BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準決勝ダイジェスト

進撃の織姫

第一試合・9R
①太田和美(奈良)08
②平高奈菜(愛媛)09
③篠崎仁志(福岡)11
④片岡雅裕(高知)05
⑤新田雄史(三重)08
⑥平本真之(愛知)11

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 太田がインからキッチリ逃げきった。あえて高校野球風に言いなら、奈良の古豪・智辯学園が、完封シャットアウトで決勝戦の最初のチケットを入手した。スリットは↑御覧のとおりゼロ台鈴なりの電撃戦。特に4カドから高知代表にして選手代表の片岡が、質のいい全速スピードで飛び出した。さすが、ボートレース界のマー君!

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 勢い的にはまんま太田までまくりきっても不思議じゃない超絶スタートではあったが、残念ながら今節の片岡にはここから絞めきるだけの伸びがない。篠崎に抵抗されつつ、握って握ってまくって、ついぞ太田には届かず1マークの大外へと流れ去った。不発とはいえ、地元の意地を余すところなく魅せつけたスタート攻勢、もちろん「大天晴れ!」だ。

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 そして、このマー君の果敢な直球攻撃は、同県の才女にきっちりリリーフとして引き継がれた。イン太田が片岡のまくりを警戒してやや握ったところ、平高が広く空いたフトコロにズバッと高速スライダーを投入。わずかに太田を捕えきれなかったものの、決勝進出に必要十分な得点を勝ち取っていた。

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 その後の平高の航跡も「天晴れ」の一語。特に2周1マーク、後続の新田がSGで鍛えの入った変化球を繰り出したが、まったく動じることなく完璧な初動&スピードでこの勝負球を無きものにした。男女混合戦に強い平高の面目躍如。才と美を兼ね備えた織姫は、決勝戦でも侮れない存在と言えるだろう。そう、春夏通じて初出場であれよあれよと頂点まで昇りつめた、2014年の済美高校のように。

祭り男と頭脳派軍師

第二試合・10R 並び順
①峰 竜太(佐賀)   09
⑥西島義則(島根)    03
②白井英治(山口)    08
④桐生順平(福島)    11
③須藤博倫(埼玉)    12
⑤今垣光太郎(石川)15

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 お祭り男の峰が1マークまでの大混戦をものともせずに逃げきった。高校野球風では、ガバイ旋風を巻き起こした強打の佐賀商業が、乱打戦を制して決勝戦に駒を進めた。
 ピットアウトから待機行動は波乱含みの展開となったが、内の16・2の並びは大方の予想どおりか。ちょっとしたサプライズは、スタート展示(1625/34)で6コースダッシュに引いた桐生が、いざ本番では同支部・須藤のマークから外れてスローの4コースに構えたあたりか。最終隊形は16・24/35。あるいは、スタ展であまり須藤が伸びないと感じ、心を鬼にしてコースの利を優先した? だとするなら、埼玉代表vs福島代表という甲子園ならではの特色が反映されたのかも知れない(笑)。

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 結果として、この桐生の選択は正解だった。スリットからまずは2コース西島が勢いよく飛び出し、そこからインの峰がゴキゲンな行き足で伸び返し、3コース白井が例によって豪快に握るというオーソドックスな内寄りの展開に。白井に連動した桐生は、早くて速い初動からすかさず最内を差して2着争いに持ち込んでいた。

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 とにもかくにも、そんな乱戦からあっさり抜け出したのは峰竜太。もはやその確かな航跡に、ドリーム戦で「ワースト、苦しすぎる」と泣いた面影は1ミリたりともない。3日目には気づいていたが、初日から多くの部品を取り換えたサイボーグ22号機はまったく別のモーターと考えていいだろう。この圧勝で、明日も1号艇なら連続の逃げ=甲子園連覇も現実味を帯びるのだが……(11Rにつづく)

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 焦点の2着争いは、常勝という言葉がぴったりの強豪・白井vs頭脳的な戦術で上位着を拾いまくる桐生の一騎打ち。一時は白井に分があるように見えたものだが、2周1マークで桐生が「これぞ天才!」と唸らせるような超鋭角ターンで逆転。随所に好走塁を繰り出してコツコツ得点を稼ぐ「機動力の順平」が、今日も最大の山場で強みを発揮した。明日は外枠を強いられる桐生だが、頭脳と総力をフル稼働する彼のスタイルは、もちろんピットアウトから軽視することはできない。

肩が仕上がった!

第三試合・11R
①毒島 誠(群馬)   19
②益田啓司(大分)      25
③馬場貴也(和歌山)  22
④池永 太(宮崎)      27
⑤市橋卓士(徳島)       21
⑥藤崎小百合(鹿児島)23

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 桐生がライバルの必殺技を瞬殺してひとり旅に持ち込んだ。高校野球風なら、桐生第一高校が……って、もうええかっ!(笑)
 進入は10Rとは打って変わって穏やかな枠なり3対3。でもって、毒島のスタートはかなり慎重だったが、「みんなで遅れりゃ怖くない」のトップタイミング。もちろん、ひとりでもコンマ05とか突出したら絶体絶命も、この手の大一番は呼吸が合うというか、遅ければ遅いなりに揃うケースも多い。

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 で、こうなれば6秒62という病的な展示タイムを叩き出した毒島64号機の独壇場かと思いきや、馬場25号機の伝家の宝刀・3コースまくり差しのなんと速いこと!! 私も含めて多くのファンが「突き刺さった?」と思っただろう。本当に馬場貴也という男のセンター筋からのターンは、峰や桐生とも一線を画すナイフのような切れ味を秘めている。

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 だがしかし! 誰もが「刺さった?」と思ったであろう3秒後には、毒島64はその馬場を軽く2艇身ほど突き放していた。毒島vs馬場はこれが3戦目なのだが、いわゆるレース足の部分でもっとも圧倒的な差を感じたのは、今日のまさにこの瞬間だった。昨日、「明日は1号艇なので手前もしっかり」と吐露したとおり、相棒の64号機は出足~行き足を何倍にもパワーアップしてしまった。それでいて、ストレート足も反映する展示タイムも抜けた節イチってあなた……!?

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「節イチです」
 レース後、毒島はやっとはっきりとこの言葉を口にした。昨日まで、私が毒島64にわずかな不安があるとすれは、それは「毒島の64号機に対する不信感」だった。不信は言い過ぎとしても、「ちょっとまだ」「他と比べると」など絶対的な信頼を置いてはいなかった。毒島はモーターと対話しながら仕上げるタイプ、と私は勝手に思っているので、「まだ両者の会話が噛み合っていないのではないか。そのちょっとした不協和音が、ナーバスなイン戦で反映されるのではないか」などと勘ぐっていたのである。

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 だが、その一言を聞いて、もう『ブス64』には死角も不安材料もなにひとつ存在しない、と確信した次第だ。もちろんボートレースは水物だから、峰のとんでも2コース差しが突き刺さるかもしれないし、馬場の4度目のリベンジターンが毒島の足元をすくう可能性もゼロではない。だから「絶対に優勝する!」と宣言はしないけれど、毒島自身の内面が強固に64号機とシンクロ・同化してしまった以上、逆転ホームランを浴びる可能性はかなり低いと言いきることはできる。うん、明日は舟券を買わずに、強い選手×強いモーター『バツ&テリー』の繰り出す剛球をただただ見守るとしようかな。(photos/チャーリー池上、text/畠山)