BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

脱帽

10R
①篠崎元志(福岡) 12
②池田浩二(愛知)    10
③吉田拡郎(岡山)    08
④今垣光太郎(福井)17
⑤毒島 誠(群馬)    21
⑥河合佑樹(静岡)   18

 池田が差した。2コースから大本命のイン元志よりちょっこっとだけ舳先を覗かせ、ちょこっとだけ「まくるかもよ~~」という挙動を見せ、そこから伝家の宝刀・鋭角差し一閃。コンマ10のスタート勘から仕掛けから初動から旋回スピードから、ウルトラパーフェクトな差し抜けだった。もちろん、強めのホーム追い風も幸いしたことだろう。

 あまりにすべてが完璧すぎて、池田70号機のパワーがどれほど関与したかは断定できない。ただ、昨日は同じ2コースから引き波に足を取られてズルズル滑り落ちたから、今日のほうがバッチリ合っていたという“推測”はできるな。回り足はA以上と考えても不思議はないだろう。
 一方のストレート足は、バック直線で外の元志よりやや劣勢な見え方。3日目あたりから元志の中間速がアップしていて、そのあたりの差がしっかり投影される見え方ではあった。

 元志としてはひたすら悔しい2着だったろうが、1マークはパワー負けというより、本当に池田のパフォーマンスが天晴れすぎた。追い風もハンデとなった。元志自身も今日の着順とはすぐに決別し、明日の大一番へと気持ちを切り替えることができたはずだ。回り足が強力な今節の相棒は、展開次第で外コースから突き抜けるだけのポテンシャルがあるのだから。

 嗚呼、それにしてもの池田浩二。誰もが知ってるけれど、やっぱりアンタは不世出の天才レーサーだわ。簡単に見えてぜんぜん簡単じゃない、すんげぇ差しでした。脱帽!

僥倖

11R
①羽野直也(福岡) 05
②石野貴之(大阪) 07
③関 浩哉(群馬) 13
④田中信一郎(大阪)12
⑤桐生順平(埼玉) 10
⑥近江翔吾(香川) 11

 羽野が灼熱のトップスタートを決め、威風堂々の逃げを決めた。私は直前予想で「昨日までと同じコンマ15くらいになる」などと書いたのだが、土下座で詫びる必要があるだろう。
 現在の羽野キュンの充実ぶりを、あまり過小評価してごめんなさい!!
 私のダメダメ予言と現実の【コンマ10の差】は大げさでもなんでもなく、まんま【羽野直也というレーサーの精神面の成長】と言い換えてもいいだろう。

 さらに言うなら、今節は整備力の成長もひしひし感じた。前検ではスリットからもっさり重たく、初日もそんな感じで本人コメントも明るいものではなかったが、日に日に全部の足がアップ。もっとも弱めに見えていたスリット近辺の足に至っては、4日目にしてトップ級のひとつに数えるほどに化けてしまった。あ、これ以上の話は割愛しておこう。明日の今頃、また書くことになるかも知れないから(笑)。

 で、実になんとも惜しかったのは、約4年ぶりのSG準優にして約5年ぶりのSG優出をもくろむ信一郎だ。4カドから関の気風のいい握りマイに素早く連動し、あっという間に抜けた2番手に進出。握った関が追い風で流れたとはいえ、まさに電光石火の2番手差し抜けだった。
 嗚呼、だがしかし、準優の2マークには魔物が棲んでいる。6コース差しからバック最内をひた走った近江が、2マークでダメ元勝負の切り返し。これが信一郎の艇尾にコツンとぶつかり、近江がエンストしたり信一郎が失速したりしている間に、やや遅れていた石野が優出圏内へのごっつあん差しを突き入れていた。そのラッキーガイが可愛い後輩だったことが、信一郎にとってはせめてもの慰めになっただろうか。

「石野、ラッキーだったなぁ」
「確かに一番ついてたな、こういう男が怖いんだよなぁ」
 レース後、特観スタンドのふたりのファンがのんびりつぶやいた。節イチ級に伸びる男が、節イチ級のラッキーでファイナル進出。信一郎の思いも背負って、もちろん怖くないわけがない。

王手

12R
①土屋智則(群馬)11
②茅原悠紀(岡山)13
③山田康二(佐賀)21
④吉田俊彦(兵庫)19
⑤馬場貴也(滋賀)16
⑥上平真二(広島)21

 土屋65号機がしっかりガッチリ逃げきった。起こしの加速感~スリット近辺の行き足~ターン回りの滑らかさ~出口近辺の押し足まで、今日も実戦足は軽快そのもの。今節の65号機は目を瞠るようなパンチ力は感じないものの、出足を中心にまったく欠点の見当たらないバランス型。今日のレースでも分かるとおり、どちらかといえばスロー起こし、とりわけイン戦に最適のバランスパワーと言えるだろう。

 2着はスリット同体の2コースから差しではなく、エイヤの気合でジカまくりを打った茅原! おそらく差しを警戒して落としたであろう土屋を引き波にハメる勢いに見えたが、この手の奇襲で優出圏外に出るほどヤワな65号機ではない。しっかり迎撃して併走に持ち込み、そこから先は茅原を寄せつけないレース足でファイナル1号艇の花道を驀進した。

 余裕の2着を獲りきった茅原37号機の足は日替わりで良く見えたりそうじゃなかったり、特に回り足にムラがある見え方だったが、昨日も今日もしっかり回転が合って前に進んでいた。バック直線~2マークではさすがに土屋とのパワー差が見え隠れしたが、この水面の6コースからグランプリを勝ち取った男であることを忘れてはならない。明日の緑のカポックは、往年のファンの目には不気味にも神々しくも映ることだろう。

 準優として書くべきことは以上だが……私が前検からエコ贔屓してきた山田康二69号機は、3コースから握った瞬間に茅原と航跡が重なって万事休した。スタート負けという見え方ではあったが、69号機の底力をまったく出せない悔しい最期となってしまった。これは悔し紛れの戯言だが、もしも茅原が正攻法の差しを選んでいたら、69号機の航跡は今日の茅原37号機を凌ぐ勢いで土屋に肉薄したことだろう。すいません、勝手にそう思わせてくださいっ!(涙)
(photos/シギー中尾、text/畠山)