“SG”の薫陶
10R
①末永和也(佐賀)18
②羽野直也(福岡)17
③小池修平(大阪)22
④関 浩哉(群馬)16
⑤高橋竜矢(広島)11
⑥澤田尚也(滋賀)09
スリットからわずかに主導権を握ったのはダッシュ3騎。特に4カドの関が質の良い全速フルッ被りで覗いたが、3コースから立ち遅れた小池が舳先ひとつで抵抗。その伸び返しブロックがなかなかに力強く、センター2艇がゴリゴリやり合っている間にイン末永が何事もなかったように逃げきった。
2~4号艇が玉突き状態になっての逃げだけに、この1着をもって今日の末永15号機のパワー云々は言いにくい。ただ、くるり回って押していくレース足はいつも通り軽快だった。さらに、末永自身もレース後に「出足を信じて逃げた」と全幅の信頼を置いており、この人機の信頼関係は明日の大一番でもそれなりの“武器”になるだろう。
一方、後続の2着争いは大混戦。外から小突かれつつ一番差しに構えた羽野の内~関にぴったり連動した二番差し高橋、アウトからトップスタートで三番差し澤田がズボズボ殺到。この3艇は2マークでも激しくやり合ったが、例によって“もっとも有利になりやすいポジション”を選択していた羽野がギリギリ抜け出してファイナルの切符を入手した。
羽野72号機に対する私の評価は一貫して低く、今日の行き足~伸びも頼りない見え方だった。ただ、1マークの出口で高橋らを抑えきったレース足、同じく2マークで澤田と激しく接触しながらじわじわ突き放した出足系統は、中堅⇒中の上レベルにアップしていたかも知れない。優勝戦に入ればそれでもワースト級かも知れないが、この前年度覇者には劣勢パワーを補って余りあるスキルがある。去年も今年も、「ただひとりだけSGやってるなぁ」と何度も何度も痛感したそのスキルは、もちろん最上階のダンジョンでこそもっとも光り輝くはずだ。
激辛の勝負手
11R
①中村日向(香川) 14
②上條暢嵩(大阪) 16
③野中一平(愛知) 15
④宮之原輝紀(東京)14
⑤上田龍星(大阪) 16
⑥高田ひかる(三重)19
↑御覧のように、6艇のスリットラインが1艇身前後でビターーーン揃って完全に内寄りペース。外の5艇が窮屈な攻めを出し入れする間に、今大会の“トップ中村”日向が1マークをくるり旋回して勝利に近づいた。格上・上條の2コース差しも絶品だったが、出口からの押し足は日向62号機が上。このあたりの出足系統は、今シリーズのトップ級のひとつと判定して間違いないだろう。
一方、準優らしい死闘になったのが2着争いだ。バックで優位に立った上條が2マークで日向を抱き込むような全速ターン。これがかなりのオーバーターンになったところ、バック3番手の野中がくるり小回りで一気に2番手を取りきった。ターンミス×好旋回での逆転劇。
だがしかし、準優の2着争いは一度の交錯では終わらない。ヤンダビ7回出場の最多記録を誇る上條が、2周目に突入してから嫌味嫌味の切り返しを連発! 野中も分かってはいるのだが、SGで鍛え上げた上條の切り返しは辛く厳しい。ふたりの距離はターンごとに縮まり、3周1マークの超激辛の切り返しでついに2艇の体が入れ替わった。
10Rの欄で「羽野だけがSGを」的なことを書いたが、ここにもひとりヤンダビの次元を超える男が控えていた。一方、野中にとってあまりにも悔しい3着だったろうが、“SG常連のスゴミ”を全部の毛穴で感じ取った経験は、間違いなく明日からのレースに血肉となって反映されるだろう。
節イチの咆哮
12R
①近江翔吾(香川)08
②栗城 匠(東京)12
③畑田汰一(埼玉)08
④仲谷颯仁(福岡)05
⑤石丸海渡(香川)14
⑥井上忠政(大阪)16
近江22号機が今日もインからキッチリ押しきった。一見、起こしで後手を踏んだように見えたが、そこからスリットまでの出足~行き足が例によってスムースかつ半端ない。スーーーッと音もなく伸び返し、センター勢の猛攻をまったく寄せつけずにファイナル1号艇へ直結するターンマークを先取りした。2日目からすべてコンマゼロ台で無敵の5連勝。翔吾22号機に関しては、もうあまり書くべき言葉がないな(笑)。
そしてそして、バック直線でぴったり2番手に貼りついたのは、10Rの羽野~11Rの上條に続いてこれまた記念覇者にしてSG常連の仲谷颯仁!! トップスタートでスロー勢にプレッシャーを与え、3コース畑田の先攻めをソツなく促してから自身は冷静的確な差しハンドル。その狙いすました無駄のない差しはターン出口で鋭く伸び、あとはまったく後続を寄せつけずに最低ノルマの優勝戦チケットを手中に収めた。
いやはや、やっぱここにもおりました、“SG”が。そうとは認識しつつ、去年から「羽野キュンのファインプレイばかりが目立つなぁ」などと思っていたのだが、ここ一番でライオンや虎が隠していた爪を突き出した、という感じだろうか。明日は羽野・上條・仲谷の3強が外枠を占拠する。勝ちきれるかどうかは言及できないが、あの手この手でやや経験値の浅い好枠3艇をあの手この手で脅かし続けるだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)