得るストーリーは、読者それぞれの想像に委ねるとしよう。女子レーサーにとってSGという舞台がどれほどの高峰であるか、百も承知でありつつも、なかなかに夢多き物語になりそうだ。

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 何度も書いてきたが、やまとでの生奈のリーグ成績は3・41。103期の24人の卒業生の中で、下から2番目のいわゆる劣等生だった。初勝利の179走目も下から4番目。同期の首席、深谷知博の「リーグ成績8・23&デビュー戦で初勝利」というエリート人生とは比べるべくもない選手生活を歩んできたが、今は同じ最高峰のステージで戦うレーサーとなった。そんなこんなの下積み時代も含めて、5カ月後の芦屋SGでの活躍を見守るとしよう。ちなみに今日現在、深谷はまだオーシャンカップの権利を持っていないけれど。(photos/チャーリー池上、text/畠山)