BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――VIVA! ベテランレディース!

 8R、寺田千恵が逃げ切り1着。前半の時間帯、あまりの暑さにしんどそうな顔も見せていたテラッチだが、水面に出れば元気いっぱい! 最近の暑さは異常というしかないが、それでも30年以上、真夏の戦いを経験してきたテラッチなのである。この気候における対処法だって心得ているというわけだ。さすがと言うほかない。

 そのレースで2番手争いを演じながら敗れてしまったのが渡辺千草。年齢では日高逸子のほうが上だが、登番では全女子レーサーのなかで最古参がこの渡辺。しかしながら、まだまだ元気いっぱい! レース後は速攻で整備室に入り、整備を行なっている。5歳年下の僕は今日、ピットに向かう前、暑くてヤだなーとかなんとか、ダラダラしていたわけだが、そんな素振りはひとつも見せないのが千草さんなのである。その姿を見て、おおいに反省しましたね。ピットで顔を合わせると快活に挨拶をしてくれる千草さんはいつも爽やか。そうありたいものである。

 9Rは海野ゆかりと日高逸子のワンツー! マスターズ世代のふたりが上位を占めた。日高は還暦とは見えない足取りでピットに戻ってきており、またエンジン吊りもキビキビと終えて、真っ先に控室へと向かっている。そのスピードがまた早い! 同い年の畠山にはぜひとも見習ってほしいと、切にそう思う次第なのである。

 海野は彼女らしい3コースまくりで豪快な勝利! 会心の一撃に、レース後の微笑が輝いていた。海野自身、納得のレースだったのだろう。その海野に笑いかけていたのが谷川里江。「55歳になりました」とオープニングセレモニーで語っていたけど、今期A1級復帰ですよ! まったくもって素晴らしい。果敢にまくっていくレースはまだまだ若々しく、選手生活はそう長くないと思うとも言っていたけど、いやいや、いつまでもその攻撃力を見せつけてほしいと願うわけなのである。

 そして10Rでは、山川美由紀が2番手争いに参戦! バックでは4番手ながら、2マークでしっかり連争いに加わったあたり、さすがの捌きというしかない。残念ながら3着に敗れ、ピットに戻るとやや疲れた表情も見せていたが、衰えぬ勝負根性には脱帽である。前半レースの実況で「34回目のレディースチャンピオン出場」と紹介されていたが、みなさん、今回は第36回ですよ! 歴代最多の4Vも含めて、まさにレディースチャンピオンの歴史は山川美由紀の奮闘記でもあるのである。この偉人を、またその激闘を、令和4年の今、目の当たりにできることはまさに僥倖と言える。本当にすごい!

 ベテラン勢の奮闘という意味では、最後まで試運転をしていた選手のなかに、角ひとみと岩崎芳美の姿があったことも記しておきたい。角は今日、2R1回乗り。その後も延々と調整、試運転を、この猛暑のなかで行なっていたのだ。僕、角と同い年なんです。ほんと、あちーのなんのとグダグダ言っていてすみません! 今節は、121期の中村かなえが初出場を果たしているわけだが、同期に登番5000番台がいる中村が出場するようになってもなお、角や岩崎、さらにその上の世代が大きな存在感をもってこの舞台に登場している。その原動力は間違いなく、今日の角と岩崎が見せていたような、飽くなき勝利へのこだわりだろう。

 いやいや、もちろん若手も頑張っている! 實森美祐も、1R1回乗りのあと、角先輩と同じタイミングまで試運転を続けていたのだ。角のほうがわずかに先に切り上げて、それを見た瞬間、實森はボートを係留所につけて、猛ダッシュでボートリフトに向かっている。尊敬する師匠のエンジン吊りに不在は許されないとばかりに全速力で駆け付け、率先して作業。その姿は実にフレッシュであり、そして健気なのであった。

 地元の最若手である中村桃佳は、10R発売中にボートを下ろして試運転に向かった。丸亀の試運転タイムは10R発売中なのである。つまり、走ることができる時間は限られているのである。にもかかわらず、わずかな時間でも走りたいと、調整に一区切りをつけたあと、水面に出たのだ。6着2本という最悪の発進となってしまった初日。これをなんとか巻き返そうという意欲があふれた動きである。ちなみに、7R1号艇を取りこぼしてしまった西村美智子も、一緒にリフトに乗って水面に出ていった。地元でなんとしても活躍したい。そんな思いが彼女たちを突き動かしたのに違いない。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)