BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――トップ争いも18位争いも

 予選前半はピット離れから厳しかった平本真之は、後半に入って尻上がりに成績をアップさせ、7Rでは道中で今垣光太郎を抜き去って勝負駆け成功! 前半、1号艇で2着に敗れた雪辱をも果たす形で、予選突破に成功だ。感情をはっきりと表に出すタイプの平本だから、表情はもとより、ピット内を歩く様子からも喜びが感じ取れる。賞金ランクは14位で、グランプリもほぼ問題ないだろう。この予選突破はデカい!

 一方で、賞金ランク15位、地元の中島孝平は10R5着。予選落ちが確定してしまった。グランプリ行きはそれでもかなり優位な立場にいるが、それよりも地元SGでの準優漏れは痛恨であろう。レース後、控室に戻るまでヘルメットを取ろうとしなかった中島。落胆を見せまいとしているのか、その振る舞い自体に大きな悔恨が見て取れた。

 賞金ランク20位の前田将太は、10R1号艇で4着。それでも得点率18位以内は確保できたのだが、1号艇の大きな着はやはり痛い。福岡勢に声をかけられると、泣き顔でそれに応えていた。もちろん泣いてませんよ。つまり、痛恨の敗戦をそういうかたちで表現してみせたわけだ。準優にさえ乗っておけば、逆転グランプリのチャンスは十分。切り替えて明日に向かいたいところ。

 ところで、7Rに今垣が2着に敗れたことで、予選トップ争いがさらに混沌としてきた。8R、大きなチャンスを迎えたのは池田浩二。その時点で得点率2位だったから、しっかりポイントを積み重ねておきたいところだった。しかし、3着で得点率を下げてしまうことに。仲間たちにはおどけても見せていた池田だが、それは半分悔しまぎれのようなところもあったことだろう。

 10Rでは、桐生順平が3着。勝っておけば12R5号艇の今垣は2着以上が必要になり、大きなプレッシャーを与えることになっていたが、3着ではやはり得点率がダウン。それを慰めにやって来たのが原田幸哉で、肩を何度も揺さぶっているのだった。それには桐生も苦笑い交じりの笑顔で応えてはいたが、前田と挨拶を交わすときにはお互いに顔をしかめるという。直後、桐生は脱いでいたヘルメットをふたたびかぶって、レンズを向けていたカメラマンたちに撮られまいとしているかのように、足早に控室へと向かうのだった。

 桐生は1周目バックでは2番手を走っていたのだが、2マークで吉田拡郎と競り合う間に逆転したのが片岡雅裕。片岡はこの2着で得点率を7.40に引き上げて、池田と桐生を得点率順位でも抜いてしまった! そう、今垣にプレッシャーをかけることになったのは、このレース6号艇の片岡だったのだ。
 特別、表情を変えることもなく引き上げていく片岡の背中に峰竜太が声をかけた。
「マーくん、1号艇だぞ」
 そう、準優1号艇はこれで確定。優出すれば先輩の森高一真が三国まで迎えに来ると約束しているそうだが、その可能性がおおいに高まったぞ! 森高先輩、ちゃんと予定を空けておいてください!

 さて、12Rの番手争いがアツかった。濱野谷憲吾が逃げて、バックでは原田幸哉、宮地元輝、今垣光太郎が2~4番手争いとなったわけだが、まず原田と宮地は準優勝負駆けで、原田は3着条件、宮地は2着条件。そして、今垣は得点率トップには3着以上が必要。それぞれに条件を抱えながら、くんずほぐれつの捌き合い! いったんは今垣が2番手確保かと思われたのだが、宮地が追って追って追って、3周2マークで逆転! 見事に勝負駆けに成功! 18位で準優に滑り込むこととなった。おそらく条件をわかっていたのだろう、宮地はボートリフトに帰り着くと、遠目にもわかるくらい、大きく息を吐き出している。まさに安堵の溜息だ。その宮地を笑顔で出迎えたのが、次点に終わることになってしまった山田康二というのが少し切なかったが……。

 一方、原田は3周2マークで切り返して逆転を狙ったのだが、及ばず4着。勝負駆け失敗に、エンジン吊り後も装着場のモニターの前で微動だにせずにリプレイを見つめているのだった。これはもちろん、グランプリ出場の可能性を閉ざす勝負駆け失敗でもあったから、昨年のグランプリファイナリストとしてはあまりにも悔しい。

 そして、今垣は3着で予選トップ確定! 原田の切り返しを冷静に捌いている間に宮地に逆転されはしたものの、地元SG制覇にグッと近づく3着だから、こちらもやはり安堵の表情を見せるのだった。カポック脱ぎ場に戻って、黙々とヘルメットを磨いていた今垣。その作業をしながら、どんな思いが脳裏をよぎっていたのだろうか。

 レディースでは9R、中谷朋子が2着。ここまで苦戦の連続で、整備している姿をずっと見てきた。1マークではイン堀之内紀代子を自力でまくり、守屋美穂には差されたものの、ようやく見せ場を作ることができた。レース後、西橋奈未に声を掛けられ、ふっと笑顔がこぼれた。今節、中谷の笑顔を見るのは初めて。朋ちゃんスマイルを明日も見せてくださいね!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)