BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――コントラスト

●トライアル1st第2戦

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 2nd進出を決めた選手にまず浮かぶ感情は、歓喜ではないようだ。
 安堵。
 次に進める。1億円と黄金のヘルメットの可能性が残った。シリーズに回らずに済む。いろいろあるだろうが、とにもかくにも「ホッとした」という思いが強く胸を占める。
 12Rを終えた毒島誠はまさにそのまま「ホッとした~」という言葉が口をついた。毒島ほどの選手なら、2nd進出は最低ノルマでもあろうから、その思いが強くなるということもあるだろう。

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 11R2着の瓜生正義も、何はともあれ一仕事終えたのだというような、サッパリした表情を見せている。2着だったということもあるのかもしれないが、そこに会心の類いの感情はうかがえなかった。

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 同時に、2ndに向けての決意や意気込みが強くなる、というかたちでテンションが上がるところもありそうだ。
 12R1着の菊地孝平がまさにそうで、力強い足取りや強烈な目力は明らかに明日に向いているものだったと言える。場数を多く踏んでいる菊地にとって、明日からが本番、という思いもあるのだろう。スイッチがもう一丁入った、そんな雰囲気を発している。

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 丸野一樹の場合、初出場で1stをクリアしたことに対しては、素直に喜ぶ様子も見せている。ただし、それはやはりギアを一段階上げるものになっていて、すでに2ndでの戦いを見据えて、テンションを高めているようであった。少し話すこともできたのだが、なにより口調が普段よりも強い。また「今年は経験するだけでいいなんて思ってたら、いつまでたっても獲れない」など、単にグランプリの雰囲気を味わえるだけで良しなんて少しも考えていないようでもあって、その決意がなんとも強い。

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 もちろん、2ndからはいよいよ真打とも言えるベスト6勢が合流する。テンションが上がったからといって、それが好結果を導くとは限らない。それでも、1stを乗り越えるというのは、選手たちにどこか敬虔さすら漂わせる、力強いレーサー魂を呼び起こさせるようだ。それでもやっぱり淡々として見えた辻栄蔵や、11Rを勝って12Rの結果を待つかたちとなった篠崎仁志にしても、胸の奥では安堵や強い決意が生じているに違いない。

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 一方、ここで敗退することになってしまった選手たちの姿には、哀愁がつきまとってしまう。今回はすでに勝ち上がりの可能性が相当に薄い(または可能性がない)選手も初戦の結果で出てしまったわけだが、それ以外の、勝負駆けに臨んだ面々のレース後の姿はなんとも哀しく感じられた。
 まるで他人を避けるかのように、両手をポケットに突っ込み、うつむき加減でオーラを消して歩く馬場貴也。整備室にモーター格納に向かう、その背中はひたすら切なく見えていた。

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 11Rシンガリ負けで、12Rの結果待ち。そして、辻と篠崎と同率ながら選考順位の差で次点に泣いた西山貴浩も、12R後に姿をあらわしたときには、明らかにいつもの明るさが薄れていた。それでも池田浩二らにおどけてみせるあたりが西山らしかったが、その様子にもキレがないように見えていた。昨日の激勝と今日の痛恨。そのギャップの激しさがまた、西山の心を千々に乱していただろう。
 このコントラストの大きさを見るにつけ、トライアル1stの過酷さを改めて痛感する。だが、観戦者にとって、この激しさがまた、トライアルにコクを与えるのだ。トライアル2ndは、1stをパスして2ndから登場する者も含め、それを乗り越えた者たちがさらなる激しさで戦う舞台だ。ピットは明日さらに、ピリピリとした空気が充満するに違いない。

●2nd組

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 いよいよ明日からレースに登場する賞金ランク1~6位。11R発売中、12R発売中に最後のスタート練習&タイム測定を終えて、出陣の準備を整えた。通常開催ならいわば前検日のような位置づけなので、今日のところはまだリラックスしている様子がうかがえる。闘志は日増しに高まっているようにも見えはするが、それぞれに笑顔も多い。

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 そんななかで、間違いなくゾーンに入っていると見えるのは、峰竜太である。今日の終盤の時間帯は、まるで12Rにレースを控えているかのような、緊張感ある表情を見せていた。ピットで見る限り、笑顔もほとんど見られていない。選手たちと絡んでいるときでも、どこか深刻にも見える雰囲気がうかがえる。史上最強のレーサーになるために来た、と開会式で言った。それはきっとド真剣に口にした言葉なのだろう。その決意が、明らかに行動や表情にあらわれていたと思う。この男、本気だ。

●シリーズ組

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 やっぱり丸ちゃんが笑っているシーンは素敵である。あ、丸野じゃなくて、丸岡正典ですね。9Rを差し切り快勝。エンジン吊りを終えて、石野貴之らと控室に戻る道すがら、特有の柔らかく穏やかでレースごとは思えないほど平和な笑みを何度も浮かべていた。きっとニャハハ~って笑ってるんだろうなあ。グランプリのピットには特に、丸ちゃんスマイルが必要な気がする。

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 今日は7~10Rまで大阪勢が連勝! 山崎郡の水神祭に始まり、上條暢嵩が恵まれながら5号艇で1着、9Rが丸ちゃんで、10Rは太田和美の逃げ切りだ。地元勢の活躍に沸き上がってもおかしくないのだが、太田の表情は複雑そうに見えた。昨日の妨害失格で賞典除外、今日の前半も旋回の際にキャビって逆転されている。選手班長の仕事も忙しく、レースでは心浮かず、陸では気が休まるヒマがない。同情したって仕方ないかもしれないけど、太田の奮闘ぶりにエールを送りたい。いろいろな思いがあるなかで、しっかり1号艇の仕事をしてみせたことは、さすがの怪物くんなのである!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)