BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――テンション爆上がり

 今日のピットのハイライトは、なんといっても11Rだ。
 實森美祐、本日連勝!
 前半を逃げ切ってSG初勝利をあげていた實森は、11Rは4カドからパワーまかせの強まくり! すぐ左横の毒島誠、インの平本真之をあっと言う間に粉砕してしまった。毒島と平本を! もちろんエース機の後押しは相当に大きいわけだが、しかしながらエース機を引けば誰でも勝てるというわけではないし、その重圧に押しつぶされてきた選手は枚挙に暇がない。そのパワーを損なうことなく、しかも勝負駆けを連勝で突破してのSG準優行きというおまけつき、これはもう脱帽と言うしかない!

 何がすごいって、エンジン吊りのさなかに、平本と毒島が相次いで實森に声をかけにきているのだ。当然、悔しいという思いも抱えながら、SGデビューの若手女子レーサーが素晴らしいレースで自分たちを打ち負かしたことを、彼らは素直に称えていた。これがカポック脱ぎ場ならよくあることだが、エンジン吊りの真っ只中、つまりレースを終えた直後に超一流レーサーが声をかけてきたのだ。負けた相手でさえテンションが上がってしまう、そんな勝利。

 勝利者インタビューを待つ實森には、白井英治も声を掛けている。「SGレーサーになったな!」。あの白井英治のお墨付きだ! このレースを見た誰もが驚き、感心し、認めた勝利。もちろん、格下と見られていたからこその反応ということも言えるのだが、119期のルーキーだ、格下で当然。それでも怯まず、思い切り強すぎる先輩たちにぶつかっていったから、この興奮は生まれた。もう、素晴らしかったとしか言いようがない。準優も頑張れ!

 敬礼!
 10Rを逃げ切った濱野谷憲吾は、モーター架台を持って出迎えた池田浩二に右手を掲げた。東海地区の出走がなかったが、池田はわざわざ濱野谷のエンジン吊りに駆け付けたのだ。敬礼を返した池田と、濱野谷がしばし見つめ合う。そして爆笑! 仲良しかーい! 濱野谷はこれで得点率6.33と、この時点での18位に浮上している。ボーダー高騰気味の流れのなか、まったく予断を許さない状況ではあったものの、ひとまず最低限のノルマをクリアしたことで、超ゴキゲンだったというわけである。

 しかし……。12Rで瓜生正義が逃げ切り快勝。篠崎仁志が3着に踏ん張ったことで、ボーダーラインは6.40に落ち着いた。つまり、6.33では届かなかった……。濱野谷は2便で帰宿していたので、そのことを知ったときの様子はわからないが、無念の次点に終わってしまったのだった。

 そして、池田浩二も! ラスト1走残して7.40は本来なら安全圏。池田は2マークでターンマークに衝突して大失速、6着で終わったのだが、これでも6.33。ボーダーが6点付近で収まっていたら、充分に当確だったのである。しかし、まさかの準優圏内からの陥落……。対岸のビジョンでリプレイに見入る池田の眉間には深いシワが寄っていた。18位が高いボーダーであろうことを見越しての2マーク勝負だったはずだが、だからこそ悔やまれる大敗だっただろう。宿舎では濱野谷と慰め合って、残り2日、らしい走りをみせてもらいたい。

 さて、予選トップ争いはわりとあっさりケリがついた格好。12Rを迎える時点で、菊地孝平が1着でトップ、2着以下なら暫定1位で待機していた磯部誠が逃げ切ることになる。菊地も十分に状況を把握していたものと思われるが、4カドから攻め切れず、5着に終わった。さすがにレース後の菊地は表情が硬く、憤りすら感じさせるような迫力ある顔つきだった。大敗で一気に順位を後退させてしまったことの悔恨もあったか(11位)。

 そして、磯部誠が予選トップ! 池田先輩のまさかの予選落ちもあってか、12R後は淡々としており、作業を終えたあとも特に様子は変わっていなかった。控室へと走る磯部に「来たね!」と声を掛けると、「流れとツキだけ!」と言って階段を駆け上がっていった。がんばってよ、には、はいよっ! 流れとツキを活かして、新たなSGウィナーとなれるか。まずは師匠・平本真之と直接対決となる準優が勝負だ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)