BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル1stダイジェスト 2日目

枠なり決着

11R
①山口 剛(広島) 14
②平本真之(愛知)   13
③羽野直也(福岡)    16
④濱野谷憲吾(東京)13
⑤毒島 誠(群馬)   13
⑥片岡雅裕(香川)   19

 着順から先に書くと①②③④⑤⑥。GPトライアルではなかなかに珍しい、内から順番の枠なり決着となった。主な要因は「穏やかな枠なり3対3で、内5艇のスタートがほぼほぼ綺麗に揃った」がひとつ。それから、「もっともパンチ力のある(と思っている)濱野谷69号機がスリットから覗くも、攻めきれなかった」ではなかろうか。
 それくらい、今日の濱野谷も特訓のスリットからブイブイ伸びていた。が、実戦はカド受け羽野との断層がわずかにコンマ03。そこから半艇身近く出て行くムードではあったが、羽野キュンにしっかりブロックされ。憲吾をマークしていた毒島、片岡の攻めも後手に回った。

 昨日の転覆で赤信号の点った山口がインからしっかり押しきり、平本が握って追走、羽野は差て追撃……やや変則の展開だったが、波乱には至らなかった。でもって、道中でもっとも目を惹いたのは、バック最後方あたりから迫力あるレース足で4番手まで押し上げた憲吾69号と感じたのだが、どうだろうか。

 さて、この枠なり着順が、明日へどんな影響を及ぼしたか。枠番=着順のままポイントを加算してみよう。

①山口 剛(広島) -5+14=9点
②平本真之(愛知)  9+12=21点
③羽野直也(福岡)  8+11=19点
④濱野谷憲吾(東京)14+9=23点
⑤毒島 誠(群馬)  11+8=19点
⑥片岡雅裕(香川) 12+7=19点

 4着までの追い上げが利いて、濱野谷だけが文句なしのGP確定。21点の平本も他の点数的にほぼほぼ当確。そして、恐ろしいことに羽野・毒島・片岡が19点で横並び! 12Rの結果次第では3人ともに落選可能性もあるのだが、誰かしらが生き残るとすると優先順位は【片岡(昨日の2着が決め手)・羽野(毒島と同じ3・5着で選考順位が上)・毒島】。つまり、毒島はこの11Rの中で「5番目」という絶望的な立場に追い込まれたわけだ。この3人の中で誰が生き残るのか、誰も残れないのか……命運を決する12Rにつづく。

19点の明暗

12R
①中島孝平(福井) 10
⑥土屋智則(群馬)    11
②菊地孝平(静岡)   10
③深谷知博(静岡)    23
④桐生順平(埼玉)    29
⑤今垣光太郎(福井)34

 今節のトライアルではじめて進入を掻き乱したのは、昨日の⑥今垣でも⑥菊地でもなく、このレースの⑥土屋だった。スタート展示からオラオラゴリゴリの特攻隊。本番も同じくシャカリキ攻めたら、スタ展よりも多くの選手がこの前付けを受け入れた。
――土屋を入れて内を深くした方が、スリットから攻めやすい!
 中島以外の4人が同じ青写真を描いたのだ(おそらく、4人とも誰かしらが徹底抗戦すると思っていたはずだが)。

 最終隊形は16・2/345。内2艇が100m起こし×3コース菊地がターンマーク起こしという超スリリングな隊形だ。もちろん、ダッシュ勢にも少なからぬ勝機のある隊形だったのだが、スタ展でスロー起こしだった深谷と桐生が立ち遅れ。さらにスタ展で単騎ガマシだった今垣はなぜかさらなるドカ遅れ。なんだかんだで、このレースも結局は内3艇が優勢を築いた。

 横並びの内3艇から、勢いよく飛び出したのは助走距離をたっぷりとった菊地だ。元より行き足の弱い土屋を軽々と叩ききり、インの中島を圧迫。まくると見せかけてから、スッとまくり差しにシフトする。スリットから一貫した鮮やかな戦術で、菊地にもう一足があればインの孝平を捕えきっただろう。

 だが、差した孝平にはそのワンパンチが足りなかった。舳先が入ったかと思った瞬間、中島がウイリーで突き放す。菊地が内からしぶとく食い下がるが、やはり舳先は入らない。ギリギリ粘ってから菊地は艇を外へと持ち出したが、結果論でいうとこの判断が遅かったことになるのか。スタートでドカ遅れだった今垣が最内差しからゾンビのように蘇り、2マークを小回り旋回。外からやや仕掛け遅れた菊地を出し抜く形で2番手を取りきった。

「奇跡を信じて、最終日まで精いっぱい走ります」
 開会式でこう宣言した今垣だったが、今日の展開そのものがちょっとした奇跡と言っていいだろう。超ドカ遅れからのゾンビターン2番手進出。その後もそれぞれのノルマ着順を奪いたい後続艇がくんずほぐれつの死闘を演じたが、54歳の天然天才レーサーがガッチリと2着を守りきった。着別に点数を列挙しよう。

①中島孝平(福井) 12+14=26位 トップ当選
⑤今垣光太郎(福井)9+12=21点 当選
②菊地孝平(静岡)  8+11=19点 落選
④桐生順平(埼玉)  14+9=23点 当選
③深谷知博(静岡)  11+8=19点 落選
⑥土屋智則(群馬) 7+7=14点 落選

 この得点を11Rの6名と照らし合わせると、残酷な6対6の明暗が浮き彫りとなる。特に最後の1席は「19点で並んだ5人のうちのひとりだけが生き残り」というウルトラ残酷な結末となった。天国に導かれたのは、5人の中で唯一【2着】という数字を残した片岡! 他の4人は同じ得点ながらすべてシリーズ戦へと移送されることになった。毎年のことながら、今年のボーダー争いはいつにも増して残酷だった。(photos/シギ―中尾、text/畠山)