BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

獲りたい思い

12R優勝戦
①入海 馨(岡山)19
②上條暢嵩(大阪)18
③小池修平(大阪)12
④新開 航(福岡)13
⑤関 浩哉(群馬)18
⑥松山将吾(滋賀)17

 今節の最古参、29歳の上條が卒業イヤーで大輪の花を咲かせた。決まり手は2コースからのジカまくり!!
「最後の最後、絶対に獲る」
 そんな執念がモーター&エンジンに乗り移ったような、迷いのない豪快な一撃決着だった。GIタイトルは2個目。4年半前のGI水神祭も、ここ下関で3コースまくり。相性抜群の水面で、見事にラストチャンスをモノにした。おめでとう!

 スリット隊形はさほど有利だったわけではない。イン入海とは同体で、外からセンター2騎が突出した見え方だった。が、そこからの行き足が素晴らしい。直前でリングを一本交換したが、“勝負リング”が見事に当たったか。おそらく早起こしでアジャストしたであろう入海をスーーッと出し抜き、そこからは気合の早仕掛け。入海が伸び返す前に素早く締め込み、大本命の舳先を弾くようにして1マークを先取りした。

 展開的に惜しかったのは、同じ大阪支部の小池だ。3コースからトップSで舳先を突き出したが、大先輩の並々ならぬ行き足&「まくらんかな!」の気迫をひしと受け止めて直進。上條がまくりきった瞬間に、マイシロたっぷりの鋭角差しを突き入れた。
 大阪コンビ連動の③-②だ!
 なけなしの資金で③-②⑤-②⑤だけ厚めに張っていた私はダラリ脳汁を垂らしたが、現実の舳先は突き刺さらない。上條まくりに捨て身で抵抗した入海の艇が真横に流れ、小池の差すべきスペースは1ミリたりとも空いていなかった。

 結果論としては「自力で攻めた者」と「他力で勝機を狙った者」の明暗が浮き彫りになった形か。スリット隊形的には「小池の伸びなり2段まくり」という戦法もありえただろうが、大阪ラインの呼吸も含めて小池の戦術は間違いではなかったと思っている。とにもかくにも、今日は上條暢嵩のド迫力の自力攻撃が他を圧した。このタイトルを獲りたい、という思いが他の誰よりも強かった、と言ったら言いすぎになるだろうか。

 あっという間に上條が独走状態に持ち込み、2番手に浮上したのは5コースの関。スロー3艇の交錯とは無縁に、冷静的確な最内差しで準Vゾーンに突入。1マークを回ってみれば、すでにGIタイトルを獲得している格上ふたりが不動のワンツー態勢を築いていた。
 大きなチャンスを逸した27歳の入海と28歳の小池は、今日の複雑な思いを心の奥に蓄積し、来年の勝ちたい思いへと昇華することになる。今年の上條暢嵩のように。

    ★   ★   ★
 最後に今大会の総括をば。6日間72レースをすべて見終わっての最大の感想は「インコースが強かった」に尽きる。過去5大会のイン1着数&万舟数と比べてみよう。

      イン 万舟
2018浜名湖 39勝 16発
2019三国  44勝 19発
2020びわこ 41勝 13発
2021徳山  43勝 10発
2022多摩川 50勝 9発
2023下関  56勝!9発

 思い返せば去年の多摩川大会もインがやたらと強く、なんとなんと「5・6号艇&5・6コースの1着がゼロ!?」という異常事態が発生。全72レース、⑤と⑥のアタマ舟券=単純計算で2880通りのフォーカスはすべて紙屑(他艇のアタマ舟券の養分とも言える)になったわけだ。今年は宮之原輝紀(2回!!)や高田ひかるが6コースから勝ちきっているから、まだマシと言うべきか。それを差し引いてもイン1着が激増しているから、どっちもどっちと呼ぶべきか。

 さらに今年はインが強かったのみならず、【大本命の①-②決着】がありえないほど多かった。2連単の出現数を並べてみよう。
①-② 23回
①-③ 13回
①-④ 9回
①-⑤ 8回
①-⑥ 3回
 嗚呼、なんという行った行ったのワンツー天国(自称・穴党の私にとっては地獄以外の何物でもない)。これだけ内2艇が鉄壁の砦を築いているのに、前付けでひとつでも内枠を取りきった選手は110期・上條暢嵩(2回)と112期・竹田和哉の“年長組”だけだった。大半の外枠選手は、手をこまねいて乱舞する①-②決着を後方から眺めていた、と言ったら言い過ぎだろうか。

 去年の当欄を開いてみたら、やっぱり私は同じような辛口の総評を記していた。最後の何行かをまんまそっくりコピペして、今年もまったく同じ言葉で締めくくるとしよう。

――全速スピードよりもコースの利がモノを言う若人の祭典。自称・穴党の私は、絶対に認めませんっ!
(photos/シギー中尾、text/畠山)