進化する50歳
11R
①濱野谷憲吾(東京)04
②羽野直也(福岡) 13
③土屋智則(群馬) 09
④毒島 誠(群馬) 03
⑤中島孝平(福井) 04
⑥今垣光太郎(福井)06
穏やかな枠なり3対3からイン濱野谷がしっかりキッチリ押しきった。スリットは↑御覧のとおりのゼロ台・電撃バトル。「トライアルは命懸け」としたものだが、このレースではスリットラインに選手の思いが集約したか。
で、電撃スリットから勢いよく飛び出したのは4カドの毒島だ。わずかに覗いた利もあったが、スリット前後の行き足はカド受け土屋とは桁違い。あっという間に同朋を呑み込み、やや凹んだ羽野も飛び越え、濱野谷まで攻め切ると見せてからまくり差しに構える。
見事な自作自演の強襲で「このままバック突き抜け④-①まであるんか?」と見ていたが、迎撃した憲吾の舟の返り~出口の押し足が半端ない。50歳とは思えぬウイリー込み込みで、わずか3秒ほどで毒島を3艇身ほどブッ千切った。マスターズ世代の進撃は、シリーズ戦だけではなかった。
その後も憲吾69号機は後続をぐんぐん突き放し、上りタイムはあっと驚く1分46秒5!! シリーズ戦のトップ時計47秒8を1秒3も更新し、悠然とトライアル2ndへと続くゴールを通過した。なんちゅう50歳!!
「(ゴール後の大歓声を聞いて)やっぱ、ココを走るために頑張ってるんだなぁ、っていう気になりますね」
どうやら、14年前の忘れ物をしっかり鮮明に思い出したのではなかろうか。
2着争いでもちょっとしたサプライズがあった。毒島が素晴らしい自力まくり差しで完全に2番手を取りきったと思いきや、5コースから大きな放物線を描いてまくり差した中島17号機がバックでその内フトコロを捕えきった。
「完全な伸び型です」
昨日、苦笑いを見せた17号機とは別物のモーターがそこにいた。多数の引き波を超えて毒島ににじり寄ったレース足は、まさに中島スタイル。短期決戦を踏まえれば、とりあえず手前に寄せた英断は大成功だったと言えるだろう。その後は逆に毒島25号機に追い詰められるシーンもあって、両者のパワー評価は互角レベルか。おそらく出足系統は中島、行き足から伸びは毒島が優勢だったと思う。
今年もまた……
12R
①桐生順平(埼玉)22
②片岡雅裕(香川)18
③山口 剛(広島)16
④深谷知博(静岡)14
⑤平本真之(愛知)15
⑥菊地孝平(静岡)09
ほぼほぼ前付けに動くとみていた菊地が特訓から動く気配がなく、本番も穏やかな枠なり3対3。スリットでイン桐生がやや凹んだが、強烈な伸び返しで舳先を揃える。大外から唯一のゼロ台で攻め込んだ菊地も、桐生までは届かない。
桐生が逃げて、2番手は誰か?
と焦点を定めた瞬間、歓迎せざるアクシデントが発生した。3コースから豪快に握った山口50号機のサイドが掛からず、アウトまくりの菊地に衝突。バランスを逸してもんどりうって横転してしまった。激痛の選手責任転覆。短期決戦での-5点は、掛け値なしの赤信号とお伝えしていいだろう。
事故ランプが点灯し、着順を決する2マーク。桐生が危なげなく先取りし、2コース差しの片岡もすんなり順走し、最内から切り込んだ平本を深谷が冷静に差し抜いてこのレースは終わった。わずか半周、6艇の足色はほとんど断定できないが、菊地の行き足~伸びに関しては単なるスタート勝負ではない力強さを感じた。
命懸けだからこそ、トライアルに事故はつきもの。
毎年毎年、分かっちゃいるのだが、現実に目の当たりにするのはつらい。今年の第一の“落伍者”は、真剣勝負を意識し過ぎたであろう広島の勝負師だった。(photos/シギ―中尾、text/畠山)