BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負の場

 オープニングを飾ったのは實森美祐だ。レディースチャンピオン初出場、といっても、2月には芦屋周年に出場しているし(ここでGⅠ水神祭)、なにしろSGオールスターでの活躍はまだ記憶に鮮明なところ。まさに順当な逃げ切りである。ということもあってか、實森自身も、周辺も、浮かれた様子のない開幕ウィンなのであった。そこにはしっかりと、ビッグレースらしい重厚なレース後の様子があった。

 2着はこれもレディースチャンピオン初出場の中村かなえ。たしかな足取りで2番手争いを制して、ビッグ初出走を連対でまとめた。この中村もまた、上位着順でまとめられた安堵とか、笑顔とか、そういったものとは無縁なレース後だった。それよりも、今日は6Rに2走目を控えており、その準備に忙しそう。あっと言う間に着替えを済ませると、すぐさまピットにあらわれてペラを外すなどし始めていた。初のGⅠの余韻に浸っているヒマなどない、という雰囲気で、真剣な表情で作業を進めた。

 中村よりもさらに動きが素早かったのは西村美智子。こちらも7Rに出走で、5着に敗れた悔しさにまみれているヒマなどないとばかりに、2R発売中にはふたたび水面に降りていった。1Rを走り、2R発売中に試運転とは、なんたる早業。7Rは1号艇だから、絶対取りこぼせないという意気込みが伝わってくる。

 1R組ではっきりと悔恨が見えたのは細川裕子だ。1マークをうまく立ち回ってバック2番手だったものが、中村に競り負け、さらには三浦永理に逆転を許して4着。顔がひきつっており、明らかに納得していない様子で、それも当然というレース内容ではあった。細川も今日は2回乗りで、中村や西村ほどではないが、早々にその準備に取り掛かっている。

 というレディースチャンピオンの幕開けだったわけだが、華やかな一戦というイメージとは裏腹に、むしろ勝負師たちが戦う修羅場という印象が強いピットなのであった。初日ということもあって、実に慌ただしい空気が流れているなか、それぞれの選手の表情はそれなりに厳しく真摯で、時に顔をしかめているように見えたりするのは、なにもこの猛暑のせいばかりではあるまい。いつも陽気な岩崎芳美と1R前にすれ違ったとき、軽く微笑んではくれたものの、目が笑っていないその顔つきはやはり戦いを控えた戦士のそれであった(2Rに出走を控えていたということもあるだろう)。そうした雰囲気に触れると、気温は30℃をゆうに超えるピットだというのに、鳥肌が立とうというものである。

 動きがわかりやすかったのはドリーム組。昨日の前検は新ペラを、叩かずそのままでこなしたという守屋美穂が、案の定、ペラ室の隅っこに陣取り熱心にペラを叩いていた。2R発売中には試運転に降りていく準備を始めていて、今日は一日、ペラ室と水面の往復を繰り返すことになるのだろう。

 1号艇の田口節子は本体整備。「一通りやってみる」というコメントがあったので、それには本体も含まれるということなのだろう。何しろ取材制限もあって整備室ははるか遠くで死角も多く、具体的な内容はほとんどわからんのだが、大きな整備をしている雰囲気には見えなかった。点検くらいかも? 毎度毎度だが、直線情報はチェックしていただきたい。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)