BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――落ち着いた朝

 3日目の朝を迎えて、ピットはかなり落ち着いた様相だった。慌ただしい前検日から初日、レースを走ってみての調整に取り組む2日目を経て、3日目ともなればこのクラスの選手たちはは調整の方向性を見出して、マイペースの調整に持ち込めているということだろうか。気象条件もそれほど変わっていないからなおさら。SGの一節の流れとしてはよくある光景と言える。
 よく見ると岡崎恭裕のボートには、モーターがまだ装着もされていなかった。12R1回乗りということで、急ぎ調整を始める必要がないということだろう。そういえば、10年ほど前の岡崎はいつもこうだったなあと思い出す。これはつまり、足的には悪くない位置にいるということだ。なお、1R終了後には装着して、控室へと消えていっている。

 ペラ調整所の人口密度も低い。装着場の隅にある屋外調整所には、昨日までは常に10名以上の選手がいて、ハンマーをふるっていたものだが、1R発売中には空になる瞬間もあった今日の朝である。それでも次第に選手の姿は増えていったが、やはり昨日に比べればスペースが目立っている。それにしても、扇風機が置かれているとはいえ、なにしろ屋外である。暑いのである。そんなこと気にしていられないとばかりにペラと向き合う選手たちの集中力には敬服するばかり。ちなみにここの常連は福岡勢や女子勢、池田浩二、菊地孝平、宮地元輝など。2R発売中には12R1回乗りの羽野直也も、早々に調整を始めた。

 では整備室がガランとしていたかというと、そうではなかった。ボートが4艇も運び込まれていたのだ。今垣光太郎、瓜生正義、長田頼宗、宮地元輝。今垣や長田は昨日も同様にボートごと運び込んでの調整をしていた。というか、長田は今節、この整備室で姿を見る頻度が実に多い。パワー的な不満がなかなか解消されていないということだろう。それでも内枠では2着2着と、悪くないポジション。今日の10R3号艇は予選突破に向けて大事な一戦だ。

 4名のうち、本体をバラしていたのは瓜生。今日は10R1号艇ということで、時間もあるし、大事な1号艇だし、しっかりと点検、または整備に取り組んだというわけだ。悲壮感のようなものは感じられなかったから、やはり点検の意味合いが強かっただろうか。もちろん例によって直前情報のご確認をお願いするとして、ともかく必勝のイン戦に向けて着々と準備は進んでいる。

 整備室の壁際では、毒島誠と茅原悠紀が会話を交わしながら調整していた。何しろ装着場からは手元が完全に死角になっているので、作業の内容はまるで確認できなかった。その壁際の机というのは、リードバルブの調整が主に行なわれ、あとゲージを擦る場所になったりもしている。たぶんそのどちらかの作業、というに留めるしかないわけだが、いずれにしても大きな整備というわけではない。盟友とも言うべき二人だから、遠目から笑顔がのぞいたりしており、ふたりともリラックスモードと見える。茅原は昨日、10点の減点があったわけだが、切羽詰まるような精神状態とはなっていないようだ。もちろんまだ終わったわけではないから、レースでは闘志を見せつけてくれるだろう。

 さてさて、1Rで辻栄蔵が今節2度目の6着となってしまった。準優進出はかなり苦しくなってしまった、という状況である。辻といえば、敗れたレース後に悔しさを押し隠すということなのだろう、エンジン吊りで仲間とともに笑顔を見せる場面をよく見かける。しかし、この6着はかなり手痛かったのか、笑みはまるで浮かぶことなく、むしろ暗鬱な顔つきになっていった。カポック脱ぎ場へと向かう足取りも力弱く、痛恨を感じているのは明らかだった。やっぱり辻はガハハと笑っている姿が似合っている。鬱憤を晴らしての呵々大笑を今節中に見せてもらいたい。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)