BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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GPトライアル 最終戦ダイジェスト

残酷な一騎討ち

11R
①羽野直也(福岡)
②馬場貴也(滋賀)
③磯部 誠(愛知)
④深谷知博(静岡)
⑤池田浩二(愛知)
⑥山口 剛(広島)

 1周バック直線。例によって、2コースから異次元の早くて速い差しハンドルを入れた馬場の舳先は、ぎりぎり何十センチか、羽野に食い込んだまま離れそうで離れなかった。この事象がふたりに与える影響がどれだけ深刻か、おそらく両者ともに漠然と感じながら短い直線を疾駆していただろう。

 スリット裏を過ぎたあたりから、馬場の舳先がさらに深くえぐり込む。エース51号機がどこまで完成形に近いか分からないが、やはりこのあたりのパワーは強力だ。2マークの手前で舳先を揃え、抜け出し、ターンマークを余力たっぷりに旋回して大きな大きな1着を決定づけた。

 1着・馬場、22ポイント、ファイナル当確。
 2着・羽野、20ポイント、ほぼほぼ終戦。
 そう、あのバック直線で馬場の舳先が削げ落ちれば、両者の境遇(ともに21点で羽野だけ当確ランプ点灯)は真逆だった。いつもいつもいつもトライアル最終戦は残酷すぎる事象を生み出すが、今年の11Rはこの序盤の数百メートルで明暗が分かれたわけだ。それもこれも、馬場クンの素晴らしいターンと51号機の底力があればこそ、と賞賛するしかないだろう。

 3着は、深谷50号機を相手に凄まじい立ち回りを魅せた池田! 今節の池田は相棒の60号機に対して、珍しく「いいですよ」「悪くないです」と全幅の信頼を寄せているのだが、深谷に競り勝った足色はピカピカに輝いていた。ただし、得点は19点。

 池田に競り負けて4着だった深谷と展開がなく5着に敗れた磯部は、ファイナル当確ながら手痛い敗戦となった。両者とも得点トップ=ファイナル1号艇の可能性がほぼほぼ消失。逆に言うと、12Rの白井、片岡のみならず、1号艇の幸哉(逃げれば11R組をすべて凌駕)にも力こぶの入る最終バトルとなったのである。
★11R終了時のポイント=深谷23点・磯部23点・馬場22点・羽野20点・池田19点・山口-2点

“値億金”の3着

12R
①原田幸哉(長崎)08
②椎名 豊(群馬)13
③白井英治(山口)18
④片岡雅裕(香川)16
⑤菊地孝平(静岡)10
⑥丸野一樹(滋賀)24

 さあ、泣いても笑っても後がないガチの最終バトル。毎年のように書いているが、この12Rには直前の11Rとは一味違うコクが発生する。11Rの結果を踏まえて、具体的な勝負駆け条件が確定するのだ。選手たちがその条件をチェックしているかどうか、は記者席にいる私には分からない。そうではないとしても、末端のボートレースファンを自負している私にとって、この短いインターバルの間にあーでもないこーでもないと計算したり条件を弾き出したりするのが、毎年のウルトラ楽しいひとときになってしまった。

 今年はこんな感じだ。
★得点トップ争い/自力の権利は白井&片岡で、11Rの結果を受けて【白井は片岡より先着して3着ならトップ確定、片岡は白井に先着して2着ならトップ確定、両者ともその条件を満たせない場合は幸哉1着で逆転トップ】。
★6位ボーダー争い/無事故完走を前提にすると5人は当確。最後の一席は羽野vs幸哉のどちらかに絞られていて、【幸哉が4着以内なら幸哉、5着以下なら羽野】。
 つまり幸哉は「ファイナル1号艇があれば、ファイナル落選もある」というヒリヒリの境遇で地元の水面に臨むことになったわけだ。

 いざ本番、スリットからもっとも輝いたのは、ほぼ落選が決まっている菊地!! 昨日のインタビューで「全力勝負します!」と宣言したとおり、5コースから素晴らしい飛び出しで内艇にプレッシャーを与えた。

 その菊地が攻め込む前に、いち早くレバーを握り込んだのは3コースの白井。得点トップの条件を知ってか知らずか、「当面の敵・片岡ブロック」なんてセコイことは考えず豪快に握る。勢い、片岡がそれをマークする形で二番差し。そして、そのど真ん中を特攻隊長の菊地が突き抜ける。
 この時点で、幸哉の1着~菊地の2着がほぼ決定!

 さあ、こうなると、私の脳内では下世話な計算が駆けまわる。幸哉の大敗はありえないから、羽野キュンの落選がほぼ確定。得点トップ争いはもはや幸哉か白井に絞られ、白井が3着に踏みとどまれば白井、4着以下に落ちれば幸哉、という微妙な状況になった。

 果たして、白井はそれを知っていたかどうか。接戦の3番手をひた走っていた白井はいつも通りの冷静な位置取り&ターンで後続艇に一分の隙も見せず、ファイナル1号艇の必要条件である3着をもぎ取った。
 2014年の平和島ファイナル以来、2度目のグランプリ1号艇、確定! 8年前はパーフェクトVが懸かっていたりインが弱い平和島だったり、あれやこれやで画竜点睛を欠いたが、今回はかなりの確率で大願成就となりそうな気がするのは私だけだろうか。(photos/シギー中尾、text/畠山)