BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 2日目

福岡トリオの明暗

11R
①篠崎仁志(福岡)14
②瓜生正義(福岡)17
③丸野一樹(滋賀)20
④池田浩二(愛知)20
⑤西山貴浩(福岡)27
⑥馬場貴也(滋賀)22

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 昨夜の抽選で好枠を引き当てた仁志&瓜生の福岡コンビが、外艇の攻撃を完封してワンツー態勢に持ち込んだ。で、もうひとりの福岡レーサーは……??

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 最低でも2着が欲しい馬場がゴリゴリ前付けに動いたが、池田・西山らが徹底ブロックして最終隊形は横並びの枠なりオールスロー。昨日の11R同様、100mを切る起こしからのヨーイドンとなり、真っ先にスリットラインを通過したのは是が非でも1着が欲しい仁志だった。直後に瓜生が続いて、福岡の好枠コンビが盤石の布陣。そのまますんなり逃げて差して、丸野の握りマイをまったく寄せつけなかった。

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 ただ、バックで後手を踏んだ丸野(3着条件)も、道中でファインプレイを見せる。先攻を許した池田にしぶとく食らいつき、2周1マークの全速差しで逆転。最低ノルマとはいえ、喉から手が出るほど欲しい3着をもぎ取った。今節のトライアル最年少にして初出場。3・3の中間着2本ながら、トライアル2nd進出は“快挙”と呼んでいいだろう。

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 そしてそして、もうひとりの福岡支部・西山は、丸野とは逆に馬場との5着争いで痛恨の逆転負け。1着・6着=21点は我々の推定ボーダーと合致するのだが、選考ランク18位での21点は大ピンチ。同じく6着・1着の仁志より下回り、さらに12Rの辻が6着(計21点)でも追い抜かれてしまう。大雑把に言うと、たとえば12Rで【①菊地-⑤毒島-全、①菊地-全-⑤毒島】などというフォーカスが完成すれば、その時点で西山のGP終戦が確定することになったわけだ。果たして、その結果は……?

敗者の黙示録

12R
①菊地孝平(静岡)04
②新田雄史(三重)06
③石野貴之(大阪)16
④辻 栄蔵(広島)14
⑤毒島 誠(群馬)10
⑥中島孝平(福井)10

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 3着勝負駆けの菊地、1着勝負の新田がバチコ~ン張り込んだ。さすがのデジタル、さすがの勝負師。アタマしか明日の目がない新田は渾身の差しを突き入れたが、惜しくもトップスタートの菊地を捕えきれず、この瞬間に菊地の当確と新田の落選がほぼほぼ決まった。

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 で、この1マークで注目すべきは、やはり毒島の恐るべき旋回だろう。ほぼ横並びの5コースから、4カドの辻が二番差しの初動を入れるのと同時に進撃開始! 艇を擦り付けるようなツケマイで引き波にハメつつ、その先に生じた狭い狭い間隙に迷うことなく舳先を突っ込んだ。まかり間違えば、前が詰まって大敗もありえる強襲だ。

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 3着条件で、そこまで強気かつリスキーに攻める必要があるのか。
 そう思われた読者もいるかも知れないが、毒島は頭脳だけでなく身体で熟知しているだ。本気で勝ちに行かない限り、3着には届かないことを。たとえ届いたとしても、4日後に頂点には立てないことを。全速で針の穴を通すような超絶ターンは惜しくも菊地の艇尾を掠めたが、最低ノルマを超える2着で明日の5号艇GET。人機ともに完全にGPモードへと覚醒した毒島が、明日は同じ枠からどんな猛攻を仕掛けるのか。ウルトラ怪獣・峰竜太を相手にどこまで通用するのか。本気の本気でワクワクさせる、今日の1マークの強攻だった。

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 そして、この毒島への賛美は、そのまま西山貴浩へのレクイエムに直結する。先に書いたように①-⑤決着、イコールGP終戦。西山の表情、言動は黒須田のピット情報に委ねるが、昨日のとんでも1着で天にも昇り詰めるような境地からよもやの転落は、想像を絶するほどのショックだったに違いない。付随して、西山の熱狂的なファンも然り。昨日の当欄で次のステージを前提に書き散らかしたことを詫びつつ、哀惜の意をお伝えしておきたい。って、かけるべき言葉も見つからないのだけれど。

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 大波乱あり本命決着ありの4つのバトルが終わり、選考ランク7位~18位の戦士は天国と地獄に振り分けられた。勝者は【菊地・瓜生・毒島・丸野・辻・仁志】。敗者は【西山・新田・馬場・池田・石野・前本】。この敗者の中には、石野や池田のような責任外の転覆(避けようのないもらい事故)で一瞬に夢が絶たれた者もいた。
 これは何年も前から『BOATBoy』などで言及してきたのだが、トライアル1stの6着が7点⇔もらい事故で失格が0点(即刻アウト)という格差はあまりにも理不尽すぎる。無実の罪で島流し、とも呼ぶべき悪しきルール。せめて6点でも授ければ、今日の石野らにも一縷の希望が生まれたし、舟券を買う側も今日とは違う目線で石野らを見つめながら舟券作戦を立てたはずだ。どちらの舟券が楽しく、スリリングか。そして、どちらのレースの方がより熱い“トライアル”になるか。あえて答えを書く必要もないだろう。

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 18人のトップレーサーが1年の集大成として一堂に会し、死に物狂いでプライドと1億円を競い合う。そんな崇高な戦地に、選手とファンの精気を削ぐような悪しきルールがあってはならない。

ナカジマジック!?

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 さてさて、GPシリーズ組のV戦線に視線を向けると、今日に限ってちょいと不思議な現象が起こっている。昨日の10Rシリーズ特別戦(ドリーム)を逃げきって暫定トップに立った中島孝平が、今日は一時的にシリーズ組の得点ランキングから消滅。前本泰和の帰郷でトライアル組に追加配分されたためだが、とりあえずオフィシャルの得点ランキングから中島孝平の名前と昨日の12点は跡形もなく消え去った。
 で、今日のトライアルを走り終えた瞬間に「シリーズ出戻り」として、初日の12点が何事もなかったかのように再出現、中島に加算されたのである。「宝物を土中に埋めて出張し、帰宅してから掘り起こした」ってな感じか(笑)。

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 とにかく、シリーズ~トライアル~シリーズを渡り歩く中島にとってはシリーズ優勝に大きく前進する3日間ではあるな。【特別戦→トライアル→復活戦】と3連続で点増しレースに参戦できるのだから。ぶっちゃけ「ドリーム3連発」! しかも、いちばん点増しのでかいトライアルで、鬼門の6号艇を4着(9点!)で消化できたし。

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 もちろん、現時点でトップ確定とは断言できないけれど、責任外転覆で0点を喰らった石野貴之、池田浩二よりはるかに有利な立場でシリーズに“復活”することができる。選手の力量と3度の点増しを踏まえれば、「2日目にしてシリーズ優勝の有力候補」とお伝えして間違いないだろう。トライアルを次点で脱落した西山貴浩とともに……。(photos/シギー中尾、text/畠山)