BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準決勝ダイジェスト

策士の好プレイ

9R  並び順
①馬場貴也(京都) 12
②前本泰和(広島)  13
④菊地孝平(岩手)  11
⑥白井英治(山口)  15
③上野真之介(佐賀)14
⑤遠藤エミ(滋賀)  12

 地元のエース白井の心理戦と防御テクニックがきらり光る一戦だった。最終隊形は↑御覧のとおり1246/35。これは6R後の特訓でもスタート展示でも見られた並びだったが、ちょいと違ったのは4コース白井の起こし位置だ。それまで何度も「ゴリゴリ行くぞ!」と強烈なイメージを植え付けていたから、前本と菊地は早々にエンジンを噴かせてブロック態勢を築く。

 だがしかし、いざ本番の白井は2マーク近辺まで「行くぞ!」のムードを漂わせつつ、そこからゆっくりとエンジンを休ませた。来るぞ来るぞと構えていた内3艇は、肩透かしを喰らったイメージか(菊地は菊地でブロックに見せかけてガチでイン強奪を狙っていた)。3艇が横並びで前に進む中、白井だけは20mほどの余裕をもって悠々スタート方向に舳先を向けた。この助走のアドバンテージは、ややパワー非力な白井にとって嬉しい恩恵だったはずだ。ダッシュ勢を止める意味でも。

 12秒針が回って、内3艇の100m起こしに対して白井は120m起こし。スリットラインは美しいまでの横一線で、そこからわずかに菊地が覗いて行ったが出切るだけの勢いはない。あっという間に馬場がウイリーモンキーで抜け出す。これはスリット隊形から当然として、この1マークでもイブシ銀の暗躍を魅せたのが白井だった。

 菊地を行かせてセオリー通りの二番差しから、外の真之介が十八番のまくり差しで襲い掛かるとやんわり艇を外に流して激辛ブロック。その反動でやや外水域がもつれる間、最内の白井がコースの利を120%活かしきってしっかり2番手を取りきった。老獪にして巧妙、野球でいうなら3塁で大きなリードを取り、牽制球を誘導している間にホームを陥れるみたいな(笑)。
 とにかく、この長州の策士が2着に粘り込んだのは、穴党にとって吉報かも。明日も6号艇からどこまでゴリゴリ動くか(動くふりをして動かないかw)、内の若い衆を翻弄する奇襲戦法で決勝戦を乱打戦にしてもらいたい。

高速ストレートの攻防

10R
①茅原悠紀(岡山)14
②辻 栄蔵(広島)12
③佐藤 翼(埼玉)09
④瓜生正義(福岡)12
⑤田村隆信(徳島)23
⑥秋山直之(群馬)24

 大本命の茅原が負けた。斬りつけたのは3コースの翼。早い初動から2コース辻を叩き、そのままエイヤの気合でツケマイを浴びせた。一見、茅原がギリギリ耐えきったようにも見えたが、出口から一気に突き抜けられたのは、やはり出足~行き足の差だったか。

 これで3-1で決まれば今節の私も大逆転ホームランとなったのだが、ボートレースは難しい。一騎討ちとみていた最内から、百戦錬磨の瓜生がひたひたと茅原に迫る。ジリジリ舳先をこじ入れて半艇身差。たとえば初日の茅原の伸び足なら、おそらくこの難敵の舳先をも振りほどいたはず。だが、インコース仕様にしたであろう今日の茅原にはそのパンチ力はなく、まったく同じ伸び足で瓜生に2マークの先手番を譲った。9Rの白井に続き、このレースも「4コース(セカンド)の名手」が経験とテクニックで若手を翻弄した、というところか。

 気風のいい全速マイで決勝のチケットを手に入れた翼68号機は、さすが三島十傑の第一席。シリーズ前半は出足一辺倒でストレートが一息だったものの、後半からはしっかり上積み(伸びというより行き足、それが準決で存分に生きた)。たとえば明日は「白井を入れて4カド」なんてことになったら、かなり不気味な長距離ヒッターと言えるだろう。もちろん、スローからでも自力で攻めきれる足でもあるのだが……。そのあたりの調整は、明日の試運転や特訓でチェックしつつ、可能な限り読者にもお伝えするとしよう。おそらく、試合の鍵を握る3号艇になりそうだから。

走攻守、揃い踏み!

11R
①深谷知博(静岡)06
②中田竜太(福島)11
③新田雄史(三重)09
④桑原 悠(長崎)09
⑤毒島 誠(群馬)11
⑥丸野一樹(京都)15

 深谷53号機がまったく危なげなく逃げきった。上り時計も9Rの馬場(1分48秒6)、10Rの翼(1分49秒2)を圧倒する1分47秒9!

 本当に、機力については何度も書いてきたつもりなので、もう書くべきことがない。出足と行き足は初日からほとんどブレることなく節イチ級を誇り、4日目にはその部分の足さえあれば深紅の優勝旗に手が届くポジションを勝ち取った。ピッチャーで言うなら、直球は150kmくらいだが“お化けフォーク”と“大谷スライダー”を身に付けている感じか(笑)。とにかく、165km級のポテンシャルがあった茅原が脱落した今、決勝では文句なしのトップ足とお伝えしておく。

 2着は混戦の道中を冷静的確に捌いた新田。1周2マーク前後の位置取り~初動~スピード差しは実にらしい立ち回りで、パワー面でも別格の深谷以外では一日の長があったかも知れない。ただ、決勝に入ってしまえば平凡な機力とお伝えしなければならないが。

 さてさて、明日も1号艇の深谷53号にもはや死角なしか。いや、私はそうは思わない。9Rで白井が生き残り、10Rで瓜生が生き残り、このふたりが5・6号艇に入るだけで、決勝戦には波乱の種が埋められた気がしてならない。このふたり(たとえ白井だけでも)がシンカーやナックルボールなどでのらりくらりと襲い掛かれば、常勝・深谷もうっかりボールを手を出して空振りするかも??(笑)
(photos/チャーリー池上、text/畠山)