BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――超順当

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 羽野直也が逃げ切った。まさに順当。優勝戦メンバーに限らず、今節のなかでも最格上と言える存在である。数少ないGⅠ覇者、それも周年記念の覇者。SG優出経験者。そんな羽野が優勝戦1号艇に乗ったことがまず順当だし、逃げ切りはさらに順当である。
『週刊BOATBoy』4日目夜に配信した番組では羽野に突撃インタビューを敢行している。そこで羽野は、「準優が目標ではなく、優出が(最低限の)目標」と言っている。羽野自身、ここでは格上であることは自覚して参戦していたわけだ。そして優勝。どう考えたって順当である。

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 だからというわけではないのだが、羽野は歓喜を大きくあらわすことは特になかった。ようするにそういうタイプだ。同期の百武翔がウイニングランを眺めながら「もっと騒いでもいいんですけどねえ」と笑っていた。仲間からしても、羽野が淡々としているのは織り込み済みなのだろう。とは言いつつ、やはりレース後の羽野の振る舞いを見ていると、若手限定のレースで優勝したくらいではしゃいではいられない、なんて様子に見えてしまう。あまりに順当な結果がそう錯覚させているのは間違いないのだが、やはり羽野の貫禄はここでは一枚も二枚も上手だった。

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 その分も、ということにしてしまおう。仲間たちのはしゃぎっぷりが凄かった(笑)。いちばん喜んでいたのが百武で、ボートリフトで出迎えた際にはどれだけ手を振っていたことか。同期勢は、妻鳥晋也も出場していたとはいえ、やはり羽野の優勝を喜んでおり、中村桃佳も妻鳥のエンジン返納を終えた後には、羽野に駆け寄っている。

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 同支部である福岡勢もおおいに沸いていた。こちらも中田達也の存在はあるものの、やはり総出で羽野に拍手、歓声。大山千広がグータッチしていたり、いちばん先輩である渡邉優美が跳ねていたり。1期違いで盟友的な存在である仲谷颯仁も嬉しそうだった。プレス撮影で羽野は、10人ほどもいるカメラマンのリクエストにいちいち応えていたのだが、その輪の後ろから羽野の向かって「笑え」「ガッツポーズ」とか要求を出していた。それに気づいた羽野がおかしそうに笑っていて、明日のスポーツ紙に羽野のとびきりの笑顔が載っていたら、それは仲谷のおかげです(笑)。

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 で、プレス撮影が終わって改めて祝福する仲谷に、羽野はやっぱり穏やかに微笑むのみ。さあ、こうなるともういっちょ上の舞台で頂点に立った時の羽野がどうなるのかが、実に楽しみになってくるわけである。やっぱり穏やかに笑っているだけなのか、それとも感情がどうしようもなく溢れてくるのか。いうまでもなく、羽野の目標はあくまでそちら。SGである。タイトルを手にした時、どんな羽野直也が見られるのか、その日が来るのを心待ちにしたい。

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 敗者についてはざっと。いちばん悔しそうに見えたのは関浩哉。あれだけのパワーだったから、道中は優勝を意識したはずだ。しかし及ばず。群馬への帰途では、さまざまな考察が関の頭に渦巻くのではないか。

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 妻鳥晋也は3番手を走ったが、2周2マークで入海馨のツッコミを受けて後退(入海は不良航法)。しかし妻鳥はむしろ入海を気遣うような素振りを見せており、むしろ自分に原因があるかのような振る舞いと見えた。潔い。逆に入海は申し訳なさそうに顔をしかめており、反省の多いGⅠ初優出となっただろうか。

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 そこで3番手に浮上した中田達也は、ある意味ラッキーな3着となったわけだが、笑顔がありつつ、仲谷と話しているときには悔しそうに顔を歪めたりしていた。下寺秀和が4カドから攻めていって、自分に展開が来たと認識したはず。しかし、狙った展開にはなり切らずに敗退したことは、やはり少々の悔いになっているはずだ。

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 攻めた下寺は淡々としたレース後。悔しさと充実感がないまぜになったかのような、真摯な表情でモーター返納などに臨んだ。今節はおおいにアピールできたシリーズだった。この勢いをまた上のステージで発揮してもらいたい。今のところ、来期はA1確実!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)