11R。片岡雅裕が逃げ切り快勝。昨日の3着に続いての好結果に、レース後の片岡の表情は明るい。例年のボーダーであれば、これでファイナルは当確。もちろん好枠を目指す第3戦になるわけだが、ひとまずは心が軽くなる勝利であったはずだ。
2着は磯部誠。2連続2着で、こちらも例年どおりのボーダーなら当確。というより、ボーダーが23点になることはあまり考えにくいから、22点の磯部は当確と言い切ってもいいのではないか。磯部の表情もまた軽やかだ。がっちりと手応えを感じられる2着。アタマは獲れずとも、気分が悪かろうはずはない。
一方、3着の菊地孝平はやや複雑な表情だった。ピットに戻ると即座に椎名豊のもとへ。2マークでふところから押っ付けて逆転したシーンについて、詫びを入れている。僕個人の感覚と断わっておくが、実に巧みな逆転だったと思う。トライアルはわずかなスキも見逃さない猛者たちの激しいしのぎ合い。椎名はやや落とし気味だったようにも見えたから、そこを突いたのは、あるいは椎名が突かれたのは、まさにこのトライアルという修羅場の数の違いと思えたものだ。あえて個人的にはと言ったのは、これが不良航法をとられてしまったから。さらに個人的に言えば、かなり厳しいジャッジだと思うのだが……。これで3戦目はギリギリの勝負駆けとなる。どんな勝負手を見せてくれるのかを楽しみにしていよう。
一方、椎名はやはり落胆の色が見えていた。もちろん菊地との間に禍根はないが、これでファイナル行きは相当に厳しい条件となってしまったことは、椎名の気持ちを明るくはしないだろう。それでもなんとか、明日は見せ場を作ってほしいところではある。
12R。深谷知博が逃げ切り快勝。初戦3着、2戦目に逃げ切りは片岡とまったく同じ過程だ。となれば、深谷もファイナルはほぼ見えた。それもあってだろうか、深谷の表情は実に晴れやか! もちろん機力的な手応えも十分にあったことだろう。この段階で歓喜をあらわにするタイプではないけれども、たしかに気分の良さは伝わる雰囲気ではあったのだ。
2着は白井英治。2連続2着はこれまた磯部と同じ。今日は、こうした偶然が実はこの後も続く。白井のレース後としては、いつも通り。やはりファイナル行きはほぼ手中にしたわけだが、眉間にシワを寄せて厳しい表情を見せるのは、いわば白井スタイルである。また、タイミングのいいまくり差しが深谷にはまったく届いていないことで足の差を感じたかも。明日は好枠獲りのために、さらに調整に時間を費やすものと思われる。
11Rでは昨日1着の菊地が不良航法というかたちでつまずいたが、12Rでは昨日1着の原田幸哉が1マークでの出口で大きく失速。シンガリ負けというつまずきを味わってしまった。ピットに上がった原田の歩様は遅く、顔つきは歪んでいた。キャビったときに足を操縦席内にぶつけたかも? 枠番抽選に向かう際は普通に歩いていたので、瞬間的な痛みだと思われるが、同時に初日の好発進を無駄にしてしまったという痛みも原田の表情を暗くしたのではないか。
今年のトライアル最後の枠番抽選。A組は片岡雅裕→白井英治→菊地孝平→椎名豊→原田幸哉の順で行なわれている。まず片岡が4を引き、白井は2日続けての3でやや不満げ。勢い込んで抽選機を回した菊地が引いたのは5で、思わずよろけてふらついて椅子に倒れ込むという。椎名は2を引き、そして原田は残り福の1。原田は大きく腰を折って礼をし、椅子に戻った。原田、今日の雪辱の大チャンス!
B組は深谷知博→磯部誠→池田浩二→馬場貴也→羽野直也の順で抽選。まず深谷が4を引き、磯部は2日続けての3でやや不満げ。勢い込んで抽選機を回した池田が引いたのは5で、思わずよろけてふらついて椅子に倒れ込むという。馬場は2を引き、そして羽野は残り福の1。
……どうですか、このすごすぎる偶然! A組とB組で出た枠番の順番が完全一致なのだ。しかも、初日3着初日1着の片岡と深谷がともに4号艇とか、3号艇2着の白井と磯部が連続3号艇とか、菊地と池田のリアクションがほぼ同じとか(笑)、細部にも共通点が満載なのだ。こんなのアリ!? ひとつ気になったのは、馬場が2を引いてがっくりとうなだれた点。もちろん、1もまだ残っていての2だったから、口惜しいのはたしかだが、2号艇は充分に好枠だし、1カ月半ほど前にダービーを制した枠ではないか。ちょっと気持ちがネガティブに振れているのではないか、というのが気がかりだ。明日は開き直って一発逆転を狙ってもらいたい!
シリーズ。予選最終日の勝負駆け。1stから回ってきた面々はおおよそ準優圏内で戦う2日間だったが、石野貴之がボーダー下で9Rに登場。インから先マイし、大上卓人のまくり差しに迫られたものの、押し切ってなんとか勝負駆けに成功した。2着でも6・00だったが、1stで大きな着順を獲っての6・00だから、上位着順差では不利だっただけに、ここは逃げ切り必須だったのだ。
レース後は安堵というよりは、やるべきことをしっかりやった、というある種の風格を感じさせる様子であった。シリーズを目指して大村入りしたわけではないだけに、なかなかモチベーションの難しい勝負駆けだったとは思うが、負けられない1号艇だったのは確か。勝って当然とは言わないまでも、これが自分の仕事なのだというプライドのようなものが見えた気がする、勝利後だったわけである。
10Rは瓜生正義が逃げ切り。準優1号艇を手にすることになった。そして、松井繁がまくって迫り2着。これで勝負駆けに成功。準優に駒を進めることとなっている。レース後、隣同士のリフトで陸にあがった両者。瓜生が松井に右手を掲げながら頭を下げ、松井がそれに応えて右手を掲げる。なんという風格! レース後の絡みにおいて、これほどまでにオーラ漂う絡みはなかなかないよなあ。ちょっと見惚れてしまった。
5着・遠藤エミと6着・稲田浩二はお互いに頭を下げながら、遠藤が稲田に平謝りの様子。その時点ではちょっと何があったのか把握できていなかったのだが、2マークで遠藤が失速して稲田が接触後退。その場面を遠藤は詫びていたわけだ。遠藤の身体が心配になる接触でもあったのだが……。そして、これが不良航法をとられて、遠藤は減点により準優圏外へ。稲田が18位に残った。遠藤は初のグランプリ、苦い思いを多く残してしまった。これは必ず、雪辱の種にしなければならない。
ところで、準優当確だった桐生順平は途中帰郷となってしまった。桐生もまた、多くのストレスを残す大村グランプリとなってしまっている。来年こそは!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)