BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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決勝戦 私的回顧

復権への序章

12R決勝戦
①松井 繁(大阪)11
②丸野一樹(滋賀)17
③上條暢嵩(大阪)16
④桐生順平(埼玉)16
⑤深谷知博(静岡)13
⑥池田浩二(愛知)16

 艇界の『王者』と呼ばれ続ける男が、現役チャンピオンを右フックでノックアウトした。チャンピオンベルトが収まるべき男に収まった、という言い方もできるだろう。おめでとう、王者・松井繁!

 勝因はいろいろ考えられるが、その筆頭はスタートか。インの松井だけが1/3艇身ほど突出し、外5艇はきれいな横一線。それぞれ窮屈に牽制し合っている間に、さらに自慢の行き足を伸ばした松井がしっかりガッチリ逃げきった。

 もうひとつ、この大会ならではの勝因として「くじ運」も挙げられるだろう。トーナメントを【5コース2着⇒4コース2着⇒3コース2着】で乗り切ったご褒美としての(?)1号艇GET! 長いファンならご存じと思うが、松井繁といえば「GPくじ運ワースト男」なのである。トライアルで緑玉と黄色玉ばかりを引く男が、年初の大一番で強運の白玉を引き、ガッチリ生かしきって1100万円を鷲掴み。ちょいと気が早いが、このまま賞金ランク上位をキープし続け、暮れの住之江でも別人の如きくじ運を発揮してもらいたい。

「まついーーーー、おめでとーーー!!」
「まついーー、ようやったぁぁ」
「まついーー、12万、ありがとーー! ついでに池田もありがとーー!」
 ゴールを通過する前から、スタンドのファンの多くが拍手喝采、大歓声とともに王者の凱旋を迎え入れた。勝利を決めた松井は、観衆の方に顔を向けて高々とガッツポーズ。やはりこの男には、ビッグのテッペンがよく似合う。

 止まない拍手と歓声を贈る観衆の中には、心の底から“王者復権”を願っているコアな松井ファンもいたことだろう。記念の優勝は2019年6月の桐生・赤城雷神杯以来、実に3年半ぶり。SGでも優出が稀になり(直近5年で2回)、「もう往年の力を望むのは無理」と言いきるファンも増えている。
 正直、私の心中にもそんな「王者の衰退」みたいな思いがあったのだが、だからこそ目の当たりにした王者のガッツポーズは妙に新鮮で、凛々しく、そして私自身が想像するよりはるかに嬉しい晴れ姿だった。
 見てくれ、これが王者だ。これが松井繁だ。
 松井と同年代以上のオールドファンは、きっと同じように誇らしかった気がしてならない。

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 さてさて、3年半ぶりとはいえ、この男に対してプレミアムGIひとつで大騒ぎするのは筋違いと言うべきだろう。暮れの地元GPへ、松井繁が絶好のロケットスタートを切った。それくらいで十分でしょ!
 でもって、来年の大村大会に舟券参加するであろう私に、忘れないように書き留めておきたいことがある。
――おい、2024年1月11日の畠山、この大会はフツーにインが強いだけでなく、トーナメント戦はインがさらに恐ろしく強い大会だぞ。舞台も日本一のイン天国・大村だし、それを肝に銘じて意地になったりムキになったりしないで、4日間を冷静に戦い抜きなさい!

 なぜトーナメントのインが強いか、その要因はいろいろある。「生きのいい強豪が選考順位の上位=好枠を独占、丸野、池田のイン3連勝など強者による固め打ちが発生、基本3着条件だから外枠選手もハイリスクハイリターンの戦法を選ばない」などなど、挙げればキリがないが、そんな要因よりもとにかく「無謀な穴狙いに徹するのは危険な大会」ということを初手から覚悟してかかりたい。
 今節の私はうっかりこの大会独自の性質を忘れていて、気づいたときには3日目が終わっていた(苦笑)。もちろん、それまでに意地になったりムキになったりして穴舟券を買い散らかしてシリーズ惨敗。そんな愚行が来年以降も繰り返されぬよう、この紙面を借りて書き留めた次第だ。ご清聴、ありがとうございました。
 でもって、実はいちばん怖いのは、来年1月11日の私がこんなことを書いたことすら忘れることなのである。読者の皆さんにおかれては、来年の前検日あたりに「去年のブログを見直せよ!」と一声かけておくんなまし……お願いします!(photos/シギー中尾、text/畠山)