BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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大村グランプリTOPICS 2日目

穏当な悲喜劇

11R
①丸野一樹(滋賀)
②瓜生正義(福岡)
③椎名 豊(群馬)
④桐生順平(埼玉)
⑤白井英治(山口)
⑥上條暢嵩(大阪)

 戦前の予想どおり、大本命の丸野に鈴を付けに行ったのは3コースの椎名だった。早めの起こしから、ほぼほぼ握りっぱなしでスリット通過。2コースの瓜生を完全に出し抜く態勢から、じわり舳先を左に傾けた。
 まくり怪獣の本領発揮か!?

 椎名アタマ⇒外枠というエッチ舟券を買っている私はそぞろときめいたが、残念ながら1マーク手前で伸び足は売り切れ完売。ポイント的に当面のライバルである瓜生に艇をこすり付け、それを引き波にハメつつまくり差しという戦法を余儀なくされた。それはそれで力強い攻撃だったが、逃げる丸野には届かない。先攻めの椎名~小回りで残した瓜生が続き、瞬く間に穏当な内寄り決着の隊列ができあがった。

 椎名は5着・2着=トータル20ポイントというグレイな成績でトライアル1stを走り終えた。合否の行方は12Rの結果次第となったが、同じ20ポイントの瓜生(4着・3着)を上位着数で上回ったのは好材料ではある。逆に、瓜生は絶望的な立ち位置で12Rを見守る立場となった。

 スリットから展開なく舟券に絡めなかったダッシュ3人は、いつものことながら残酷すぎる明暗を分かち合った。4着の上條は、昨日の6着が響いてトータル16点ははっきり赤信号。逆に5着の白井は、昨日の1着がモノを言って22点で当確ランプ。そして、昨日は2着と気を吐いた桐生が、まさかの6着でトータル19点まで。12Rでよほどのことが起きない限り、事実上の終戦となってしまった。

報われなかった勝負手

12R 並び順
①遠藤エミ(滋賀)21
⑤毒島 誠(群馬)13
②池田浩二(愛知)19
③磯部 誠(愛知)10
④羽野直也(福岡)08
⑥石野貴之(大阪)06

 12人の戦士が天国=トライアル2ndと地獄=シリーズ降格へと完全に篩い分けられる最終バトル。この最終審判の場で、凄まじい大波乱が待ち受けていた。まず、最初に火種を蒔いたのは毒島だったか。

 内艇の誰もが前付けを警戒していた石野が動かず、ほっと緊迫感がほぐれた瞬間、5号艇の毒島がスーーーッと音もなく(比喩ですがw)2コースに入り込んでいた。他の面々では、あるいは池田だけは「これはイン水域が深くなりそうだから、入れちゃおうか」という計算が働いていたかも?

 とにもかくにも、最終隊形は15・2/346! この隊列を予想できた人がいたとしたら、それは「毒島の秘術・バナレ飛び」を加味したものではなかったか。現実の水面は「前付け」だから、もちろん内2艇はずんずん深くなる。インの遠藤は12秒針が回るはるか手前で100mラインを踏み越えた。毒島も。
 その両者を涼しげに眺めながら、池田がたっぷりの助走をとる。磯部が舳先を翻して4カドを選択する。なんでも起こりそうな超スリリングな最終隊形から、人気の遠藤を自力で攻め潰しに行ったのは……これまた北関東の勝負師だった。インからやや凹んだ遠藤を、ゴリッゴリのジカまくり! 遠藤は昨日に続いて毒島に徹底抗戦したが、さすがに分が悪すぎる。内から粘って粘って力尽き、毒島の引き波とともに次のステージへの権利を剥奪された。

 さてさて、これで毒島が1着=トライアル2ndに滑り込み、となれば、今日の一連の勝負手は絶賛とともに長く語り継がれただろう。だが、自力で本命を競り潰した毒島自身も無傷ではいられない。昨日同様、4カドから素晴らしいスタートを決めた磯部が、競り合う両者を横目にスパーーーンと鋭角のハンドルを突き刺していた。

 ピットアウトからまさに死力を尽くした毒島は、椎名と同じ【2着・5着】ながら賞金差!でシリーズ戦へ陥落した。最後の最後にらしさを見せつけたが、この1年の不振が最後まで尾を引いた、と言ったら言い過ぎだろうか。
 他の面々では、3着の羽野が大崩れのないポイント獲得でセカンドステージへ。4着の池田も昨日の大きな貯金を生かし、当然のようにさらなる大舞台に駒を進めた。

無傷の2連勝!

 さて、GPシリーズ戦は2日目を終えて無傷の連勝レーサーがただひとり。なんとなんと、SG初出場の島村隆幸! しかも、昨日は4カドまくり153倍~今日は2コース差し280倍のロングショット連チャンで、2日間のシリーズ戦での万舟2発をすべて演出してみせた。まさに天晴れの一語。とりあえず、島村の今日時点でのSG生涯成績は1着率100%&万舟率100%なのである(笑)。

 島村といえば、10年近い前のヤングダービーでモヒカン刈りで登場。全国のファンに峻烈なインパクトを与えたのを、今もはっきり覚えている。それが31歳の今ではしっかり落ち着いたたたずまいで……と、今日のところはこのあたりで留めておこう。洒落でもなんでもなく、優勝戦の後にあれこれ書き込む可能性があるから。明日の島村は【4R4号艇・8R5号艇】の2回走。どんどん体制相手が強化されているが、どこまで分厚い壁をぶち破れるか、どこまで大穴を演出し続けるか、試金石の3日目をとりあえずのシリーズ主役として見届けるとしよう。

 最後に、2日目を終えての上位パワー(あくまでシリーズ戦での上位だが)、はたまたトータル上位ではなくともユニークな特長がある人機をピックアップしておこう。

濱野谷憲吾 A+【出A・行S】
前本泰和 A【出A・直A】
島村隆幸 A【出A・直A】
中野次郎 A【出A・直A】
前田将太 A【出B+・直S】
関 浩哉 A【出A・直A】
魚谷智之 A【出A・直A】
仲谷颯仁 A【出B+・直A+】
佐藤 翼 A【出A・直A】
山崎 郡 B+【出B・行S】
宮地元輝 B+【出B・行S】
大峯 豊 B+【出A+・直B+】

(photos/シギー中尾、text/畠山)