BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

ケタチの直線足

9R
①新開 航(福岡) 11
②小池修平(大阪)    07
③大澤風葵(群馬)    02
④野中一平(愛知)    00
⑤畑田汰一(埼玉)    06
⑥宮之原輝紀(東京)06

 2コース小池の激差しが、ギリギリ新開を捕えきった。スリットでキワまで攻めた大澤が伸びなり圧迫したため、1マークの隊形は楽なものではなかった。むしろ、絶体絶命のピンチに思えた。

 が、伸び返して大澤のまくり差しをブロックし、ドミノ倒しのようにターンマークにもたれながら窮屈な差しハンドルを入れる。わずかに舳先が入る。そこからだ。ほんの先っちょだけだった舳先がグングン新開を貫き、スリット裏ではもはや舳先を並べるほどに伸び勝っていた。

 今節、ターン出口で似たような2コース差しを何度も見たが、ほぼほぼすべてインコースの選手が伸びるなり絞め込むなりで先着している。その光景が当たり前のように脳裏に焼き付いているから、小池の突貫ストレート足は奇異に映るほどだった。

 もちろん、まくりを警戒して強めに握った新開、節イチ強いホーム追い風、それらの要因が小池の背中を後押ししたのは間違いないが、少なくともバック中間での直線足はケタチの大差と見ていいだろう。おそらく、差された新開もそのあたりの較差を皮膚の全部で感じたはずだ。

 こうなると、明日の小池が何号艇になるかが気になるところ。リアルタイムで書いている現状はわからないが、仮に2、3号艇になるようなら「明日のスリット~1マークはマバタキ厳禁のスリリングな激闘になる」と予言しておきたい。それくらいの鬼足だった。

残酷すぎるパワー差

10R
①上條暢嵩(大阪)    12
②関 浩哉(群馬)    11
③井上忠政(大阪)    11
④原田才一郎(福岡)19
⑤板橋侑我(静岡)    17
⑥仲谷颯仁(福岡)    18

 9Rとはまるで違った意味で、やはり奇異な光景が脳裏に焼きつくレースだった。
 進入隊形は前付けに動いた仲谷を誰も入れず、枠なり123456のオールスロー。これはよく見かける光景。で、1マークはインの上條がしっかり先マイして、イチ抜け決定。これも当たり前。

 今節の最年長・上條は予選のピットアウトから己のスキルをフル稼働し、このポジションを獲得。そして今日も仲谷の陽動作戦に惑わされることもなく、絶好枠を生かしきった。私のパワー鑑定は「良くて中堅上位あたりまで」で一貫しているのだが、もちろん明日も同じ枠番ならすべての経験則を駆使して頂点に勝つ可能性は低くない。逆に2号艇なら、超抜ムードの2艇に挟まれて、なかなかに苦しいファイナルになるだろう。そのあたりは11Rを待つしかないが、とりあえずこの大会の最多出場を誇る“29歳の古豪”のファイティングスピリットに絶賛の拍手を送りたい。

 さて、奇異な光景はここからだ。このレースの2着争いはてんやわんやの大騒動になった。バック直線で2番手を取りきったのは、3コースから握り倒した忠政だ。小池、上條に続いて大阪から3人目のファイナリストか。

 そう見ていたらば、内から④才一郎が舳先を伸ばすわ、②関が切り返して2マーク先取りを狙うわですったもんだ。その3艇が一歩も引かずに握り合ったから大変だ。掛け値なしの玉突きぶん流れで、特に大外の忠政は大きくバランスを逸して転覆寸前まで振り込んだ。

 この追突事故で難渋している間に、ぽっかり空いた最内から舳先を突き出したのは……劣勢パワーに苦しみ続けた仲谷!! そう、ボートレースは機力がモノを言う競技だが、機力だけで決まらない競技でもある。
 展開の利であっても優先席を確保した仲谷が、ほぼ間違いなく2着を取りきる。
 そう思ったのは、私だけではないだろう。だって、仲谷颯仁だもの。ハナを切ってしまえば、おいそれと抜かれる男ではない。他の3艇は玉突きから立て直しての追撃だし。

 だが、その直後に奇異な光景が起こる。2周1マーク、仲谷がターンマークに辿り着くはるか手前で、関がその仲谷を引き波にハメていた。ツケマイと言うより、全速で握ったら仲谷が潰れていた。仲谷には残酷すぎるが、大人が子供の襟首をつまんで持ち上げるような、それくらいのパワー差を感じさせた。

 あっという間に1-2隊形ができあがり、それで準優としてのハイライトは終わる。その後も奇異な光景は続くのだが、まだご覧になっていない方はリプレイで確認していただきたい。3番手の仲谷は、1周2マークで転覆しそうになった忠政にも抜かれてしまうのだ。
 ボートレースは機力が大きくモノを言う競技。
 ぐるり一周回って、そう痛感せざる得ない残酷な逆転劇だった。卒業イヤーの仲谷には、掛けるべき言葉すら浮かばない。

圧逃。

11R
①入海 馨(岡山)12
②高橋竜矢(広島)11
③松本純平(埼玉)15
④松山将吾(滋賀)12
⑤栗城 匠(東京)10
⑥吉田裕平(愛知)15

 スリットほぼ横一線から、圧倒的人気の入海が他を寄せつけずに逃げきった。ファイナル1号艇確定。同時に2号艇・上條、3号艇・小池も決した。それなりにスリリングな枠番だと思う。

 あまりに完璧すぎて、入海に関してはほぼ語るべき言葉がない。機力は上位Aを飛び越えて抜群A+レベル。初日あたりはややあやふやだったスタート勘も、行き足が完備してからゼロ台を量産。今日は今日とてピッグ準優としては理想的なコンマ12。機力もリズムもプレミアムGIを獲るに相応しいファクターがすべて揃った。そうお伝えしていいだろう。ド貧乏な私・畠山が◎を打つかどうかは別として(苦笑)。

 2着争いは、奇異な光景というレベルではないほどの接戦となった。まず、1マークは高橋がやや意表のジカまくりから、そのままバック2番手に進出。そこに4カドから

差した松山がじんわり伸びて、2艇のマッチレースに。

 そのまま高橋がリードを保つかと思われたが、松山が辛口の勝負手を連発して逆転。最大の焦点は2周1マークで、「松山を先に回しての差し」を選択した高橋のハンドルがやや入りきらず、そこで勝負あった。

 114期vs121期。
 パワー差の逆転というより、経験スキルの差があの正念場の交差旋回で色濃く反映された気がするのだが、どうだろう。松山の足色(特にターン回り)が、昨日よりもかなりアップしていたとも思うけれど。(photos/シギー中尾、text/畠山)